シリーズ:自治体担当者に聞く!脱炭素施策事例集 自治体が認定!地域主体でつくる公益的な再エネ事業


© Adam Oswell / WWF

長野県飯田市「地域公共再生可能エネルギー活用事業」

【施策部門】 業務その他部門
【施策タイプ】 条例・ルール作り
WWFの「ここに注目」
 
  • 日本で初めての「地域環境権」に基づく条例の制定
  • 地元の再エネ発電の利益を地域へ寄付
  • 再エネによる売電収益を地域の困りごとの解決へつなぐ
  • 自治体設置した基金により再エネ発電設置調査費用を無利子貸し付け

施策概要

飯田市では、平成25(2013)年に公民協働事業として再エネを活用した持続可能な地域づくりを支援する条例を制定。再生可能エネルギーを市民皆で所有する財産と捉え、市民は優先的に活用して地域づくりをする権利「地域環境権」を保障し、市民を中心とする多様な主体で取り組む再エネによる地域づくり事業を支援している。
市は、住民団体などから再エネ発電設置についての事業申し出を受け、自然環境と調和し、次世代に引き継ぐことが可能な方法で行われるなど「地域環境権」の行使にふさわしい事業かどうか、その事業に持続性はあるかなどを検討。適切な案件は、飯田市との公民協働事業である「地域公共再生可能エネルギー活用事業」として認定される。認定事業は、市による事業の信用性の担保や、市が設置した基金から調査費用の無利子貸し付けの支援を受けられる。さらに申し出のあった認定事業が、飯田市が所有する土地・建物を使う場合は、無償での使用許可が得られる。
また事業認定には、外部の専門家で構成された支援組織の「飯田市再生可能エネルギー導入支援審査会」において、事業の安定運営性及び公益性、担い手の公共性について助言が行われる。民間事業者は単独で事業主体にはなり得ないが、地域の住民組織と共に事業を行うことで参画できる。市有施設を利用しなくても、地域の自然エネルギーを使用した発電事業であること、得られる収益の一部が地域の公共的事業に使われることが確認できれば公民協働事業として認定される。事業で得た売電収益の一部は、地域の課題解決(公共施設維持管理、景観保全事業、環境教育事業、地区交流事業への支援など)へ地域貢献寄付金として寄付する。

概要図

予算

《支出費用》 飯田市が負担する経費は、再エネ審査会の運営など事業認定の経費及び事業前段の調査費用に対する貸し付けに伴う利子分となる。令和2年度決算は事業認定の経費として18万6千円、貸し付け利子は0円であった。

《利用した国・県などの補助金制度》 特になし

削減効果

条例制定からの8年間で認定した事業数は21件。2020年時点における稼働済み事業によるCO2削減量の見込みは年間627.6tになる。またこれらの事業は、地域住民の環境への意識啓発にもなり、各家庭における太陽光パネル等の設置による再生可能エネルギーの推進や日常生活における省エネの推進につながっている。

(左)第2号認定事業 山本おひさま広場(右)第3号認定事業 杵原学校
出典:飯田市公式WEBサイトより引用

その他効果

売電収益の一部を地区の自主財源とすることで、地域の課題解決やまちづくりの資金となる。特に、小中学生と高齢者の交流や、不法投棄防止のために住民が総出で実施する事業の財源に充てるなど、本事業を通じて地域活力の創出に大きく貢献している。

施策を通して

<実施前の課題>
再生可能エネルギーが地域に受け入れられ普及が進むためには、公益性を備え、将来世代を見据えた持続可能な地域づくりの観点が必要。これが欠落しないよう、町内会や自治会などの地域団体が制度を理解したうえで事業実施を決定する必要がある。そのためには、まずは地域内での議論を経ることで課題を整理し、地域内で課題解決の有効な方法を模索・共有することが重要となる。

<実施における課題や改善点>
地域団体は数年ごとに役員交代があるため、継続にあたり計画当初の思いをいかに引き継いでいくかが難しい。また、計画当初には想定していなかった新たな地域課題を解決するために、事業内容を再度検討していくべき状況が訪れることがある。このため、自治体は年に1回の事業報告を求め、他事業の情報も共有する報告会を開催し、有意義な事業継続につながるよう支援している。事業は長期間にわたるため、特に地域団体がこの事業に継続的に取り組む体制を維持することが重要となる。
地域の意見がまとまらない場合は、一部の強力な意見に従って地域貢献寄付金(事業収益)が使われ公益的な課題解決に結びつかない恐れがあるため、準備段階同様に丁寧な意見形成が必要となる。

<施策のメリットとデメリット>
メリット:
再生可能エネルギーの導入推進、地域貢献寄付金を活用した地域自治活動の展開、住民による具体的な地域課題の解決。また、再エネの活用を通じて企業を地域住民団体と協働する方向に誘導し、当該企業のCSR活動にもなる。

デメリット:
地域団体及び協力事業者は、地域における合意形成と事業の組上げに多大な労力が必要になる。特に、寄付金の使途を決定するために、申請者となる地域等で何度も話し合う必要がある。また、地域団体への寄付金の額、協力事業者の収入額は決して大きいものではないため、大規模事業への展開は難しい。

こんな自治体にオススメです

地域の住民自治がしっかりしている自治体。実施主体としても「自立」している地域団体を有する自治体では、協働し取り組みやすい。

今後の方針

今後も継続予定。しかし、太陽光を活用した場合は、国の固定価格買取制度を活用したスキームでは、買取価格が下落し事業の構築が難しくなりつつある。今後は、太陽光発電を活用したPPA(Power Purchase Agreement)や太陽光発電の自家消費型での展開を検討していく。

自治体担当者からのコメント

長野県飯田市 市民協働環境部 環境モデル都市推進課

本施策は、しっかりとした地域住民自治の上に成り立っています。日頃の話し合いで出された地域の課題に対し、市の予算化が難しいものや、必要ではあるが他の政策が優先されてしまってなかなか実現できないものを、再生可能エネルギーから生み出される収益を原資とする寄付金を活用して実行するものであり、地域に活力を与えるものです。ぜひ、地域の中へ飛び込んでそれぞれの自治体にあったスキームを構築してください。

*組織名は、22年4月から「ゼロカーボンシティ推進課」へ変更予定

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