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地域で育つ再エネの立役者 山陰合同銀行・ごうぎんエナジー訪問記[後編]


再エネ開発は地域の発展の原動力になるのでは?そして地域に喜ばれる再エネ施設となるには?近年地域と摩擦を起こす再エネ施設もあることから、地域の発展につながる再エネ作りには、地域をよく知る地方銀行の取り組みが鍵になるのではと、再エネ子会社を作った山陰合同銀行に取材に行ってきました。

環境省は、地域の脱炭素のモデルとなる「脱炭素先行地域」を選定しており、地方自治体と地元企業、地域の金融機関が中心となることを求めています。山陰地方では、米子市や松江市などすでに複数選ばれており、脱炭素ドミノを起こすべく頑張っています。その立役者の一員として、山陰合同銀行は2021年に日本初の再エネ子会社ごうぎんエナジーを創設し、本体の銀行とともに地域の脱炭素を推進しています。

取材してみて感銘を受けたのは、やはり前人未到の日本初に取り組んだ山陰合同銀行は進取の気性に富んでいるということ。「この地域は将来どうあるべきか」「我々はどういった役割を果たすのか」を考えて行動に移すことが常とされる組織風土に培われて、これまでもいくつも果敢に取り組んでこられています。たとえば2019年には証券会社と包括的業務提携をし、国内初の銀行と証券会社の連携を実現しました。これによって山陰地域のお客様は、より多くの証券商品にアクセスが可能となり、証券人口が拡大しています。この銀行と証券の連携はそのあと「地域の発展のために」が大命題の他の地銀にも広がっています。

また金融機関にとって最も要となるのが、自らが投融資している事業所の排出量を把握すること。なぜなら金融機関にとってはこのスコープ3のカテゴリー15と呼ばれるこの排出量が大きく、取引先の排出量算定と排出削減に向けた働きかけが最も重要だからです。どの金融機関にとっても新しい取り組みですが、山陰合同銀行は早くから取り組み、しかも無料で取引先に排出量算定のツールを提供しているそうです。取引先への脱炭素に向けたソリューションの一つとして、「ごうぎんエナジー」における再エネ提供も提示できるというわけです!

山陰合同銀行とごうぎんエナジーの本拠地である島根県随一の景勝地、稲佐の浜。神在月(神無月)には全国から神様が集まります。
© Masako Konishi

山陰合同銀行とごうぎんエナジーの本拠地である島根県随一の景勝地、稲佐の浜。神在月(神無月)には全国から神様が集まります。

まだ県内事業者の足元の感度は高いとは言えないそうですが、サプライチェーンの上流企業から下流企業への要請などで地域の企業に脱炭素の取り組み強化が求められる時が必ずやってくる、ということでそれに対する用意として提案を続けているとのことです。

行員全員がコンサルティングするという意気込みで地域を率いていこうとする姿勢に感動しました。事業後継者難など課題も多い日本の地域で、使命感を持って率いる存在はなんとありがたいことでしょう! 詳しくは取材記事をぜひお読みください!

小西雅子インタビューシリーズ paint a future ~重要課題は地域のサステイナビリティ 共感を呼び込める事業展開を(PDF)

※この記事は、日報ビジネス株式会社のご許可を受けて「隔月刊 地球温暖化」から転載しています。(記事の前編は2025年5月号に掲載されています。)

(気候・エネルギーグループ 小西)

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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