営農型太陽光発電の制度改正案へ意見提出
2026/08/26
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- WWFジャパンは、政府が意見募集中のパブリックコメントに対して(営農型太陽光発電に関する制度改正案)、意見提出をしました。2025年末に政府が打ち出した、太陽光発電の規制強化を図る政策の一環として、営農型太陽光発電に対する制度変更案が2026年4月に農水省より示されました。設備設置にあたり、自治体の基本計画の策定や認定プロセスが必要になるほか、設備要件等が強化されます。本稿では、制度の概要と意見提出した課題点を紹介します。
営農型太陽光発電の制度改正に至る動き
2025年12月23日、政府は、大規模太陽光発電事業に関する関係閣僚会議を開き、太陽光発電開発に対する総合的な対応策である「大規模太陽光発電事業に関する対策パッケージ」を決定しました。
[参考]大規模太陽光発電事業に関する対策パッケージ
これは、大規模ないわゆるメガソーラー開発が各地で進むにつれ、自然環境を壊したり、地域での合意形成を疎かにしたりする事例が散見され、トラブルや反対運動が増加してきたことが背景にあります。釧路湿原での開発などは、まさにその代表的な動きの1つです。

山林を侵食する太陽光開発などが一部で問題に
そのため、環境・社会面で問題を生じないように、特に太陽光発電に焦点をあて、環境影響評価の見直しから買取制度(FIT制度)の支援要件の見直しに至るまで、幅広い分野で従来制度の見直しが進められました。その方針が対策パッケージです。
こうした動きのなか、“営農型太陽光発電”についても関連する制度の見直しが農水省で進められてきました。2025年5月から計6回の会合を経て、2026年4月には「望ましい営農型太陽光発電について(案)」を公表し、同年7月には、この制度改正案についてパブリックコメントを開始(2026年8月22日まで)しました。
WWFジャパンでは、同パブリックコメントに対する意見提出を行いました。
[参考]WWFジャパンによるパブコメへの提出意見
[参考]望ましい営農型太陽光発電について
営農型太陽光で生じてきた問題と制度改正
普及により生じた問題事例
営農型太陽光発電とは、昨今注目されている太陽光発電の一形態です。従来とは異なり、パネル下の架台が高足となっており、発電するパネル下に生じる空間で、同時に営農をすることが可能です。そのため、農地本来の目的である食料生産を阻害せず、発電事業が進められると期待されてきました。

発電設備の下で小麦栽培されている様子
しかし、事業件数が増加するに伴い、十分な営農がされない、あるいは単収(生産性)が低下する事例も一部で確認されるようになりました。また、日本の低い食料自給率の改善に寄与する食料生産が期待されていた一方で、実際には、非可食の観賞用植物の栽培が増えるなど、期待と異なる営農事例も少なくありませんでした。

出典:農水省,「望ましい営農型太陽光について」より
こうした背景から、事業開発の許可要件(農地転用許可の条件)も、当初の通知レベルから、省令・ガイドラインに規定されるなど次第に厳格化され、さらに今回の大幅な改定・強化に至りました。
打ち出された制度改正案と課題
今回、国が示した新たな制度改正案は、営農型太陽光発電の開発が農地本来の食料生産を阻害しないよう是正するもので、その背景や目的は理解が出来るものです。

農水省,「望ましい営農型太陽光について」より(一部、WWFで図を加工・補記)
他方、自然災害などどうしようもない事由を除き、単収減少など営農者が起因の支障案件は、全体のなかでは少ないことも事実です(全体の2割未満)。
しかしながら、今回の制度改正の内容は、問題を是正するのみならず、こうした営農に支障のない取組みや、地域共生・農業振興に資する今後の新たな取組までをも、大きく抑制してしまうリスクを孕んでいます。
新たな制度案には、数多くの変更点がありますが、ここでは特に大きな課題となる4つの改正点について紹介します。
【ポイント1: 営農者の限定化】
新たな改正案では、営農型太陽光発電に関わる“営農者の適格性”にいくつかの条件が課されています。なかでも特に大きいのは「50万円以上の販売実績を有すること」という点です。
元来、農業にしっかり携わってきた農業者であれば、農業販売量は一程度あり、そうした生業の農業者なら営農を蔑ろにしないという狙いがあると想定されます。
しかし、これでは販売実績が比較的少ない新規就農者は対象外となる可能性が高くなります。また、そもそも耕作面積が小さい日本では、農業者の約1/4以上は、50万円未満の販売実績であり、こうした農業者も同様に最初からチャレンジする権利を失います。

大型農機による農作業が必ずしも出来る場所ばかりでもない
特に後者は、中山間地に多いと想定され、従来の大型化を目指す農業政策では農業経営を強化することがなかなか難しい主体であると考えられます。農業人口の激減が深刻な社会課題となっているいま、これら主体の農業経営強化の一手段となり得る営農型太陽光への事業機会を失うことは、得策ではありません。
【ポイント2: 発電設備仕様の限定化(高さ・間隔制限)】
2つ目の大きな課題は、営農型太陽光発電の仕様がこれまで以上に限定される点です。
従来、発電設備の設置許可(農地転用許可)については、2m以上の高さがあることやその下で農機具が効率的に使えること“など”、農作業を効率的に行うことができる空間確保の措置が講じられていることが、基準として定められていました(農地法施行規則第五十七条六項における例外規定)。
このように、参考数値(2m以上という)を示しつつも、表現に含みを持たせることで、現場である自治体の農業委員会の判断次第で、農業に資すると認められる営農型発電設備は、許可が可能でした。
一方、今回の改正案では、“高さはおおむね3m以上、支柱間隔はおおむね4m以上”と、数値的に明示化と厳格化がされました(※)。しかし、仕様が厳格化されることで、できる農業の自由度が制限されることになります。
(※)建付けが変わり、農地転用の許可基準は、これまでの農地法の施行規則内ではなく、農山漁村再エネ法の基本方針に明記されることになりました。この基本方針内の基準に準拠する場合は設備認定が受けられ、認定設備が農地法で農地転用許可を受けられるようになる予定です。(後述)
そもそもこれらの数値規制は、発電設備下で、大規模農業を見据えたトラクター利用を前提としていますが、必ずしも全ての農地で必要とは限りません。小規模分散型の圃場が多い日本の農業では、小規模農機の運用が合うケースや不耕起栽培を目指すケースも想定されます。

発電設備の下で不耕起栽培されている様子
一律に設備形態を規制してしまえば、こうしたケースの農業者は、利用しない大型農機に合わせた設備仕様を強いられ、不要なコストを支払うことになります。
【ポイント3: 発電設備仕様の限定化(遮光率)】
3つ目の課題も、営農型太陽光発電の仕様を限定化するもので、“遮光率30%未満”にする点です。遮光率とは、圃場面積に対して、日射を遮る太陽光パネルの面積の割合です。
これは植物の成長に必須な日射量を確保するための措置です。しかし、植物にはサトウキビやトウモロコシのように、日照量が多いほど成長を促進する陽性の作物もあれば、比較的日陰でも成長量に影響を及ぼさない半陰性・陰性の作物もあります。
今回の制度案のように“一律”で遮光率30%未満としてしまえば、半陰性・陰性の地域産品を生産する農業者などは、むしろ作物に見合った環境(遮光率の高い)を整備できない矛盾を生じます。
さらに、昨今では気候変動により、農業分野では高温障害が顕著になっており、将来的にはさらに影響が拡大することが示されています(以下、参考資料を参照のこと)。遮光は反面、こうした高温状況を緩和する可能性が期待できます。

陽性作物の稲も高温障害が発生している作物の1つ。温暖化が進むことで品質低下(白未熟粒)や元々冷涼な地域以外では今世紀半ばには収量減が予想されている
出典:環境省,「第3次気候変動影響評価報告書(総説)」より
[参考]環境省、第3次気候変動影響評価報告書
また、遮光率を低くすることは、すなわち架台あたりのパネル設置量を減らすことであり、発電事業性を悪化させるリスクがあることを忘れてはいけません。
【ポイント4: 自治体レベルの計画策定を要件化】
そして最後4点目が最も大きな課題となり得るものです。それは、新たに営農型発電事業をするためには、自治体(市町村レベル)の基本計画を策定し、その計画に基づき認定を受ける必要がある点です。
これまでは、発電と営農の計画を立てて、農地を活用するための許可(農地転用許可)を得れば、事業が可能でした。しかし今後は、
これらに加えて、街の農業利用と発電事業の調和を図るための基本計画が必須となります。

出典:農水省,「望ましい営農型太陽光について」より
そのため発電事業者(農業者など)は、自治体と連携しながら協議会での議論・調整を進めていく必要があります。自治体レベルの基本計画のため、それだけでも数か月から年単位の時間を要することになります。
そして基本計画がようやく策定できた段階で、発電事業の計画(設備整備計画)を申請して、基本計画に準拠しているか審査され、問題なければ認定(農地転用の許可)が下ります。
大きな懸念点は、自治体が本当に策定実施できるのかという点です。建付け上、あくまで基本計画の策定主体は自治体であり、策定は任意、つまり策定しない判断も考えられます。また、発電事業を目指す農業者が果たして農作業の傍らでこうしたプロセスを進められるのか、過分な負担になる点も懸念されます。
また現状の改正案では、この基本計画策定&認定プロセスが、「発電設備の大小」や「耕作放棄地か否か」に関係なく必要となりますそのため、たとえ低圧の小さな規模の営農型太陽光事業や、使われず生産されていない放棄地を発電・営農利用に活かす場合でさえ、自治体レベルの計画策定が求められてしまいます。

耕作放棄され生産性がなくなった土地の再生は大変。そうした場のせっかくの利活用の手段ともなり得る営農型だが、、、
営農型太陽光発電のブレーキは気候変動対策やエネルギー供給にも影響する
気候変動対策に果たす営農型太陽光の重要性
今回の制度改正案は、営農型太陽光発電の導入のハードルを大きく上げるものであり、逆に適正な案件を後押しするための要素は加味されていません。このままでは、その普及に大きなブレーキがかかることが想定されます。
規制強化の焦点が向けられる営農型太陽光発電ですが、そもそも太陽光発電普及の歴史から見れば、まだごく最近に登場したばかりであり、全体のわずか0.9%に過ぎません(R5年時点)(※)。
(※)FIT制度の公開情報では、R5年度末で全商業用太陽光の事業件数(新規+移行)は約70万7千件。一方、農水省発表のR5年時点の営農型太陽光による農地転用許認可件数は6137件。PPAはFIT案件に比べ少ないため、FITベースで計算したもの
一方、営農型太陽光発電が、太陽光発電普及の可能性の大部分を担っていることは、まだ十分には認識されていません。

太陽光発電の国内におけるポテンシャル内訳
出典:環境省,「R3年度 再エネ導入ポテンシャルに係る情報活用及び提供方策検討等調査委託業務報告」を活用してWWFで作図
国内で太陽光発電の設置可能なポテンシャル(設置面積)は、建築物上などに多く存在しますが、しかし、隣接物の影や耐荷重、今後の居住年数の影響を受けるため、実際のポテンシャルは減少すると考えられます。また近年では、壁面設置なども可能な薄膜のペロブスカイトに期待が集まっていますが、コスト低下には中長期かかることが想定されています。
そのなかで、“いま設置可能”で“十分な設置場所がある”のが農地であり、全ポテンシャルの約6割にも及びます。言うまでもなく、農業利用を邪魔しないことがその大前提ですが、これが進まなければ、気候変動対策の主力を失うことになります。
エネルギー供給面でも重要になる
大きなポテンシャルを秘める営農型太陽光の普及停滞は、単に気候変動対策の問題には留まりません。国内のエネルギー供給にも影響を及ぼします。

図中のピンクが化石燃料の購入費
出典:経産省,第1回再生可能エネルギー主力電源化小委 資料3
現在、日本は年間20~30兆円を、海外からの化石燃料の購入に毎年支払っています。近年は、ウクライナ進行やホルムズ海峡閉鎖など、国際政情が増々不安定化しており、化石燃料の価格上昇はもちろん、入手の不確実性も懸念されています。また、気候変動の進行とともにこうした紛争や不安定化は将来的に加速することが予測されています。
食料自給率よりもさらに低い20%に満たないエネルギー自給率を改善しつつ、海外支出の抑制、そして手元で我々が払うエネルギー代を下げていくためにも、燃料に依存しない太陽光を主力として再生可能エネルギーの導入を進める必要があります。
営農型太陽光はその大きな役割を担っています。そして、いざという災害時には、我々のエネルギー供給を支えてくれる術にもなります。
政府は広い視野のもと制度設計を
営農型太陽光発電は、単なる気候変動問題の対策の1つではなく、エネルギー供給面での対策であり、そして同時に農業分野が今後直面する環境変化への対応や農業経営を強化する手立てにもなるものです。

営農型の普及で生じてきた課題の解決を図ることは重要であり、制度改正は避けられないと考えられますが、しかし、これが過度な規制となり、その普及の可能性を妨げることは避けなければなりません。
政府は、規制強化を再考するとともに、併せて促進策についても十分な検討を進めていくことが求められるとWWFジャパンは考えています。WWFジャパンでは引き続き、今後の政策動向を注視し、必要な政策提言を行っていきます。
本制度改正にあたり、WWFジャパンが提出したパブリックコメントのその他のポイントや詳細については、以下を参照ください(再掲)
[参考]WWFによるパブコメへの提出意見



