シリーズ:自治体担当者に聞く!脱炭素施策事例集 リサイクル率日本一、焼却に頼らずごみを減量


©大崎町

鹿児島県大崎町「大崎リサイクルシステム」

【施策部門】 家庭部門業務その他部門
【施策タイプ】 条例・ルール作りその他
WWFの「ここに注目」
 
  • 27品目のごみ分別によりごみのリサイクル率83.1%(2020年度)、リサイクル率14年(うち12年連続)日本一を達成
  • 低コストで、焼却炉に頼らず、一般廃棄物最終処分場(以下埋立処分場)の大幅な延命を可能に
  • リサイクルの先を行くサーキュラーヴィレッジ構想を打ち出したことで、企業からの寄付や研究機関等による評価研究など様々なプロジェクトへと発展

施策概要

大崎町は焼却炉を持たず、かつては、家庭から排出されるすべてのごみを埋め立て処分していた。しかし、平成16年に埋め終わる計画だった埋立処分場の容量が、計画よりも早くいっぱいになることがわかり、それを回避するため平成10年からごみの分別を開始。分別したごみを堆肥化、資源化して埋め立て以外の行き先をつくることで、処分場に運ばれるごみを減らしている。
ごみの分別は、当初は、缶、ビンおよびペットボトルだけだったが、その後、町民の協力のもと分別の区分を増やし、現在は27品目にも及ぶ分別を実施。ごみの出し方についても細かく指定している。また、ごみの収集・運搬や再資源化のための中間処理、生ごみの堆肥化などは、町内に新たに設立された「有限会社そおリサイクルセンター」に委託している。
このような住民・企業・行政の協働により、焼却炉に頼らない低コストの廃棄物処理システム「大崎リサイクルシステム」を確立した。その結果、毎年ごみの80%以上をリサイクルすることに成功し、平成16年に埋め終わる計画だった処分場は、40年以上先まで使い続けることが可能となっている。
また、大崎リサイクルシステムをきっかけに、多様な主体とのパートナーシップを構築。一般社団法人SDGs推進協議会が取り組む「OSAKINIプロジェクト」では、企業からの寄付をもとに、サーキュラーヴィレッジ・大崎町の実現やその仕組みを他地域に展開するための様々な事業を実施している。

大崎町資料(ごみ分別の手引き)を基にWWFジャパン加工

大崎町資料(ごみ分別の手引き)を基にWWFジャパン加工

予算

《費用》
行政コスト(ごみの焼却、埋め立て、収集、運搬、リサイクルなど):住民1人当たり年間7,700円(全国平均のおよそ3分の2)

削減効果

ごみのリサイクル率は83.1%(2020年度)
二酸化炭素の削減効果は、一般社団法人大崎町SDGs推進協議会と国立研究開発法人国立環境研究所との共同研究「大崎町における資源循環・廃棄物処理システムがもたらす多面的価値の評価に関する研究」(令和4年2月開始)で評価していく。

その他効果

・ごみの収集、運搬、中間処理などを行なう「有限会社そおリサイクルセンター」が設立されたことで40人程度の雇用が生まれた
・卒業後、10年以内に大崎町に戻ってきた子どもたちの保護者に対して、最大で元金と利子の返済を全額補助する「大崎町リサイクル未来創生奨学金」制度を、町と鹿児島相互信用金庫と慶應義塾大学SFC研究所が協働で設立。奨学金の原資は資源ごみの売却益金が活用されている。
・インドネシアの複数の地域で、大崎町のリサイクル技術のノウハウを生かした技術支援を行なっており、国際貢献、国際交流につながっている
・ごみの分別を通じて住民が協力し合うことで、コミュニティ機能の醸成、強化が期待できる

施策を通して

<実施前の課題>
ごみの分別導入には住民から反発もあったが、埋立処分場の現状、新たに焼却炉や処分場をつくる場合のコストなどの問題を住民に公開し、危機感を共有。住民の理解と協力を得るため、町内に約150あるそれぞれの自治会で、約450回もの説明会を重ねた。ごみの分別については、ごみの種類がわかる写真付きの冊子を作成し、分別のポイントを説明。分別開始から最初の3カ月は、町役場の全職員がごみステーションに行き、住民と一緒に分別を行った。

町民への説明会の様子(写真提供:大崎町)
©大崎町

町民への説明会の様子(写真提供:大崎町)

<実施における課題や改善点>
自治会活動の中で、ごみ排出に特化した衛生自治会という組織を再編し、各地区代表による理事会をつくり、分別の区分を増やすときなどは、必ず理事会にはかったうえで進めていった。代表には、埋立処分場やリサイクルセンターを視察してもらい、町が直面する課題を共有していった。分別の区分が増える際には自治会の代表が住民に説明することで理解も得やすかった。

<施策のメリットとデメリット>
メリット:
・埋立処分場の延命化
・雇用の創出
・再資ごみ売却益金の発生
・1人当たりのごみ処理経費の削減

デメリット:
・直接的なデメリットではないが、高齢化により家庭内での分別が難しくなることがある。仕組みを維持していくために、分別が難しい高齢者をどのように支援していくかが、新たな課題となっている。

こんな自治体にオススメです

・既存の埋立処分場を延命したい自治体。かつての大崎町と同じ課題を共有しているため、延命のための分別・リサイクルは将来的なコスト削減とGHG排出量の抑制に寄与できる可能性がある。
・焼却炉の更新時期が迫っている自治体。新しい焼却炉を運用していく将来的なコストを考えると、焼却炉を新設するよりごみを燃やさないやり方のほうが自治体コストを抑えられる可能性がある。ごみを燃やすことで排出されるGHGの量も抑制できる可能性がある。

今後の方針

大崎リサイクルシステムは今後も継続していくが、使い捨て容器の完全撤廃、脱プラスチックを実現し、すべてのものをリユース、リサイクルするためには、流通している商品をつくる企業との連携が欠かせない。そこで、大崎町では資源循環型のモデル都市「サーキュラーヴィレッジ」の整備事業を進めている。これは、リユース容器・包装の開発、フードロスの削減、SDGs教育パッケージの開発などの事業で企業・研究者と地域が連携し、社会課題の解決に取り組むというもので、前述した国立研究開発法人国立環境研究所との共同研究もその取り組みの一つ。企業は「企業版ふるさと納税」を活用し、目的に合った事業に寄付することもできる。

大崎町ごみ・リサイクル・環境ページ

家庭ごみの正しい分け方と正しい出し方

OSAKINIプロジェクト(運営:一般社団法人大崎町SDGs推進協議会)

自治体担当者からのコメント

大崎町住民環境課課長
松元昭二さん

大崎町はリサイクル率日本一を達成していますが、目的はリサイクル率を上げることではなく埋立処分場の延命にありました。しかし、リサイクルだけでは、いずれ処分場はいっぱいになってしまいます。これからは、すべてのものがリユース、リサイクルされる仕組みをつくり、それを地域、社会に広げることが重要です。リサイクルの先の循環型社会の構築を目指し、町として取り組んでいく考えです。

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