© Staffan Widstrand / Wild Wonders of China / WWF

生物多様性条約COP17へのカウントダウン~中国・昆明で「昆明対話」開催

この記事のポイント
世界的な進捗の遅れが明らかになっている「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KM-GBF)」。2026年10月にアルメニアで開催される生物多様性条約COP17では、枠組の中間評価にあたる初の「グローバルレビュー」が実施されます。2030年目標達成に向けた軌道修正と実施の加速につながるかが注目される中、9月7日から9日にかけて、中国・昆明において「昆明対話」が開催されました。各国政府や非国家アクターの代表が参加し、グローバルレビューを前に、KM-GBFの進捗に関する5つの重要課題について、共通理解を深めるための非公式な対話が行われました。
目次

COP17に向けて開かれた「昆明対話」

2030年までに生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」をミッションに掲げた生物多様性条約(CBD)の「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KM-GBF)」。

2026年のCBD-COP17では、枠組の中間評価として初の「グローバルレビュー」が予定されています。しかし、KM-GBFの公式な進捗評価である「グローバルレポート」の案では、現在の進捗状況のままでは2030年目標の達成が困難であることが示されています。

【参考記事】【SBSTTA-28報告】KM-GBFの中間評価「グローバルレポート」と交渉の論点を解説


2026年7月から8月にかけてナイロビで開催された条約の補助機関会合(SBSTTA-28、SBI-7)では、グローバルレビューに向けた準備交渉が行なわれました。しかし、締約国の立場の違いから野心的な合意形成に向けた十分な土台を築くには至りませんでした。

【参考記事】【SBI-7報告】KM-GBF世界的な進捗の遅れ~COP17へ向け政治的リーダーシップの強化を


こうした中、COP17まであと1か月余りとなったタイミングで開催されたのが「昆明対話」です。

その目的は、「交渉」ではなく「対話」を通じて、グローバルレビューを契機とした取り組みの加速に必要な共通理解を深めることにあります。政府代表だけでなく、NGO、先住民族と地域社会(IPLC)、女性、若者、アカデミア、ビジネスや金融セクターなど、多様なステークホルダーが参加し、交渉による意思決定を目的としない非公式な対話として、活発な議論が行われました。WWFネットワークからも代表者が参加しました。

【外部サイト】The Kunming Dialogue(2026年9月7~9日開催)

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昆明対話で議論された5つの重要課題

昆明対話でテーマとなったのが、KM-GBFの進捗評価で示された5つの横断的な課題(※)です。あえて平易な表現にすると次のように整理できます。

(※グローバルレポート案のキーメッセージに対応。【参考記事】【SBSTTA-28報告】KM-GBFの中間評価「グローバルレポート」と交渉の論点を解説

①「目標の野心が足りない」(対象範囲と網羅性)

締約国のすべての国別目標を総合的に足し合わせても、KM-GBFの23のターゲットが掲げる「野心」に届きません。仮にすべての国別目標が達成されたとしても、KM-GBFのネイチャーポジティブ目標の達成には十分ではないとされています。特に、生物多様性の主流化や、持続可能な消費、資金動員などに関するターゲットでは目標設定の不足が指摘されています。KM-GBFと国別目標のギャップを埋めるためには、生物多様性国家戦略(NBSAP)や国内政策の見直し・強化が必要ですが、そのための政治的意思や実施手段の確保が課題となっています。

②「実施が追い付いていない」(行動と実施)

多くの国がさまざまな取り組みを進めているものの、KM-GBFの23のターゲットのうち、いずれかひとつでも進捗が「順調」であると評価している国は、半数に満たない状況です。こうした状況を打開するために、効果的なイニシアティブやパートナーシップを通じた取り組みの拡大や、気候変動をはじめ他の国際枠組みとの連携を通じた相乗効果の創出、さらには、各国の状況に応じて生物多様性に最も大きな影響を与えている課題や、社会・経済のシステム変革につながる対応を優先し、限られた資源を戦略的に投入することなどが課題となっています。

③「実施を支える基盤が弱い」(実施手段)

実施手段とは、各国が目標を達成するために必要な資金・能力・技術・協力の仕組み全体を指します。途上国を中心に、こうした実施手段の不足が進捗を妨げる要因となっています。一方、先進国においても、厳しい財政状況の中で、単に公的資金拠出を増やすことには限界があります。そのため、民間・公的な資金の流れを含む経済システム全体が生物多様性保全の目的と整合するように、規制枠組やインセンティブ制度を改革していくことが、実施手段の強化においても重要な論点となっています。また、資金面での支援に加え、能力構築や技術協力の強化も引き続き重要な課題とされています。

④「主流化が十分に進んでいない」(全政府・全社会的アプローチ)

経済や財政をはじめとする幅広い政策分野の意思決定に生物多様性の多様な価値を組み込んでいくことを「生物多様性の主流化」と言います。これを国の政策全体で進めるのが、「全政府的アプローチ」。そして、国だけではなく、地方自治体や企業、市民団体などのさまざまな主体が参画して取り組むことを「全社会的アプローチ」と言い、KM-GBF達成に不可欠な実施原則とされています。こうしたアプローチは、多くの国でまだ十分に浸透しておらず、政府全体および社会全体で生物多様性の主流化の進めていくことが課題となっています。

⑤「データ基盤が不十分」(データと知識)

KM-GBFを効果的に実践するためには、国レベルで、意思決定の基盤となる情報や、進捗をモニタリングするためのデータと知識を収集・管理・活用する仕組みが欠かせません。しかし、多くの国ではこうした仕組みの整備が十分とは言えない状況です。KM-GBFの進捗報告においても、データや能力の不足が課題になっています。

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COP17で問われる行動の加速

昆明対話では、5つの重要課題に対して、共通理解の土台を作るための議論に加え、共通したアプローチや解決策についても議論が交わされました。昆明対話の成果は、COP17のグローバルレビューに提供されます。

KM-GBFの世界的な進捗の遅れ、そして2030年目標の達成に向けて必要な取り組みの方向性について、関係者間で共通認識が醸成されつつあることは前向きな兆候と言えます。

一方で、COP17の成否は、締約国がKM-GBFの野心へのコミットメントを堅持し、さらにその実現に向けた具体的かつ実効的な行動や協力をどこまで加速できるかにかかっています。

世界情勢が複雑化する中、生物多様性枠組に対する政治やメディアの関心は必ずしも高くありません。しかし、2030年まで残された時間は限られています。COP17が単なる進捗確認の場に終わるのではなく、行動の加速につながる政治的メッセージを打ち出せるかが注目されます。

WWFでは、COP17の成功に向けて政策決定者への働きかけを行うとともに、グローバルレビューを通じた国際政策および国内政策の強化を後押ししていきます。また、国内における関心・機運を高めるために、メディアや市民社会に対する情報発信も継続して進めていきます。

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