シリーズ:自治体担当者に聞く!脱炭素施策事例集 都市部が秘める再エネポテンシャルを最大限に発揮


京都府「一部建築物への再エネ導入義務制度の拡充」(令和2年度~)

【施策タイプ】 条例・ルール作り
WWFの「ここに注目」
 
  • 特定建築物と準特定建築物を対象にした再エネ設備導入・設置の義務制度によって、土地の限られた都市部における再エネ導入推進をはかる。
  • 建物の設計等を手がける建築士から建築主に対する説明を義務化。再エネ設備導入にかかるメリットを最大限まで具体的に提案してもらうことで、義務量程度にとどまらない導入を促す。

施策概要

京都府が定める条例に基づく、特定建築物(延床面積2000㎡以上)への再エネ設備設置義務量の引き上げと準特定建築物(延床面積300㎡以上2000㎡未満)への再エネ設備導入及び建築士による説明義務制度の創設。

京都府は平成 24 (2012)年度、「京都市地球温暖化対策条例」(平成17年施行)、「京都府地球温暖化対策条例」(平成18年施行)を改正し、特定建築物の建築主に対して再生可能エネルギーを利用するために必要な設備(以下、「再エネ設備」という。)の導入・設置を義務付けた。その後、平成28(2016)年に「京都府再生可能エネルギーの導入等の促進に関する条例(以下、「再エネ条例」という。)」を施行し、地球温暖化対策条例から一部規定を移管したほか、再エネ設備導入等の報告・公表制度も創設した。
さらに、新たに掲げた「2050 年脱炭素社会」の実現に向けて再エネ設備の導入拡大をはかるため、令和2(2020)年に再エネ条例を改正し、①特定建築物に対する再エネ設備導入・設置義務量の引き上げ(改正前:一律3万MJ/年→改正後:延床面積に応じて6~45万MJ/年)、②準特定建築物への再エネ設備の導入・設置義務の創設(一律3万MJ/年)を盛り込んだ。
改正後再エネ条例の令和4(2022)年4月施行に向け、令和3(2021)年4月に「建築物における再生可能エネルギーの導入等に係る建築士の説明義務制度」をスタート。建築士から建築主に対して再エネ設備導入のメリット(環境負荷低減、光熱水費の削減、停電時のエネルギー利用)や最大導入可能量等を説明してもらうことで、義務量にとどまらない再エネ設備導入の拡大をはかる。

予算

《費用》 特になし(説明会や動画制作等にかかる費用は本事業予算には計上していない)

《国からの補助金》 なし

削減効果

特定建築物への再エネ設備導入実績(平成24年度~令和元年度)
・太陽光換算で延べ210件、1万1,063kW。(一部ペレットストーブや地中熱)

その他効果

再エネ設備の導入にかかわる関連業者等への経済的効果が考えられるが、自治体として特にデータはとっていない。

施策を通して

<実施前の課題>
これまで京都府は「京都議定書」誕生の地として、地球温暖化防止に資する再生可能エネルギーの導入促進について多様な施策を推進してきた。その一つだった特定建築物の再エネ設備の導入・設置義務制度については、実際の導入量をみると、延床面積が大きくなっても導入量が規定(3万MJ/年)程度にとどまるケースが多かった。また、建築事業者へのアンケート調査では、「(現在の)義務量は大きな負担ではなく、不満は聞いたことがない」という意見がある一方で、「条例規定ミニマムでないと(建築主側の)社内合意が取れないこともある」といった意見も見受けられた。そこで再エネ条例の改正により、延床面積に合わせて比例式に義務量を引き上げたほか、準特定建築物に対しても新たに一律の義務量を創設した。

<実施における課題や改善点>
条例改正を前に、特定建築主を対象に行ったアンケート調査では、「再エネ設備の導入量をどのように決めたか」という問いに対し半数以上が「建築事業者(建築士等)からの提案」と回答、さらに提案内容は「条例の義務を果たす程度」という回答が約9割を占めた。
この調査で、再エネ設備の導入量には“建築士等からの提案が大きな影響を与える“ことが判明。建築主に対しては、建築士からの適切な情報提供によって環境性能の高い建築物のメリットを理解し、建築物の仕様に反映してもらうことが望まれた。そこで、義務量引き上げ等に先立ち、建築士による建築主への情報提供と説明を義務付けることとした。制度内容については、建築事業者や建築士等への説明会を実施したほか手引きも制作し、関連団体を通じて周知徹底をはかった。

<施策のメリットとデメリット>
メリット: 特定建築物等は再エネ導入のポテンシャルが高い一方で、一旦建築されてしまうと長期にわたりCO2排出量に影響を及ぼすことから、新築・増築時点での導入義務化はCO2削減へのメリットが大きいと思われる。また、建築士による説明内容には「再エネ設備から得られる電気または熱の最大量」が含まれており、幅を持たせた試算と提案によって建築主は、義務量をクリアする程度にとどまらず最適な導入量を選択する機会が広がったとも言える。


デメリット: 特になし

こんな自治体にオススメです

大規模な太陽光・風力発電などが可能な土地に恵まれた地域とは違い、建物の屋根部分を少しでも有効活用する必要がある都市部で、特に効果が見込まれる。

今後の方針

当面は、今回の新たな制度を順調に運用できるよう注力する。条例については大体5年周期で見直しており、より効果的なルール作りを目指していく方針。

自治体担当者からのコメント

京都府府民環境部地球温暖化対策課
島崎朱里さん

2050年脱炭素社会の実現に向け、建築物分野においては、省エネ性能の向上等により省エネルギーを徹底しつつ、再生可能エネルギーの一層の導入拡大に取り組むことが求められています。本府の特定建築物への再エネ導入義務は、府民・事業者の皆さまのご理解や建築士の皆さまのご協力に支えられ、制度開始後約10年が経過しました。2022年度からは大規模建築物への導入義務量の強化や新たに中規模建築物への導入義務が施行されますが、脱炭素社会の実現に向け、より丁寧な説明を心がけ、引き続きご理解を求めて参りたいと思います。

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