責任ある野生生物取引が前進:オンライン取引の課題解決に向けたEC企業の取り組み
2026/09/02
- この記事のポイント
- 2026年9月1日、LINEヤフー株式会社は、同社が運営するBtoC取引プラットフォーム「Yahoo!ショッピング」において、両生類の生体取引や出品を規制する新たなルールの運用を開始しました。野生動物の絶滅リスクにも影響を及ぼしかねない生体取引について、出品する事業者にも責任ある行動を求める今回のルール改定は、これまで野生生物のオンライン取引が抱える課題を指摘してきたWWFジャパンとしても歓迎すべき前進です。ルール改訂に至った背景と、その意義について紹介します。
野生生物のオンライン取引の現在地
日本のインターネット普及率は2023年時点で86.29%にのぼり、また、世帯あたりのスマートフォン普及率は90.6%に達しています。
インターネットは今や主要なインフラの一つでもあり、オンラインでの取引による市場規模は年々増加しています。
その一方で、野生生物もオンライン上で活発に取引されるようになりました。
特に、絶滅のおそれの高い動植物由来の製品や、ペットや観賞用を目的とした動物・植物の生体が拡大。
匿名性が高く、店頭まで足を運ばなくとも、全国どこからでも気軽にアクセスできるオンライン市場を介した取引が、日本でも盛んに行なわれています。
こうしたペットとして利用される生きた個体は、野生から捕獲して取引される場合も少なくありません。
また、その背景には、過剰・違法な捕獲も関係し、個体群や、その生物が生息する生態系に直接的な影響を与えていると考えられています。
さらに、飼育されていた生物が野外に放棄さたり、逃げ出したりすることで外来種となり、自然環境に大きな影響を及ぼしている例もあります。
こうした事態を受けて近年、世界では、さまざまなオンラインプラットフォームを運営するeコマース関連企業による、自主的な取引規制の取り組みが進んでいます。
2018年には、WWFとTRAFFIC、IFAW(国際動物福祉基金)が呼びかけ、「Coalition to End Wildlife Trafficking Online(野生生物の不正なオンライン取引終了に向けた連合体)」が発足。
これまで、違法な野生生物の取引撲滅に向けた取り組みにコミットする、多くのネットビジネスの関連企業が参加してきました。
【関連リンク】Coalition to End Wildlife Trafficking Onlineのサイト(外部サイト、英語)
https://www.endwildlifetraffickingonline.org/
ここに参加しているのは、40社あまりの世界有数のeコマース、ソーシャルメディア、テクノロジー企業です。
これらの企業が、違法な野生生物取引撲滅に向けて、それぞれのサービスにおける最適な行動計画を策定。自主的な取り組みを進めています。
こうしたCoalition参加企業による取り組みは、国際的にも特に課題が大きいとされる、象牙やサイの角、センザンコウの鱗といった、絶滅が危ぶまれる野生動物の製品の他、生きた動物を含むオンライン取引の積極的に販売広告の取り締まりにつながっています。

参加企業が実施する取り組みによる2025年時点の成果。2018年の発足以降、企業によってブロックされた、禁止対象の野生生物の出品・検索および違法販売の疑いがある取引は6,330万件におよぶ。
日本における野生生物取引問題とその対処
日本では現在のところ、国際的に問題となっている象牙やサイの角などのオンライン取引は、限定的です。
とりわけ象牙のオンライン取引ついては、2017年から2019年にかけて、主要なプラットフォームで各社が自主的な取引禁止措置を講じるなど、対策が強化されてきました。
また、「動物の愛護及び管理に関する法律(動愛法)」によって、哺乳類・鳥類・爬虫類については、対面販売が義務付けられていることから、オンラインでの生きた動物の取引の課題は、主に両生類や魚類、昆虫に集中しています。
しかし、これらの分類群については、オンライン市場で活発な取引が行なわれており、野生の個体群への影響が懸念されています。
特に、対面販売の義務付けのない両生類は、生体の取引が盛んに行なわれており、2024年にWWFジャパンが実施したオンライン取引調査では、販売されていた両生類のおよそ4分の1が絶滅危機種(IUNCレッドリスト)で占められていました。
さらに、由来(野生採取個体か繁殖個体か)のわからない出品が3分の1以上であったことが明らかになっています(調査時点)。
こうした状況の中、CtoC取引プラットフォーム「Yahoo!オークション」「Yahoo!フリマ」、BtoC取引プラットフォーム「Yahoo!ショッピング」を運営するLINEヤフー株式会社(以下、LINEヤフー)では、自主的な規制ルールの導入に取り組んできました。
現在も自由な取引市場を提供する企業として、ユーザーのニーズや利便性を担保しながら、生物多様性保全への貢献の一助として、野生生物のオンライン取引の課題解決に向けた運用を推進しています。
LINEヤフーによる新たな出品ルール
その一環として、2026年9月1日からは、「Yahoo!ショッピング」の運用ガイドラインが改定されました。
【関連サイト】改定されたYahoo!ショッピングの新たな出品ルール(外部サイト):
https://business-ec.yahoo.co.jp/shopping/regulation.html
※該当の事項は「Yahoo!ショッピングストア運用ガイドライン」の第1章第3の3「取扱商品等・販売形態について」(1)のシ、第2章第3の2「取り扱い、取引上の注意事項」(2)および(3)
ポイントとなるのは「両生類」の取引規制。主な内容は以下の通りです。
- 販売禁止対象に「両生類の卵塊」を追加
- 商品の説明責任において両生類に特化した事項を追加
➤ 種(しゅ)を問わず、個体ごとに生体の由来情報(野生採取個体か繁殖個体か)を明記すること➤ 野生採取個体の場合は、採取地情報、採取時期を明記すること➤ 繁殖個体の場合は、繁殖地情報、出生時期を明記すること
- 顧客への注意喚起の実施促進
➤ 生体を取り扱う出品者が、生体の野外放棄がもたらす生態系・環境への悪影響について周知すること
これまで、野生生物のオンライン取引については、主に個人間で完結する取引(CtoC)に対する取り組みが進んできました。
しかし今回のルール改定は、ビジネスによる商取引(BtoC)、つまり事業者による取引に一定の規制を課すものであり、これが実施されたことは、画期的と言えます。
商取引は、個人間取引に比べ取引量が多いにもかかわらず、これまでその対処は中々着手されてきませんでした。
そうした中で、事業者の責任を伴うルールの実現は、社会的にも大きな意義があります。

シリケンイモリは、イモリブームをきっかけにオンライン取引が増加したと考えられる。その生息地の一つである奄美大島では、生息地の池からシリケンイモリがある日忽然と姿を消すといった例や、島外へ数百頭単位で持ち出される事例も確認されている。
eコマース業界の取り組みに対する期待
今回のLINEヤフーのガイドライン改定は、日本における野生動物のペット取引の課題解決に向けた大きな一歩として、評価に値するものです。
また同社は、WWFジャパンが2026年8月に発起人となり策定した「野生生物の違法または過剰な利用による絶滅を防ぐための共同宣言」にも賛同するなど、課題に対し前向きな取り組みを継続してきました。
この共同宣言は、野生生物の取り扱いに関する4つの誓約で、野生生物取引に関係する27の企業・団体が賛同しています。
今後、こうした取り組みがeコマース業界全体に拡がることが期待されます。
野生生物の違法または過剰な利用による絶滅を防ぐための共同宣言
- 野生生物の違法または過剰な捕獲・持ち出し・輸出入・販売、これらに伴う外来生物の野外への放出が、生物多様性への直接的な脅威となっていることを認識する
- 合法性が確認できない、または種の存続や生態系に悪影響を及ぼすおそれの高い野生生物の捕獲・持ち出し・輸出入・販売を抑止するため、自社の野生生物や生息地への関わりを把握・評価し、取り組みを進める
- 生体を取り扱う事業者は、野外放出の防止を徹底する
- 上記1.-3.について、消費者/観光客・取引先・社員等への普及と、取り組みへの参加を求める
WWFジャパンはこれまでに、野生生物取引にまつわる問題について、関連企業や消費者への働きかけを続けてきました。
こうした企業による取り組み促進の動きを歓迎すると同時に、今後も、関連業界や社会全体へ影響が拡がるように、活動を続けていきます。
【参考情報】野生生物のオンライン取引対策
WWFジャパンは、オンライン取引の課題を企業に共有しながら、違法性があったり持続可能ではない取引の排除に向けた企業の取り組みを後押ししています。
| 2017年7月 | 楽天(株):象牙・象牙製品の取り扱い禁止を決定 https://www.wwf.or.jp/activities/news/327.html |
| 2017年11月 | (株)メルカリ:象牙・象牙製品の取り扱い禁止を決定 https://www.wwf.or.jp/activities/news/201.html |
| 2018年8月 | WWFジャパン:(株)メルカリで社内勉強会実施 https://www.wwf.or.jp/activities/activity/3706.html |
| 2019年8月 | LINEヤフー(株)(当時ヤフー(株)):象牙・象牙製品の取り扱い禁止を決定 https://www.wwf.or.jp/activities/achievement/4075.html |
| 2020年12月 | WWFジャパン:象牙に関するオンライン取引調査報告[企業による取り組みが一定の成果を上げたことを確認] https://www.wwf.or.jp/activities/activity/4490.html |
| 2022年9月 | LINEヤフー(株)(当時ヤフー(株)):動植物に関するガイドライン細則を改訂[法令規制にない、絶滅危惧種や準絶滅危惧種を取引規制の対象にするなど] https://www.wwf.or.jp/activities/news/5134.html |
| 2024年3月 | WWFジャパン:楽天グループ(株)で社内勉強会実施 https://www.wwf.or.jp/activities/activity/5565.html |
| 2024年6月 | LINEヤフー(株):WWFジャパン主催「奄美大島における野生生物の密猟・持ち出し対策セミナー」にて登壇[取り組みを紹介] https://www.wwf.or.jp/activities/news/5713.html |
| 2024年7月 | LINEヤフー(株):生きものの出品ルールを一部改訂[CtoC取引における両生類について、野生捕獲の出品を禁止] https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/5720.html |
| 2024年12月 | WWFジャパン:両生類のオンライン取引分析[BtoC取引におけるオンラインでの両生類取引の課題を指摘] https://www.wwf.or.jp/activities/lib/5830.html |
| 2025年11月 | LINEヤフー(株)と(株)メルカリ:象牙にかかわる出品ルール(運用やガイドライン)を改定[象牙取引自主規制後に課題となっていた「象牙類似品」の課題に対処するもの] https://www.wwf.or.jp/activities/opinion/6114.html |
| 2026年7月 | LINEヤフー(株)と(株)メルカリ:WWFジャパン主催シンポジウム「野生生物の絶滅を防ぐための約束―南西諸島の現場から考える、生きものの流通・消費・社会の責任」にて登壇[取り組みを紹介] https://www.wwf.or.jp/activities/activity/6315.html |
| 2026年7月 | WWFジャパンが発起人となり「野生生物の違法または過剰な利用による絶滅を防ぐための共同宣言」発出[LINEヤフー(株)、(株)メルカリを含む27の企業・団体が賛同] https://www.wwf.or.jp/activities/statement/6316.html |



