『再生可能エネルギーが拓く地域経済の未来―地方銀行の新たな挑戦―』を公開
2026/09/04
- この記事のポイント
- WWFジャパンは、レポート『再生可能エネルギーが拓く地域経済の未来―地方銀行の新たな挑戦―』を公開しました。代表的な事例として山陰合同銀行、秋田銀行、八十二長野銀行の取り組みを紹介し、地域社会からの信頼、地域経済への還流、本業との相乗効果という共通点を分析。地方銀行の取り組みを通じ、地域と共生する再生可能エネルギーの導入拡大への示唆や、地域経済の持続的発展に果たしうる役割を考察します。
先進的な地方銀行による再エネ施策を紹介するレポートを公開
WWFジャパンは、この度、レポート『再生可能エネルギーが拓く地域経済の未来―地方銀行の新たな挑戦―』を公開しました。
本レポートでは、先進的な地方銀行3行による再生可能エネルギー事業の取り組みを紹介しています。そのうえで、そこから得られる示唆を基に、地域と共生した再生可能エネルギーの導入のあり方や意義を検討しています。

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・資料名:『再生可能エネルギーが拓く地域経済の未来―地方銀行の新たな挑戦―』
・発行元:WWFジャパン
・発行日:2026年8月
地方銀行が再生可能エネルギー事業に取り組む背景
地球温暖化は依然として深刻さを増しているなか、気温上昇を最小限に抑えることを目指して、日本は2030年・2035年・2040年に向けて温室効果ガス削減目標を掲げています。
それらを順次達成していくための方法の1つとして、省エネや電化といった取り組みに加えて、太陽光発電や風力発電など、既に確立した再生可能エネルギーの導入を着実に増やすことも不可欠です。
一方、その導入に当たっては、発電設備が設置される地域の自然環境や景観、住民の安全に十分配慮し、地域に受け入れられる形で事業を進めることも必要です。
こうしたなか、地域経済や企業の実情を熟知し、地域社会との信頼関係を有する地方銀行は、再生可能エネルギー導入を支える新たな担い手として注目されます。
従来、銀行法による規制によって、銀行の子会社の業務範囲などは制限されていました。しかし、2021年の法改正を経て、そうした規制が緩和された結果、地方銀行も地域活性化に資する事業として再エネ分野に参入する道が開かれたのです。

地球温暖化は日本の自然や生物多様性にも影響を与え始めています。
山陰合同銀行、秋田銀行、八十二長野銀行の取り組み事例を紹介
以上の背景のもと、地方銀行は再生可能エネルギー事業に乗り出しています。公開情報で確認できる範囲でも、10以上の地方銀行グループが再生可能エネルギー子会社を設立するなど、動きが少しずつ広がっています。
多くの優れた実践が見られますが、まずは代表的な事例として、山陰合同銀行・秋田銀行・八十二長野銀行の3行を取り上げました。
山陰合同銀行は、2022年7月に金融機関として全国で初めて、100%出資の再生可能エネルギー発電事業会社「ごうぎんエナジー」を設立し、PPA事業を中心に地域内循環の実装を進めています。
<山陰合同銀行の関連記事>
- 豊富な地域再エネと地元事業者の縁結び 山陰合同銀行・ごうぎんエナジー訪問記[前編]
https://www.wwf.or.jp/staffblog/activity/5990.html - 地域で育つ再エネの立役者 山陰合同銀行・ごうぎんエナジー訪問記[後編]
https://www.wwf.or.jp/staffblog/activity/6032.html
秋田銀行は、洋上風力を地域産業育成の機会として捉えつつ、2024年7月に「洋上風力産業支援室」を全国で初めて設置。県内企業の参入、雇用創出、人材育成を後押ししています。
<秋田銀行の関連記事>
- 地方銀行の再エネ取り組みが熱い!―洋上風力を推進する秋田銀行―
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/6150.html - 秋田県に洋上風力産業を作る!―秋田銀行の再エネ施策①―
https://www.wwf.or.jp/staffblog/activity/6200.html - 使い道のなかったもみ殻が再エネ資源に?―秋田銀行の再エネ施策②―
https://www.wwf.or.jp/staffblog/activity/6201.html
八十二長野銀行は、2022年10月に子会社「八十二Link Nagano」を設立したうえで、屋根置き太陽光を中心に据えて、県内企業の脱炭素化支援と地域内経済循環の両立をめざしています。
<八十二長野銀行の関連記事>
- 地方銀行の再エネ取り組みが熱い! ―八十二長野銀行による太陽光発電事業―
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/6328.html - 屋根から始まる脱炭素! ―八十二長野銀行の再エネ施策①―
https://www.wwf.or.jp/staffblog/news/6330.html - 30年前の頭取から受け継ぐ思い ―八十二長野銀行の再エネ施策②―
https://www.wwf.or.jp/staffblog/news/6332.html
これらの事例を通じて、地方銀行が再生可能エネルギー事業を通じて、どのような便益を地域にもたらす可能性があるかを検討しました。
共通する3つの特徴
3行の事例からは、次の3つの共通点が伺われます。
第一に、地域社会からの信頼が重視されていることです。再生可能エネルギー事業では、設備そのものだけでなく、「誰が担うのか」が地域の受容性に影響します。地方銀行は、長年の取引関係や地域との接点を通じて、地域との対話や調整において強みを発揮しうるのです。
第二に、地域経済への還流と域内循環を意識していることです。地方銀行が手掛けることで再生可能エネルギー事業からの収益が域内に留まります。また、発電した電気を地域で使い、施工・保守・関連産業への参入機会を地域企業に広げることで、地域経済の発展にも結びつけられています。
第三に、本業とのシナジーが追求されていることです。地方銀行が持つ本業の知見をPPA案件の形成などの再生可能エネルギー事業に活かすことができます。逆に、コーポレートPPAへのファイナンスをはじめ、本業に活かせる知見を蓄積する機会ともなりえます。

地域と共生した再生可能エネルギーの案件に、より多くの資金が投じられることも普及拡大の鍵です。政府による支援の重点化も求められます。
地域と共生する再生可能エネルギーの拡大に向けて
地方銀行による再生可能エネルギー事業は、単なる新規ビジネスにとどまりません。地域に受け入れられる再生可能エネルギーの導入拡大、地域内での経済循環、顧客企業の競争力強化、さらには分散型エネルギーの導入による地域レジリエンスの向上にもつながります。
もちろん、地方銀行であれば直ちに信頼を勝ち得るわけではありません。それでも、地域のステークホルダーとの密接なコミュニケーションを経て、受容性の高い事業にしていく可能性は高いと言えるでしょう。
地域の脱炭素化と地域経済の持続的発展を同時に支えうる、地方銀行の再生可能エネルギー事業の取り組み。その示唆を足掛かりの1つとして、地域と共生する再生可能エネルギーがいっそう広がっていくことが期待されます。



