シリーズ:自治体担当者に聞く!脱炭素施策事例集 グループ購入を利用し家庭に再エネを普及(東京都)


© Shutterstock / Andrei Shumskiy / WWF

東京都「再生可能エネルギーグループ購入促進モデル事業(令和元年~2年度、東京都主催)」

(キャンペーン名:みんなでいっしょに自然の電気)

【施策部門】 家庭部門
【施策タイプ】 その他
WWFの「ここに注目」
 
  • 家庭の電気の再エネへの切り替えを促す
  • 太陽光パネルなどの設備の設置が難しい家庭でも取り組める
  • グループ購入することで電気代を低く抑えることができる
  • 共同実施事業者が事業を運営するため、自治体の新たな費用負担がない

施策概要

日本初の再生可能エネルギー電力のグループ購入事業で、家庭の電気を再エネに切り替えを促すことを目指している。都民である購入希望者が消費者グループとしてまとまった需要を確保することで購買力を高め、電気料金の割引を実現。
東京都が公募により選定した共同実施事業者が、再エネのグループ購入を希望する都民の参加登録を募集。集まった“消費者グループ”の購買力を背景にオークションを実施し、割安な料金メニューを提供する電力会社を選定。その上で、参加登録した消費者に料金メニューを提示する。消費者は見積もりを確認した上で、再エネ電力に切り替えるかどうかの判断をする。切り替えを決めた消費者には、共同実施事業者が引き続き購入契約のサポートを行う。
太陽光パネルなどの設備の設置が難しい家庭でも、自宅の電気の契約を見直すことで取り組める施策であり、本事業を通じて再エネ利用のムーブメントを図る。

令和元年~2年度のスキーム

令和元年~2年度のスキーム

予算

《費用》 0円
共同実施事業者が事業を運営するため、東京都の新たな費用負担はなし)
※令和2年度のみ。なお、初年度は、日本初の事業であることを踏まえ、広報経費を計上。

削減効果

令和元年度~2年度までの2年間に3回のキャンペーンを実施し、約1万6,000世帯が参加登録し、約3,100世帯が再エネ電力への切り替えを完了させた。
最終的に消費者が再エネ電力への切り替えに至らない場合でも、再エネの普及啓発という意味で、大きな事業効果が期待できる。

その他効果

電気代は、再エネ30%以上のメニューで年間平均9%(約1万円)、再エネ100%メニューでは年間平均約6%(約7,000円)の削減を実現している(第3回キャンペーン実績、共同実施事業者試算)。なお当初は東京都単独で行っていたが、他の自治体からの賛同を得て、東京電力管内の首都圏の自治体に拡大。令和3年度は、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市の九都県市首脳会議を主催とし、新たに栃木県を加えた10の自治体でキャンペーンを実施している。

施策を通して

<実施前の課題>
再エネ電力のグループ購入事業は自治体だけでは成立しないことが課題。そこで、公募により事業を運営する共同実施事業者を選定することで実現した。

<実施における課題や改善点>
グループ購入の効果を高めるには、いかに多くの消費者に参加登録してもらうかが課題となる。都民に本事業を広く周知するため、どのような手段が効果的なのか、過去の広報の効果も確認しながら広報活動を充実させていった。広報誌、SNSも活用したが、特に有効だったのは区市町村との連携。小中学校でのチラシ配布による家庭への広報、回覧板による地域への広報などは、区市町村の協力なしではできなかった。

<施策のメリットとデメリット>
メリット:
①1世帯当たりの電力使用量が少なくても、グループ購入により購買力を高めることで、オークションにより割安の料金で再エネ電力を購入することができる。
②電力会社の選定、消費者への見積もりの提示、電力の購入契約などの諸手続きを共同実施事業者がサポートするため、個人で行うよりも再エネ電力への切り替えがしやすい。
③自治体としては新たな費用負担なしでスキームを実施できる。


デメリット:特になし

こんな自治体にオススメです

家庭における再エネ電力の利用促進を目指すすべての自治体に広くおすすめできる。再エネ電力の利用促進というと、費用を投じて太陽パネルなどの設備を設置しなければならないと考えがちだが、太陽光パネルなどの設備の設置が難しい家庭でも取り組める施策になっている。

今後の方針

キャンペーンは、来年度も九都県市首脳会議主催で継続していく予定。

「東京都ホームページ」

「みい電キャンペーンサイト」

自治体担当者からのコメント

東京都環境局 地球環境エネルギー部 都市エネルギー推進担当課長
西脇勇二さん

東京都は、2050年にCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現に向けて取り組んでいます。エネルギーの大消費地である東京では、電気を利用する側からも再生可能エネルギー拡大の取組を牽引することが重要です。本施策は、一定量の需要を背景に、再エネ電力をお得に利用いただくことができる取組です。本施策を通じて、多くの家庭が再エネ電力に切り替えることは、深刻化する気候危機に立ち向かう行動につながりますので、ぜひご参加いただきたいと思っています。

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