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コウテイペンギンが絶滅危惧種に選定 気候変動の脅威が深刻に

この記事のポイント
現存するペンギン類では最大の種であるコウテイペンギンが、IUCNの「レッドリスト」で初めて「EN(絶滅危惧種)」に選定されました。危機の最大の原因と考えられるのは地球温暖化(気候変動)。過去10年以上にわたり蓄積されてきた調査データの検証の結果、その影響により進んだと考えられる南極の棚氷の崩壊が、危機の大きな要因になっていると考えられています。地球規模の気候変動が、極地の自然や野生動物に、より深刻な形で及び始めています。
目次

コウテイペンギンが初めて絶滅危惧種に

国際自然保護連合(IUCN)は2026年4月9日、絶滅のおそれのある世界の野生生物のリスト「レッドリスト」で、南極大陸に生息するコウテイペンギンの絶滅危機レベルを、絶滅の恐れが極めて高いとされる「EN(絶滅危惧種)」に引き上げたことを発表しました。

南極大陸と周辺海域に生息するコウテイペンギンは、これまで絶滅危機種ではなく、それに準じた「NT(近危急種)」とされてきました。それが今回、ランクが一気に2段階上がり、「EN(絶滅危惧種)」に選定される結果になりました。

© Fritz Pölking /WWF-Japan

この評価の根拠となっているのは、WWFが支援してきた研究を含む、南極に関する多くの最新の科学的知見です。

こうした研究結果に基づいたIUCNの予測では、コウテイペンギンの個体数は今後50年で半減し、21世紀末には絶滅に至る可能性も懸念されています。

© Stefan Christmann / naturepl.com / WWF

コウテイペンギンに何が起きている?

そもそも、人が住まない南極の氷床の上で繁殖し、周辺の海域で魚などを採食して生きるコウテイペンギンは、開発や狩猟などの直接的な影響を受けにくい野生動物です。そのことから長い間、絶滅の危機が高い種(しゅ)とはされてきませんでした。

そのコウテイペンギンが今回、絶滅危惧種に選定された主な理由は、気候変動(地球温暖化)の深刻化です。

殊に、最大の原因と考えられるのは、気候変動がもたらしている南極の海氷の急激な変化です。

コウテイペンギンは、大陸の内陸やそれに続く海を覆う棚氷を繁殖や成長の場として利用し、その期間は9カ月間にも及びます。

しかし、2016年以降、南極では海氷面積や結氷する期間が大きく減少。多くの集団繁殖地(コロニー)が形成されている棚氷の崩壊が続いてきました。

© Fritz Pölking / WWF

特に、氷が解ける時期が早まったことで、ヒナが水に濡れて体温を奪われ凍死したり、溺死したりと、深刻な繁殖の失敗が頻発しているとみられています。

実際、南極大陸では、個体数が減少傾向にあり、2009年から2018年の間に約10%減少。さらに西部では2023年までに約22%の減少が確認されています。また、2022年には、この地域のベリングスハウゼン海で主要な繁殖地の大半が崩壊する事態も生じました。

こうした影響は、ヒナだけでなく、成鳥にも及んでいます。
成鳥は一年のうちの特定の時期に換羽(羽の生え代わり)しますが、その期間は羽が持つ防水性や保温力が失われます。このタイミングで、棚氷の崩壊が起き、海の中に追いやられると、ヒナと同様に凍死や溺死の危機にさらされることになるのです。

実際、南極大陸では、個体数が減少傾向にあり、2009年から2018年の間に約10%減少。さらに西部では2023年までに約22%の減少が確認されています。また、2022年には、この地域のベリングスハウゼン海で主要な繁殖地の大半が崩壊する事態も生じました。

こうした影響は、ヒナだけでなく、成鳥にも及んでいます。
成鳥は一年のうちの特定の時期に換羽(羽の生え代わり)しますが、その期間は羽が持つ防水性や保温力が失われます。このタイミングで、棚氷の崩壊が起き、海の中に追いやられると、ヒナと同様に凍死や溺死の危機にさらされることになるのです。

© Fritz Pölking / WWF

コウテイペンギンの保全に必要なこと

コウテイペンギンを救うために、一番重要な手段は、温暖化を食い止めること、すなわち気候変動対策を加速させることです。

各国政府が迅速に温室効果ガスの排出ゼロ、すなわち「脱炭素」を進め、「パリ協定」が定める通り、世界の平均気温の上昇を、可能な限り1.5度以下に抑えていかねばなりません。

これはコウテイペンギンだけでなく、南極の生態系全体、そこに生息する多様かつ独自性の高い野生動物を守る上でも、欠かせない取り組みです。

また、観光や船舶の航行などによる繁殖地周辺への圧力を軽減し、環境を保全することも、保護活動を補完する上では大事な取り組みです。

そのために、WWFでは2026年5月11日から21日にかけて日本・広島で開催される「第48回南極条約協議国会議(ATCM48)」の下で、コウテイペンギンを「特別保護種」に指定するべきであると考えています。これにより、観光や船舶の往来など、人間活動による生息地への圧迫から、さらなる保護が図られることになります。

気候変動対策と生息地での法的な保護を両輪として進めることが、コウテイペンギンと南極の未来を守る上では欠かせません。

今回明らかにされた、コウテイペンギンの危機は、気候変動が野生生物と自然環境に及ぼす影響の甚大さを強く警告するものであり、気候変動対策と生物多様性の保全が一体の課題であることを、改めて示すものです。

WWFは国際社会に対し「脱炭素」の実現を求めながら、各国の政府や企業に対し、「パリ協定」の達成に向けた働きかけを強化していくと共に、世界の生物多様性の保全に向けた提言に、より力を入れていきます。

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