© Kaisa Siren / WWF

野生動物輸入大国の日本とその責任

この記事のポイント
日本でペットとして利用される野生動物の取引動向を分析し、世界の希少な野生動物に与える影響やその取引が持続可能といえるのかを評価するため、WWFジャパンは輸入データや国内市場調査などから、合法・違法取引の実態について検証しました。その結果、日本は生きた野生動物の輸入大国であり、さらに、絶滅のおそれのある動物や固有種を100種以上輸入し、その需要が世界各国の希少な野生動物の捕獲圧を高めていることも明らかになりました。野生生物の脅威となる過剰な取引を抑えるため、今回、調査の分析結果をまとめると共に、取引国との連携強化やトレーサビリティの確立が重要であることを、あらためて指摘しました。
目次

生きた野生動物の輸入の実態を可視化

日本は様々な生きた野生動物を世界各国から輸入しており、これら動物の中にはペットとして利用される種(しゅ)が多く含まれています。

日本には生息していない、珍しい色や形をした動物を飼育したい、こうした需要を満たすために、どのような種が、どこから来て、また、どのくらいの取引量になるのでしょうか。

さまざまな地域や生息環境に分布し、個体数も多く、また、繁殖技術が確立している種であれば、取引が種の存続へ与える影響は大きくないと考えられます。

一方で、限られた地域にしか生息しない固有種や、すでに個体数が減少傾向にあり、飼育下繁殖も難しい種の場合、その取引が、その種の存続に悪影響となる可能性があります。

そこで、WWFジャパンは、日本の近年の野生動物の取引動向を把握し、その持続可能性を評価するために、2020年から2024年の間に日本が輸入した生きた動物の輸入記録、国内市場調査から得られた合法的なデータや、日本の税関による差止記録(違法取引)を分析。報告書『消費に伴う責任-日本の生きた野生動物の輸入-』にまとめました。

本報告書は、日本が世界有数の野生動物消費国であること、そしてその消費が希少な種の存続への脅威になっている可能性を浮き彫りにしています。

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レポート本体:日本語版英語版

・資料名:『消費に伴う責任 −日本の生きた野生動物の輸入−』
・発行元:WWFジャパン
・発行日:2026年9月

【調査の手法】
野生動物取引の動向を把握するために、目的別に下記のデータ・情報を取得し、分析しました。

  • 生きた野生動物の輸入量および輸入金額規模:国連貿易統計(UN Comtrade)と財務省の貿易統計
  • 国際取引が規制されている種に関する取引データ:ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)の取引データ
  • 国内市場調査データ:生きた動物の展示即売会の実地調査で取得したデータ、およびウェブ検索から取得した販売広告情報
  • 種の絶滅のおそれに関する情報: IUCNレッドリスト
  • 外来種に関するデータ:GRIIS(各国で侵入・外来種化した種の情報)、EICAT(外来種が環境に与える影響)、およびCABI Horizon Scanning Tool(特定の地域で外来種化する可能性のある種を確認できるツール)
  • 違法取引:日本の税関によるワシントン条約附属書掲載種の差止実績、 Robin des Boisの「On the Trail」およびウェブ検索(日本の国外で摘発された密輸に関する情報)
  • 諸外国の法令:文献調査および各国の専門家へのヒアリング

【主な分析結果】

  • 主要な消費市場としての日本:世界トップクラスの輸入量、および多数の分類群の輸入
  • 深刻な保全上の懸念:絶滅のおそれのある種や生息国で保護されている固有種の輸入
  • 野生由来の個体への依存:繁殖技術が確立していない固有種の輸入
  • データの不一致とトレーサビリティの課題:輸入記録のない種やロンダリングの可能性がある個体の販売
  • ワシントン条約の限界:日本が輸入する野生動物のうち、ワシントン条約による国際取引規制・管理の対象となっている種は、全体の半分以下
  • 違法取引と執行の課題:国内需要が背景となった希少種の密輸と捜査に繋がらない差止事案
  • 新たなリスクの顕在化:外来種化するリスクの高い種の大量輸入と人獣共通感染症のリスクの高い種の密輸

背景:日本の野生動物取引の現在地

野生動物の国際取引に関するデータの中でも最も詳細な情報を含んでいるものとして、野生生物の国際取引を規制する、「ワシントン条約」の取引データがあげられます。

ワシントン条約は、野生生物の取引がその種の脅威にならないように、絶滅のおそれや取引による影響の程度に応じてカテゴリー(附属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)に分類し、それぞれに異なる取引規制を設けています。

このワシントン条約の規定では、締約国が輸出入の記録を報告することが義務付けられています。この取引記録から、日本が2015年から2024年の10年間に商業目的(目的コード「T」)で輸入した生きた野生動物の分類群の構成を確認したところ、取引量の上位に日本でペットとして取引されている種を多く含む、爬虫類、両生類、哺乳類、鳥類が入っていることが分かりました。

また、輸入量の動向を確認したところ、特に爬虫類と両生類の輸入量が2020年以降に増加していることが分かりました。

日本が2015年から2024年の間に輸入した、ワシントン条約附属書掲載の生きた爬虫類、両生類、哺乳類と鳥類の輸入量(個体数)動向。

日本が2015年から2024年の間に輸入した、ワシントン条約附属書掲載の生きた爬虫類、両生類、哺乳類と鳥類の輸入量(個体数)動向。

2020年から2024年の取引分析の結果

日本が2020年以降に多くの生きた動物を輸入していることが明らかになりましたが、各国と比較してその規模はどの程度なのでしょうか。

特に取引量が増加した2020年以降のワシントン条約附属書掲載種の取引記録について確認しました。

主要な消費市場としての日本:世界トップクラスの輸入量、および分類群の輸入

2020年から2024年の間に、日本が輸入したワシントン条約の附属書掲載種の輸入量(個体数)を各国と比較したところ、日本の輸入量は上位に位置することが分かりました。

ワシントン条約附属書掲載種の分類群別生体輸入量上位5カ国・地域(2020年から2024年の合計)上から爬虫類、両生類、哺乳類、鳥類

ワシントン条約附属書掲載種の分類群別生体輸入量上位5カ国・地域(2020年から2024年の合計)上から爬虫類、両生類、哺乳類、鳥類

爬虫類については49万8,478個体を輸入し、世界第3位に位置します。両生類は4万3,214個体、哺乳類は2万8,380個体を輸入し、いずれも第2位に位置しています。

また、日本は輸入量だけでなく、輸入される種・分類群の多様性においても世界上位に位置しています。輸入量上位国と比較すると、特に爬虫類と両生類では、輸入された種・分類群数が上位5カ国の中で最多となっています。

鳥類は、輸入量でみると上位には入りませんでしたが、輸入分類群数でみると、輸入量第1位のアラブ首長国連邦の次に位置します。

これらの結果から、日本が国際的な野生動物取引ネットワークの中で重要な消費国となっていることが分かります。

深刻な保全上の懸念:絶滅のおそれのある種や生息国で保護されている固有種の輸入

【絶滅のおそれのある種の輸入】

野生生物の絶滅の度合いを評価しているIUCNレッドリストを確認したところ、日本が輸入した生きた野生動物の中には、多くの絶滅危機種(近絶滅種:CR、絶滅危惧種:EN、危急種:VUのいずれか)が含まれていました。爬虫類では、日本が2020年から2024年の間に輸入したワシントン条約附属書掲載種の中で、IUCNレッドリストで評価されていた380種のうち120種(20万4,613個体)が、絶滅危機種に選定されている種でした。

その他の分類群では、両生類に関しては、74種のうち30種(4,624個体)、鳥類に関しては196種のうち23種(2,694個体)が絶滅危機種でした。

日本が2020年から2024年の間に輸入した、ワシントン条約附属書掲載種の生体爬虫類のIUCNレッドリスト評価の内訳。絶滅危機種(CR、EN、VU)に選定されている個体が204,613個体(確認できた全個体数486,009個体のうち42.1%)と数多く含まれていることが分かります。

日本が2020年から2024年の間に輸入した、ワシントン条約附属書掲載種の生体爬虫類のIUCNレッドリスト評価の内訳。絶滅危機種(CR、EN、VU)に選定されている個体が204,613個体(確認できた全個体数486,009個体のうち42.1%)と数多く含まれていることが分かります。

輸入個体数が多かった近絶滅種(CR)の中には、ミナミイシガメ(Mauremys mutica)、エロンガータリクガメ(Indotestudo elongata)、オオヤマガメ(Heosemys grandis)、ハイユウヤドクガエル(Oophaga histrionica)、デュメリルサラマンダー(Ambystoma dumerilii)、アカオビヤドクガエル(Oophaga lehmanni )など、いずれも日本でペットとして取引されている種が含まれています。

こうした種の需要や取引量がこの先も継続、または更に増加するようなことがあれば、種の存続に対する懸念が高まるため、動向をモニタリングする必要があります。

IUCNレッドリストで絶滅危惧種(EN)に選定されているヒラセガメ(Cuora mouhotii)。日本は2020年から2024年の間に本種を400個体以上、主に中国から輸入しました。
© WWF-US / Justin Mott

IUCNレッドリストで絶滅危惧種(EN)に選定されているヒラセガメ(Cuora mouhotii)。日本は2020年から2024年の間に本種を400個体以上、主に中国から輸入しました。

【生息国で保護されている固有種の輸入】

さらに、日本が輸入したワシントン条約附属書掲載種の中には、爬虫類172種、両生類40種、鳥類35種の固有種が含まれており、その中には生息国でその種の保全のために、取引が厳しく規制されている種も含まれていました。

一部の種は、生息国から輸出された記録が存在しないにもかかわらず、日本への輸入に際して、その種が生息していない国(非生息国)からの輸入があった事例も散見されました。

これは、生息国以外の国で繁殖されたことを示唆しますが、非生息国に違法に持ち出された個体や、その子孫が国際取引に流入している可能性を否定できません。

ワシントン条約附属書掲載の生きた動物の日本への輸入は、輸出国政府が輸出許可書を発行し、日本政府がそれを事前に承認・確認する必要があります。

輸出許可書発行に際しては、合法性や取引の持続可能性が確認されたことが前提となっていますが、取引される個体の生息地や輸出国がその個体を入手した経路や、繫殖個体であれば、その繁殖施設の実存の真偽、繁殖のために親個体が密輸された可能性はないか、といったことの確認を輸入国側でも担保する必要があります。

輸入する日本の事業者および政府は、その種が合法に取引されていると確認が取れる場合にのみ輸入の手続きを進めるべきです。その確認が困難な場合や、疑義が生じた場合は積極的に輸出国政府や専門家と連携をとって十分な検証を行なう必要があります。

オーストラリアの固有種であるサメハダタマオヤモリ(Nephrurus asper)。本種はオーストラリアの国内法で取引が厳格に管理されており、ワシントン条約取引データベース上に、オーストラリアが他国へこの種を輸出したという記録はありません。それにも拘らず、日本はオーストラリア以外の国々から本種を輸入しています。
© Martin Harvey / WWF

オーストラリアの固有種であるサメハダタマオヤモリ(Nephrurus asper)。本種はオーストラリアの国内法で取引が厳格に管理されており、ワシントン条約取引データベース上に、オーストラリアが他国へこの種を輸出したという記録はありません。それにも拘らず、日本はオーストラリア以外の国々から本種を輸入しています。

野生由来の個体への依存:繁殖技術が確立していない固有種の輸入

日本はどの国からどのような由来(野生個体か繁殖個体か)の動物を輸入しているのでしょうか。

分析から、輸入された個体の多くは「飼育下繁殖」として輸入されていることが分かった一方、一部の国では野生から捕獲された個体への依存が大きいことが確認されました。

爬虫類を例に見ると、日本に向けて、野生由来の個体だけを輸出している国々があることがわかりました。マダガスカルから輸出されたトカゲ亜目、コンゴ民主共和国から輸出されたトカゲ亜目、ガイアナから輸出されたヘビ亜目の種は全てが野生から捕獲されたものでした。インドネシアから輸出された個体も、大部分が野生由来の個体となっています。

日本が2020年から2024年の間に輸入した、ワシントン条約附属書掲載の生体爬虫類の輸出国とその由来の内訳

日本が2020年から2024年の間に輸入した、ワシントン条約附属書掲載の生体爬虫類の輸出国とその由来の内訳

とりわけ懸念されるのが、マダガスカルから輸出された種で、その中にはマダガスカルにしか生息しない種、つまり固有種が多く含まれていました。

日本国内でのそれら種の販売状況を確認したところ、野生動物を販売する専門店で、一個体数万円から十万円以上で広告されている種も確認され、由来の表示があるものはほとんどが野生由来であるとされていました。

野生由来の個体が輸入および国内の販売の大部分を占めていることは、これら種の飼育繁殖の技術が確立されておらず、市場の需要を満たすために、野生個体が継続的に捕獲されている可能性を物語っています。

生息地における固有種の個体群の減少を招く可能性を排除するために、事業者は、こうした種の輸入を避けるといった決断をとるべきです。

マダガスカルにのみ生息する、ツノヒメカメレオン(Brookesia superciliaris)。日本が2020年から2024年にかけて輸入した本種は全て野生から捕獲された個体でした。
© WWF-Madagascar / RAKOTONDRAZAFY A. M. Ny Aina

マダガスカルにのみ生息する、ツノヒメカメレオン(Brookesia superciliaris)。日本が2020年から2024年にかけて輸入した本種は全て野生から捕獲された個体でした。

データの不一致とトレーサビリティの課題:輸入記録のない種やロンダリングの可能性がある個体の販売

今回の分析では、ワシントン条約附属書掲載種のデータに加え、2025年に東京都内で開催された、爬虫類を中心に販売をする展示即売会の調査データも確認しました。

販売が確認された648の爬虫類分類群の中には、ワシントン条約の附属書掲載種であるにもかかわらず、取引データ上で輸入記録が確認できない附属書掲載種(17種)が含まれていました。

また、野生由来の個体を繁殖個体であると偽って輸入された(ロンダリング)可能性のある個体の販売も確認しました。

コルデンシスツリーモニター(Varanus kordensis)というオオトカゲの一種が、日本国内で野生由来の個体として販売されていましたが、日本が本種の野生個体の輸入をしたのは約30年前にのぼり、それ以降の輸入は飼育下繁殖由来の個体となっています。本種の寿命は長くとも14年程度と知られており、野生由来の個体が、飼育下繫殖個体として輸入されたと考えられます。

現状では、日本国内で販売・展示される野生動物には、由来表示義務がありますが、対象は限定的で運用も徹底されていません。

事実、市場調査では由来や原産国の情報が示されていない個体が多く販売されていました。さらに、流通経路を追跡・証明するトレーサビリティ制度がないため、その動物の出所を確認する手立てがありません。

野生由来であるのか、繁殖された個体であるのか、どの国からいつ輸入されたのか、といった情報は、消費者が購入を考えるうえで重要であるだけでなく、違法に入手された個体が日本国内の市場に出回ってしまう可能性を排除するためにも重要となります。

野生動物を販売する事業者は、その由来や原産国を正確に把握し、消費者に提示するとともに、トレーサビリティを確立し、取引の透明性を担保するべきです。

そのためには、政府機関と連携しながら、野生動物が生息国や原産国を離れ、日本で販売されるに至るまでの流通経路が辿れるようにトレーサビリティシステムの構築に繋げていく必要があります。

日本への輸入記録がなく、かつ生息国で保護されているにもかかわらず、日本国内で販売されているミミナシオオトカゲ(Lanthanotus borneensis)。日本国内でのミミナシオオトカゲの取引は違法ではなく、現在市場に流通する個体は繁殖個体の可能性が高いですが、トレーサビリティ確保の仕組みがないため、親個体の入手経緯など由来の合法性の確認は困難です。
@TRAFFIC

日本への輸入記録がなく、かつ生息国で保護されているにもかかわらず、日本国内で販売されているミミナシオオトカゲ(Lanthanotus borneensis)。日本国内でのミミナシオオトカゲの取引は違法ではなく、現在市場に流通する個体は繁殖個体の可能性が高いですが、トレーサビリティ確保の仕組みがないため、親個体の入手経緯など由来の合法性の確認は困難です。

ワシントン条約の限界:日本が輸入する野生動物のうち、ワシントン条約による国際取引規制・管理の対象となっている種は、全体の半分以下

ワシントン条約の附属書に掲載されている種であれば、どの種がどの国からどのくらい輸出されたのか、といった情報を確認することができます。

しかし、日本が輸入した生きた野生動物の全体の輸入量と、ワシントン条約附属書掲載種の輸入量を比較したところ、ワシントン条約の附属書掲載種の輸入量は、全体の半分にも満たないことが分かりました。

日本が輸入した生きた爬虫類の貿易統計上の輸入量(水色)と、ワシントン条約のもとで輸入した輸入量(斜線水色)の比較(線グラフは、輸入したワシントン条約対象種の分類群数)。ワシントン条約の対象種として取引管理が可能なのは、いずれの年も全体の輸入量の40%にもなりませんでした。

日本が輸入した生きた爬虫類の貿易統計上の輸入量(水色)と、ワシントン条約のもとで輸入した輸入量(斜線水色)の比較(線グラフは、輸入したワシントン条約対象種の分類群数)。ワシントン条約の対象種として取引管理が可能なのは、いずれの年も全体の輸入量の40%にもなりませんでした。

日本が輸入した生きた両生類の貿易統計上の輸入量(黄緑)と、ワシントン条約のもとで輸入した輸入量(斜線黄緑)の比較(線グラフは、輸入したワシントン条約対象種の分類群数)。輸入量が増加傾向に転じた2018年以降、ワシントン条約の対象種として取引管理が可能なのは、全体の輸入量の30%にもなりませんでした。

日本が輸入した生きた両生類の貿易統計上の輸入量(黄緑)と、ワシントン条約のもとで輸入した輸入量(斜線黄緑)の比較(線グラフは、輸入したワシントン条約対象種の分類群数)。輸入量が増加傾向に転じた2018年以降、ワシントン条約の対象種として取引管理が可能なのは、全体の輸入量の30%にもなりませんでした。

この傾向は、前述の展示即売会の調査でも確認されました。即売会で販売広告が確認された648種の爬虫類のうち、ワシントン条約附属書掲載種の数は、313種(48.3%)にとどまりました。両生類に関しては、確認された87種中、ワシントン条約附属書掲載種は21種(24.1%)のみでした。

ワシントン条約に掲載されていない種の中には、絶滅のおそれの高い種も多数含まれています(例えば、ベトナムの固有種ヤミイロホソユビヤモリ Cyrtodactylus nigriocularis、タイの固有種セスジディクソンゲッコー Dixonius kaweesaki、ニューカレドニアの固有種コモチミカドヤモリ Rhacodactylus trachycephalus)。

こういった種の輸入動向や取引量を確認できないことは、それら種の取引が、持続可能であるのか判断することを難しくしています。ワシントン条約附属書に掲載されているか否かに関わらず、日本国内で販売されている野生動物の取引をモニタリングし、データを蓄積する必要があります。

違法取引と執行の課題:国内需要が背景となった希少種の密輸と捜査に繋がらない差止事案

2020年から2024年にかけて日本の水際で税関が差し止めたワシントン条約対象の動物(生体・死体)の記録を確認したところ、少なくとも20件、合計1,209個体におよびました。

動物の輸送手段としては、商業航空(貨物)を利用したものが一番多く(20件中14件)、一件ごとの差止個体数が多く、一度に341個体にのぼる事案もありました。

差止個体の大部分は爬虫類や両生類であり、ペットとして日本で取引されているアカメアマガエル Agalychnis callidryas、トゲオイグアナ属 Ctenosaura spp. やトゲオアガマ属 Uromastyx spp. が多く含まれていました。

商業航空(貨物)から差し止められた事案の多くは、「任意放棄」や「廃棄」としてその場で処理され、その後の警察による捜査につながらなかった事案ばかりでした。

アカメアマガエル(Agalychnis callidryas)。ニカラグアから合計200個体が、必要な輸出許可書を伴わずに到着したため差し止められた事案で、警察による捜査は行なわれなかったことがデータから確認されました。
© naturepl.com Edwin Giesbers / WWF

アカメアマガエル(Agalychnis callidryas)。ニカラグアから合計200個体が、必要な輸出許可書を伴わずに到着したため差し止められた事案で、警察による捜査は行なわれなかったことがデータから確認されました。

また、日本を目的地として海外で差し止められた事案を確認したところ、2025年5月にはメキシコシティ国際空港で、メキシコ国籍の男が約300個体の爬虫類を日本に密輸しようとして逮捕されています。

なお、本報告書では事案として取り上げていませんが、つい最近、2026年8月に羽田空港で、メキシコ国籍の男が200頭もの希少なトカゲを密輸しようとして逮捕されています。

これらの事案は、日本で高値でペットとして取引される動物を密輸し、利益をあげようとする国際的な犯罪ネットワークの存在を示唆するものです。

各違反事例における手口や関わる国・地域、犯罪組織の関与の有無や国内の市場との繋がりを解明するためにも、税関と警察、そして輸出国の政府や法執行機関が連携し、追加の捜査など、連携を強化することも重要となります。

国別にみるとタイからの差止事案が最も多く、旅客手荷物から発見されたものがほとんどで、中には日本国内で、高値で取引されている哺乳類や鳥類が含まれていました。

また、人獣共通感染症を媒介するリスクが高いため法律で厳しく管理されている霊長類や鳥類の種も含まれていました。密輸された動物は、検疫を通らずに国内に入り、流通してしまうため、そのリスクがより高まります。

コモンマーモセット(Callithrix jacchus)。日本への霊長類の輸入は厳しく規制されていますが、日本の高いペット需要から、本種を含む霊長類の密輸未遂が後を絶ちません。
© Adriano Gambarini / WWF-US

コモンマーモセット(Callithrix jacchus)。日本への霊長類の輸入は厳しく規制されていますが、日本の高いペット需要から、本種を含む霊長類の密輸未遂が後を絶ちません。

いくら輸入規制を厳しくしても、日本の需要が存続し、消費者が販売されている個体の合法性を確認する手立てがないという構造が続くる限り、法の枠組みをかいくぐり、珍しい野生動物の販売によって利益をあげようとする犯罪行為はなくなりません。

日本の野生動物のペット利用の需要が、違法行為を助長するだけでなく、こうした社会に対する影響を与え得ることを認識する必要があります。

新たなリスクの顕在化:外来種化するリスクの高い種の大量輸入と人獣共通感染症のリスクの高い種の密輸

野生動物取引は、その種の保全や公衆衛生リスクのみならず、持ち込まれる国で外来種化して在来生態系に悪影響を与えるリスクも孕んでいます。

日本が2020年から2024年の間に輸入した生きたワシントン条約附属書掲載種の中で、輸入量が最も多かったクサガメ(9万7,412個体)は、全国各地で外来種として定着している種(かつては日本の在来種であると考えられていたほど日本中に広く分布している)で、日本の在来種であるニホンイシガメと交雑し、遺伝子攪乱を引き起こしています。

また、輸入量が多かった他の種、例えばボールパイソン(6万1,723個体)やグリーンイグアナ(1万1,985個体)は他国で外来種として定着していることが知られています。

これら種をペットとして飼育する人も多く、脱走や遺棄されることをきっかけに、日本の野外で定着する可能性があります。

さらに近年は、気候変動(温暖化)の影響により、もともとの気候や気温では生存できなかった種が日本の野外で生存できるようになり、新たな外来種となってしまう可能性もあります。

現在日本には、輸入量や取引量をもとに、種の外来種化のリスクを評価する体系的な仕組みが存在しません。

輸入・取引量が多く、特に他国で外来種となっていることが知られているような種に関しては、日本での外来種化のリスクを早期に評価し、少しでもその懸念がある場合には予防的措置に基づいて輸入量制限をかけるといった対策が必要となります。

グリーンイグアナ(Iguana iguana)。ペットとして取引されることが多いですが、日本の野外で確認された記録があります。
© Anthony B. Rath / WWF

グリーンイグアナ(Iguana iguana)。ペットとして取引されることが多いですが、日本の野外で確認された記録があります。

消費国としての責任を果たすために

今回の分析から、日本が世界でも有数の野生動物消費国であることが改めて示されました。

そして、日本の野生動物の輸入が、種の存続を脅かす一要因となり、違法取引、公衆衛生リスク、外来種問題など、さまざまな課題にも結びついていることを明らかにしました。

WWFジャパンは、今回浮き彫りになった課題の解決に向けて、主に以下を求めます

【日本政府】

  • 輸入・取引しようとしている種が合法的に取得されたか確認するために、輸出国・原産国との連携を強化すること。
  • 密輸やロンダリングされた個体が流通する可能性を排除するために、トレーサビリティシステムを構築すること。
  • 国際条約や国内法による取引規制の有無にかかわらず、包括的に野生動物取引の流通状況を把握し、持続可能性を担保するために野生動物のモニタリング体制を構築すること。
  • 大量に輸入・取引されている種の外来種化リスクについて体系的に評価する法的枠組みを整えること。

【生きた野生動物を取り扱う事業者】

  • 消費者が十分な情報をもとに責任ある選択をできるよう、由来や輸出国等の表示を徹底し、合法性担保に向けて、流通経路に関する全ての情報を含むトレーサビリティの確保に努めること。
  • 日本の輸入と需要が、野生個体群の減少に加担したり、生息国の保全の取り組みの妨げになったりしないよう、絶滅のおそれが懸念される種や保護されている種の取引の自粛を検討すること。
  • 日本や諸外国の国内法や、国際的な規制に違反する行為をした事業者の市場への参入を認めないこと。

【消費者】

  • 購入を検討している動物がどこから来たのか販売事業者に確認し、飼育することが適切であるか、生物学的、動物福祉の観点や、外来種化や公衆衛生上の懸念を踏まえて考えること。

野生動物の輸入大国として、関係機関・事業者および、消費者一人ひとりが、野生動物の置かれている状況について考える必要があります。

日本の消費行動は、遠く離れた国の自然環境や野生生物の未来ともつながっていることを忘れてはなりません。

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