©Gerald S. Cubitt / WWF

野生生物を守る-「税関」のもうひとつの仕事


みなさんは、税関というと、何を思い浮かべるでしょうか。

海外旅行の帰りに、空港で税関申告書を記入して提出したり、税関職員に付き添われた麻薬探知犬と遭遇したり、といった経験のある方もいるかもしれません。

実はあまり知られていない、税関のもうひとつの仕事に、「野生生物を守ること」があります。

今週、WWFジャパンの野生生物取引監視部門であるTRAFFICのスタッフから、そんな税関の役割について、実際に職務につかれている「横浜税関」の職員さんに向けて、研修講義をさせていただきました。

中国の空港で旅客の預かり荷物を検査する野生生物探知犬
©Wayne Wu / TRAFFIC / Sniffer dogs / China Customs

中国の空港で旅客の預かり荷物を検査する野生生物探知犬

税関が野生生物を守る役割を担うに至った所以が、1975年に設立した「ワシントン条約」-研修講義のテーマです。

ワシントン条約は、絶滅の恐れのある野生動植物を有害な取引から守るために発足した条約で、1980年に日本が加盟して以来、日本の税関では規制対象となるさまざまな動植物の輸出入を監視し、違法行為を取り締まっています。

取引により影響を受けている野生生物は、近年日本でも問題になっているカワウソやカメなどのエキゾチックペットをはじめ、ゾウ(象牙)、トラ(毛皮、骨など)、サイ(角)、ウナギ(食用)、ローズウッド(木材)、ラン(観賞用)など多岐にわたり、現在、条約の対象種は36,000種近くに上ります。

スーツケースの中から押収されたインドホシガメ Geochelone elegans
©P.Tansom-TRAFFIC

スーツケースの中から押収されたインドホシガメ Geochelone elegans

取引の動向も日々変化し、条約の対象種や制度もどんどん新しくなっていくため、横浜税関では定期的に、ワシントン条約の講義が職員の研修に盛り込まれているのです。本日参加された職員の皆さんも、最新情報に熱心に耳を傾けていました。

研修のほかにも、空港での普及啓発活動など、今後も違法取引の問題解決に向け、税関の皆さんとの協力に力を入れていきたいと思います。
(野生生物グループ TRAFFIC 北出)

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自然保護室(生物多様性政策グループ長)
北出 智美

修士(生物学、生物多様性マネジメント)
国際的な自然保護に携わることを志し、カナダのブリティッシュコロンビア大学で生物学を専攻。アルバータ大学大学院修士課程(生物科学)、オックスフォード大学大学院修士課程(生物多様性マネジメント)を修了。2013年にWWFジャパンに入局後、ワシントン条約に関わるTRAFFICに所属し野生生物取引調査や政策提言に従事。TRAFFICジャパン代表、野生生物グループ長を経て、2025年より生物多様性政策グループ長。現在はWWFネットワークと連携しながら、生物多様性条約(CBD)をはじめとする国際政策と国内政策の強化に取り組んでいる。

「野生生物取引」の問題は、SNSで話題のカワイイの野生動物ペットから、犯罪組織と巨額のマネーがからむ密輸の問題まで本当にダイナミックで、活動の切り口も様々。日々、新しいことを学びながら、今、自分たちがやるべきことは何かを考え抜き、行動したいと思っています。

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