© WWF Japan

サステナブルな綿花を生む、健康な土壌


 冷たい春時雨の中、見渡す限り果てしがない、トルコ・ソケ(Söke) 地区にある綿花(コットン)畑に訪れました。こちらは、WWFトルコが現地の農家と協力して進めている、リジェネラティブ(再生型)農業による綿花栽培の現場になります。

 WWFトルコは、湿地と淡水の生き物を守るために、ブユック・メンデレス川の保全活動の一環で、下流域で行なわれる綿花栽培で引き起こした水資源枯渇の課題にアプローチしました。
 土壌の保水力が向上され、灌漑のための過剰取水、土壌流失を防ぐことに貢献するリジェネラティブ農業を実践しています。

© Charlotta Järnmark / WWF-Sweden

 訪れた農家は2018年よりリジェネラティブ農業に取り組み始めました。そのきっかけは、地域の大規模農家としての責任感でした。
 「水不足、土壌劣化の問題が深刻になっている中、我々が率先に実践し、周囲に良い影響をもたらさないといけない」と、農場技術者が強い信念で語りました。
 
 現地の大学生と共同研究を行ない、畑の耕起程度が土壌の生物多様性、作物の収穫性等に与える影響の対比試験を実施しています。

 秋、綿花収穫後に、ライ、コムギ、バーレイ等の作物を植え、寒い季節に土地の表面を覆います。春、綿花の種まき前に機械でそれらの作物を倒し、高温のシーズンに土壌と綿花の成長を守ります。そのため、土壌がしっとりとした感触で、ミミズが元気に土壌構造の空洞を往復していることも土壌の健康と活力を表しています。

その他、コンポストで堆肥を作り、独自開発された農業機械で散布します。化学肥料の使用を減らし、農業廃水による水質汚染の改善に努めています。

「Soil health comes first」。
 健康な土壌からは、健全な生態系サービスが生まれ、環境負荷の少ない生産に繋がります。
 日本市場で販売されている繊維製品の原材料は、トルコを含む世界各国から輸入されています。
 日々楽しむファッションが、世界のどこかの環境破壊につながらないように。WWFはこれからも、原材料生産現場の環境課題解決と持続可能な調達に向けて取り組み続けます。

淡水グループ、コットン・テキスタイル海外フィールド担当 金惠娜

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自然保護室(淡水)
金 惠娜

修士(文化交渉学・上智大学)。近代アジアの服飾文化交流を研究。アパレルメーカーで品質管理を経験した後、第三者検査機関において海外事業サポートとCSR(企業の社会的責任)監査を担当。 世界各地で人権を守るために、人々が生活している地域の環境、生態系を守らなければいけないと気づき、2025年WWFジャパンへ入局。海外における繊維生産地域の淡水生態系保全活動に従事。

繊維産業を持続可能にするために、人々がファッションが自然や他人に加担することなく楽しめる未来のために、自然に優しいモノづくりを探求し、それを実践している方々と共にそれを常識化していきたいと思います。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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