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「節水型乾田直播」~田んぼに水を張らない米作り、安易な推進に警鐘を鳴らす院内集会


2月24日、衆議院議員会館で開催された、市民団体が主催する集会に参加しました。テーマは、「節水型乾田直播」。

漢字がずらりと並ぶ聞き慣れない言葉ですが、これは、田んぼに水を張り、田植えをする日本の伝統的な稲作とは異なり、水を張らない状態の田んぼに直接種を蒔き、必要最小限の水を使って稲作をする技術のことを指します。この農法では代掻きや田植えの工程が省略され、水管理の労力を削減できるとされています。

しかしその一方で、治水や水質の浄化、そして生物多様性の保全といった、従来の田んぼが持つ様々な役割が失われるリスクにもつながります。


この技術の推進に危機感を募らせる、全国の農業・有機農業関係者や団体、消費者団体、市民団体、環境団体などが、農林水産省の担当者を招いて、議員会館で集会を実施。国会議員も参加しました。

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危機感の核となるのが、「節水型乾田直播を普及することは、すなわち水田が持つ様々な機能が失われる可能性がある」という看過できない問題です。

参加団体からは、様々な意見や疑問がぶつけられました。

【WWFジャパンも参加した共同声明2025年10月】
共同声明:節水型乾田直播の安易な普及を控え、水田の多面的機能の維持を求める

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農業は単に経済活動ではなく、国土の保全、水源涵養、自然環境の保全、文化の伝承といった「多面的機能」を持つことが、日本の農業の憲法ともいわれる「食料・農業・農村基本法」に明記されています。

過去5年で農家が24%も激減している中、「農業構造転換」の重要性はかつてなく高まっています。しかし、経営体の経済性の向上だけを優先した政策が先行すれば、水田や周辺の水路が育んできた生物の豊かさが損なわれ、地下水源維持や気温調節、水害防止機能といった様々な機能が低下し、我が国の自然資本の損失につながります。

さらに、近年希薄になりつつある、水田や農業を通じた自然と人のつながりや、地域社会の結びつきといった、貨幣では測れない国の豊かさの損失に拍車をかけることになります。

農林水産省は、節水型乾田直播については、まだ「実証段階にある新技術」と説明しています。

今後、水田が担ってきた治水・水源涵養・気温調節・生物多様性の保全などの「多面的機能」への影響を十分に検証することは不可欠です。

その上で農業構造転換についても、日本の自然資本と社会的資本の持続性に直結する課題として、総合的かつ一貫性のある政策として進めていくことが強く求められます。

(生物多様性政策担当:北出)

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自然保護室(野生生物)
北出 智美

修士(生物学、生物多様性マネジメント)
国際的な自然保護に携わることを目指し、カナダのブリティッシュコロンビア大学で生物学を専攻。遺伝子レベルの進化と多様性に魅せられアルバータ大学でシカの遺伝子の研究を行なった。国際NGOでの就職を目指しオックスフォード大学で生物多様性マネジメントを履修し、帰国後外務省任期付職員として環境条約に携わる部署に勤務した後、2013年にWWFジャパンに入局。WWFでは野生生物取引に特化した活動を行うTRAFFICで活動し、2020年より現職(2018年からTRAFFICジャパンオフィスの代表も務める)。

「野生生物取引」の問題は、SNSで話題のカワイイの野生動物ペットから、犯罪組織と巨額のマネーがからむ密輸の問題まで本当にダイナミックで、活動の切り口も様々。日々、新しいことを学びながら、今、自分たちがやるべきことは何かを考え抜き、行動したいと思っています。

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