シリーズ:自治体担当者に聞く!脱炭素施策事例集 製造業の地域脱炭素化×企業価値向上をはかる


京都府「サプライチェーンCO2排出削減事業」(令和3年~)

【施策部門】 産業部門
【施策タイプ】 新規事業
WWFの「ここに注目」
 
  • 脱炭素に向けて原材料の調達から製造、流通、使用、廃棄、リサイクルまでのCO2総排出量を表示する「カーボンフットプリント(CFP)」が求められつつある製造業において、サプライチェーンのCO2排出削減の取組みを支援。有効性の調査結果を公表し、他企業にも促していく。
  • 中小企業を持続可能で競争力のある企業にしていくため、効率的な省エネ・再エネ導入をはかりつつ、地銀などと連携してESG経営を促す誘導施策も検討する。

施策概要

京都府内の企業を対象に、脱炭素に向けたビジネスモデルへの早期転換を促すため、製造業のサプライチェーンにおけるCO2排出削減の支援を行う実証事業。
公募で選定した「株式会社島津製作所」(以下、島津製作所)と同社のサプライヤー5社(いずれも京都府内)に対し、京都府が業務委託した「PwCコンサルティング合同会社」(以下、PwC)と「一般社団法人京都知恵産業創造の森」(以下、京都知恵産業創造の森)がアドバイザー派遣や省エネ診断等を実施。これらの支援を土台に、島津製作所向け製品の製造等にかかるCO2排出量をより実測値に近い形で算定する実証を行った。この際、京都府は中小サプライヤーが活用できる既存設備の高効率省エネ設備への更新等に関する補助金事業も紹介する。平行して、金融機関や業界団体らと「地域脱炭素化に向けたESG投資研究会」を立ち上げ、脱炭素化に向けて早期に対応した中小企業に対する金融支援方策の検討など、府内のESG投資推進のあり方について調査研究を実施。本事業の有効性について調査した結果は、他のサプライチェーンでも応用できるよう京都府のホームページ等で発信する予定。

予算

《費用》
・アドバイザー派遣等600万円(PwCへの業務委託費)
・省エネ・節電・EMS診断事業500万円(京都知恵産業創造の森への業務委託費)※うちサプライヤー5社分
・京-VER創出促進事業補金2500万円 ※うちサプライヤー5社分

《利用した国からの補助金》 なし

削減効果

調査結果が出ておらず不明

その他効果

長期的な波及効果として、サプライチェーンを構成する大手企業と中小企業の競争力強化が想定されている。

施策を通して

<実施前の課題>
公募に手を挙げた島津製作所は、SBT(Science Based Targets)認定を取得していることから、取組み自体はスムーズに進むものと考えられていた。一方で、京都府内の製造業界にヒアリングしたところ、地域的な傾向として、メーカーとサプライヤー(中小企業)は対等な取引関係を築いており、メーカーの一方的な意向だけでは協力を得られにくいことがわかった。そこで京都府は、省エネ施設等への改修費に要する経費を補助する「京-VER創出促進事業補金」(既存事業)について、サプライチェーンで取組む中小企業への補助率を3分の1→2分の1に引き上げ、インセンティブの向上をはかった。

<実施における課題や改善点>
サプライチェーンでCO2排出削減を進める過程においては、サプライヤー側の技術的な企業秘密部分も含めた情報共有のあり方も障壁になる場合がある。ただ本事業では、島津製作所とサプライヤーがもともと密な連携をとってきたこともあり、特に課題はなかったものとみられる。また、ビジネスコンサルタントの専門業者が間に入ることで、各企業と調整しながらそれぞれ必要な対策をスムーズに進めやすい面もある。

<施策のメリットとデメリット>
メリット: 京都はもともと企業グループのつながりがある土壌だが、今回のようなサプライチェーンにおける共同の取組みをきっかけに、より強固な連携や事業効率化といった相乗効果が想定され、地域全体の競争力強化、ひいては自治体の税収アップにもつながると考えられる。また、経産省が制度設計を進めている「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ」の企業参画の要件に「サプライチェーンでの炭素中立に向けた取組み」が挙げられており、本事業は対象事例になりうる。


デメリット: 特になし

こんな自治体にオススメです

域内で完結するサプライチェーンがあると、支援を進めやすく効果も大きいと思われる。

今後の方針

中小企業向けのSBT認定取得などを促す支援も検討していくほか、本事業の次のステップとしてCFPの算定・公表を実現し、府内企業の「低炭素製品の見える化」を目指していく。


※「SBT(Science Based Targets)認定」…CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)の4団体により設立された国際的な環境機関「SBTイニシアチブ」が、企業に向けて科学的根拠に基づくCO2排出量削減目標を設定するよう推進するとともに、企業の削減目標を審査し付与している国際認定。島津製作所は2019年11月に認定取得。

自治体担当者からのコメント

京都府府民環境部地球温暖化対策課
増田洋介さん

中小企業の皆さまが、脱炭素化に向けた取組を通じて、持続可能で競争力のある「強い企業」に成長していくために行政に何ができるか。補助金やアドバイザー派遣といった旧来的な政策手法も有効ですが、地域金融機関や大企業(メーカー等)と連携したアプローチも必要になってくると感じています。これからも、脱炭素化×企業価値向上を目指す京都企業によるサプライチェーン排出削減へのチャレンジを後押しして参りたいと考えています。

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