気候変動に関する国連会議(COP22)と第1回「パリ協定」締約国会合(CMA1)


2016年11月7日から18日にかけて、モロッコ・マラケシュにおいて第22回国連気候変動枠組条約(COP22)及び第12回京都議定書締約国会合(CMP12)が開催されています。今回は、世界の温室効果ガスの排出をゼロにすることを目指す、新しい温暖化防止の国際協定「パリ協定」の第1回締約国会合(CMA1)も開かれることになりました。協定発効後、初めてとなるこの会議で、地球温暖化の防止に向け、世界の首脳はどのような意思を示すのか。WWFでは世界各国から集まったスタッフが会議に参加。その議論の行方を追います。

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発効!「パリ協定」

2015年の国連会議(COP21)で合意された「パリ協定」。これは、京都議定書と同じ発効条件で、世界の排出量の55%以上を占める55か国以上が批准してから、30日後に発効することになっていました。

そして、2016年10月4日その条件が満たされ、11月4日発効することが決定。

9月早々に批准(アメリカの場合は受諾)した米中をはじめ、ブラジル、メキシコ、さらにインドまでもが批准し、EU(欧州連合)では域内28か国の国内手続きが終わるのを待たずに、一括批准するという特別措置を取る英断を下しました。

そのため、このパリ協定は、国際環境条約上ほぼ最も早く発効する国際協定となりました。

採択(1997年)から発効(2005年)まで7年半もかかった京都議定書と比べ、パリ協定が1年未満で発効に至ったことは、それだけ批准した国々を中心に、世界各国が温暖化への危機感を強め、世紀のパリ協定を前進させようという意思を強く持っていることのあかしといえます。

しかし一方で、パリ協定の実施のためには詳細なルール作りが必要です。

このプロセスには特別な対応を必要とされており、COP22において、初めて開催されるパリ協定の第1回締約国会合(以降CMA1と呼ぶ)は、パリ協定実施のための「ルール作り」を今後どのように行なっていくのか、それを決める最初の場となります。

パリ協定を批准していない国はどうなる?

パリ協定は、21世紀末までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという画期的な国際協定。

ですが、大枠は決まっているものの、どうやって実施していくかの詳細なルールはまだほとんど決まっていません。

2015年のCOP21で協定が合意された時点では、2018年ごろを目途にルール作りが終わり、それから開かれるパリ協定の第1回会合で、ルールの採択が行なわれるものと想定されていました。

しかし、実際には前代未聞の早い発効となったことで、ルール作りが終わらないまま、世界各国は「パリ協定」の第1回会議に突入。

これは非常に望ましいことですが、一方で批准が間に合わず、決定権のないオブザーバーとしての参加しかできない日本のような国も出ることになりました。

つまり、こうした国がまだ100か国以上にのぼる中で、パリ協定の第1回会合は開催され、そこでいかに、すべての国をルール作りに参加できるようにするかを決めねばならなくなったのです。


これを実現する手立ては、今のところ二つあるとされています。

  • ①第1回パリ協定締約国会合(CMA1)が、ルール作りの場を改めて定める
  • ②CMA1を開催するが、すぐに中断(suspend)させて、ルールが出来上がった年(2018年など)に改めてCMA1を再開する

多くの国はおおむね②中断の案を支持すると思われますが、2016年5月の補助機関会合では、ブラジルや小島嶼国連合は「中断の手続きだと、各国が早く批准しようという意欲をそぐ」として反対し、①の支持を表明していました。

従って、どのようになるのかは予断を許さない状況です。

今のところ、従来よりパリ協定のルール作りをすすめていた特別作業部会(APAと呼ばれる)が、2016年11月7日から14日まで開催され、その後の11月15日から18日にパリ協定第1回会合(CMA1と呼ばれる)が開催されると発表されています。

おそらくCMA1は開催された後に中断する措置がとられ、APAが継続され、すべての国が参加する形でルール作りが継続されていく形となると考えられます。

危ぶまれる日本の存在感

いずれにしても、記念すべきパリ協定第1回会合に、「正式な締約国」として参加できるか、「オブザーバー」で参加するかは、その国の国際交渉における存在感を大きく異なったものにします。

批准が間に合わなかった日本は、すでにオブザーバー参加が決まっており、出遅れ感は否めません。

脱炭素社会を目指すパリ協定のルール作りは、今後の世界経済を動かすルールとなるでしょう。

その重要なルール作りをいかに主導していくかで、世界各国がしのぎを削る中、日本は今回の批准の遅れの原因となった「温暖化対策は後回し」という国内の風潮から脱却し、積極的にパリ協定のルール作りに取り組むことが求められています。


WWFの取り組みについて

今回のCOP22には、WWFも世界各国から60名あまりのスタッフを集め、参加し。

WWFインターナショナルの新しい気候変動リーダー、マニュエル・プルガービダルの下、会議の行方を見守りながら、協定のルール作りの進展を目指した働きかけを目指します。

パリ協定の成功に向けたロードマップを築いたCOP20の元議長でペルー出身のプルガービダルは、UNFCCC議長に就任したエスピノーザ氏と並んで、高い知名度とその手腕を知られている人物です。

WWFインターナショナル気候リーダー
エマニュエル・プルガービダル(元ペルー大臣COP20議長)

日本からは、WWFジャパンの山岸尚之と小西雅子が参加。

ルール作りにおいて、抜け穴のルールにならないように。パリ協定が、最も高い着地点を目指せるように。現地から最新情報をお伝えしていきますので、ぜひご注目ください!

日本から参加するスタッフ

WWFジャパン 山岸尚之

気候変動・エネルギー グループ長

神奈川県出身。立命館大学卒。ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士号を取得。卒業後、2003年よりWWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連会議での情報収集・ロビー活動などを担当。2011年より現職。
2012年よりカーボン・オフセット制度登録認証委員。

【著書】 諸富徹・山岸尚之/編 『脱炭素社会とポリシーミックス』(日本評論社2010)など
【COP参加歴】 COP9(2003年)より毎年参加
【メディア出演・掲載歴】
  • NHK「NHKニュース」
  • NHK World「News Room Tokyo」
  • 日経BP シンポジウム「池上彰と考える~気候変動と森林保全」出演
  • 環境ビジネス コラム寄稿
  • Sankei Biz、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞 他多数出演・掲載。

WWFジャパン 小西雅子

気候変動・エネルギー プロジェクトリーダー 

兵庫県出身。神戸大学卒。ハーバード大学院にて、公共政策学修士号を取得。中部日本放送アナウンサーを経て、民間気象予報会社で世界の天気と環境報道に携わる。日本気象予報士会副会長。2005年9月より現職。
国連気候変動枠組条約会合参加など国際交渉と、国内のエネルギー&気候変動政策提言に従事。東京都環境審議会委員など公職多数。

【著書】 「地球温暖化は解決できるのか ~パリ協定から未来へ!~」(岩波ジュニア新書2016)など
【COP参加歴】 COP11(2005年)より毎年参加
【メディア出演・掲載歴】
  • NHK「NHKニュース」
  • NHK World「News Room Tokyo」
  • Al Jazeera English「東京都Smart City構想への道」
  • BS11「報道ライブ21 ~INsideOUT 酷暑列島2020年~」
  • 朝日新聞・毎日新聞・読売新聞 他多数出演・掲載

Press お問合せ先

WWFジャパンでは、COP22に関連したメディア関係者の皆さまからのご取材等を受け付けております。お問い合わせにつきましては、下記までお気軽にご連絡ください。

WWFジャパン C&M室 プレス担当

press@wwf.or.jp / TEL: 03-3769-1714 / FAX: 03-3769-1717


第22回国連気候変動枠組条約(COP22)

パリ協定のルール作りについて

今回のCOP22は、パリ協定第1回会合を入れて、図のように6つの会議からなっています。ルール作りはこのうちパリ協定特別作業部会(APA)が主な場となりますが、そのほか実施に関する補助機関(SBI)や科学・技術の助言に関する補助機関(SBSTA)においても行なわれます。

APAにおいては、国別目標、適応の情報、透明性、グローバル・ストックテイク、実施/遵守のルール作りが行われることになっています。国別目標については、きちんとほかの国と比較できるような目標を出してもらうためには、どんな特徴があって、どんな情報を出すべきかのガイダンスなどが決められることになっています。またいかに目標を達成しているかを見ていくための国際検証の仕組みをいかに作るかも重要です。

さらに5年ごとに目標を改善して出すことになっていますが、その際にどんな科学的なインプットで目標を改善していくかを決めていく、グローバル・ストックテイクの議論も、パリ協定の実効力を高めるためには非常に注目を要する議論となるでしょう。これらは、一見テクニカルに思える論点ですが、目標達成が義務ではないパリ協定において、その実効力を高めるために欠かせない論点であるため、議論が尽くされてルールが作られることになるのです。

また、こういったルールは、実はビジネスに非常に影響する内容です。排出量の算定や取引のルール次第で、そこに大きなビジネスチャンスが生まれるためです。このため各国が交渉の主導権を握ろうとしのぎを削ることになります。

パリ協定における主要論点の説明

①国別目標

国別目標に関しては、削減目標に関わるルールについて、さらなるガイダンス(指針)を詰めていくことになっています。特に重要なのは、透明性を促進するために、目標の中で、提供されるべき情報についてのさらなるガイダンスを発展させることです。これは、簡単に言えば、各国がお互いの目標を比較することで理解を深め、より野心の高い目標にするために、どんな情報を出していけばよいかを考えることになります。

②透明性確保の枠組み

透明性に関しては、上記の国別目標について、各国がどのように国際的に報告をして、ちゃんと目標達成に向けて努力をしているのかを見える形にして、国際的にチェックしていく仕組みを作り上げることです。さらにこの透明性の議論には、削減目標の達成だけではなく、途上国に対して行われることになっている資金や技術の支援についても、国際的に報告して、チェックを受ける仕組みを作ることになっています。資金や技術支援は、途上国の温暖化対策への意欲を左右する重要な点であるため、この仕組み作りも同等に重要です。

③グローバル・ストックテイク(科学的進捗評価)

また、現状のパリ協定の下での各国の削減目標は、2度未満に気温上昇を抑えるためには足りないことが明白にわかっているので、今後目標レベルを上げていかねばなりません。各国の目標を全体として足し合わせた際、どこまで気温上昇を抑えるのに貢献しているかを、科学的に検証していくプロセスを、どのように進めていくか、またその科学的な評価をどのように各国が目標設定に反映していくか、などについても決めていくことになっています。これが、グローバル・ストックテイク(世界全体での進捗確認)に関わるルール作りです。

④実施/遵守

そして、パリ協定での様々な約束を、各国が守っていく(遵守していく)ことをどうやって担保したり、促進したりしていくのかを議論するのが、実施/遵守と呼ばれる議題です。

COP22で期待される成果

(1)CMA1(第1回「パリ協定」締約国会合)の開催と、未批准の国を含めたルール作りの場の設定

2015年末には誰もが予想しなかったこの早期の発効は、粛々とルール作りをしていくテクニカルな会議になると思われていたCOP22に再び大きな注目を集める結果となりました。

パリ協定採択後にも温暖化対策の前進へ向けて、再び世界の注目を集め、モメンタム(勢い)を維持した功績は大きいといわねばなりません。早期の発効に寄与した国々は、パリ協定を前進させることによって温暖化対策のモメンタムを維持しようとした積極派であることは間違いないでしょう。

一方で、すべての国を対象とし、法的拘束力のある協定となった画期的なパリ協定は、困難な交渉の結果として、大枠は決まったものの、そのほとんどの詳細なルールは、今後の国際交渉にゆだねられています。

そのルール作りは、世界が初めて、今世紀後半に実質排出ゼロを目指すために、どのようなやり方がよいのかを具体的に決めていく作業です。

未批准の国を含めてルール作りを継続していくために、CMA1は、中断の措置をとることによって、これまで通りAPAやSBの場で、パリ協定に定められたルール作りが進んでいくことになり、未批准の国にとってもルール作りへのフル参加の道は残されるでしょう。しかし、未批准の国を批准させるためのインセンティブのために何らかの措置はとられるのではないかと考えられます。

CMA1が開催される11月15日は、閣僚級会合が始まる日でもあります。日本はせめて11月15日までには批准の手続きを済ませておかねば、それでなくともパリ協定の育成に消極的であることが印象付けられてしまった今、世界排出第5位の国としては恥ずかしい立場に立たされることになるでしょう。

(2)成果はルールつくりの詳細を詰めていく作業計画が具体的に締切をもって出来上がるか

本来はルール作りを進めていくCOP22では、成果としては地味ですが、重要な今後のルールつくりの具体的な作業計画を締切をもって合意することが求められます。

国別目標で出すべき情報や、透明性、市場メカニズムのルールなど、いずれも専門家が集まって技術的に詰めていかねばらならない極めてテクニカルな作業が必要となります。技術的なワークショップや会合などの設定、さらにその作業計画の締切などが、いかに論点ごとに具体的に決まるかが一番の成果として期待されます。

上記のCMA1の再開がいつに設定されるかと絡んで、早めの作業計画が立てられるかが勝負といえそうです。一番の課題は、先進国と途上国を明確に分けて考える「2分論」に対して、「すべての国共通論」の対立が交渉論点のあちこちでまだ深刻に展開される中、途上国のキャパビル(人材育成等も含めた能力強化)や資金支援の話などを先進国側が中心となって具体化し、対立を和らげながら、上記の作業計画を進められるかが肝心です。

(3)2018年の促進対話の議論を進めること

パリ協定は2020年以降の温暖化対策の国際協定ですが、その実施に向けて、関連する仕事はその前から発生します。特に2020年の前には、各国がパリ協定に掲げている目標を改めて提出することになっています。その際に2025年目標を掲げている国は、2030年目標を出し、日本のように2030年目標を最初から掲げている国は、再提出、あるいは更新(update)することになります。

その再提出に向けて、2018年には、その時点の各国の目標の足し合わせた全体目標が、パリ協定の目標である2度未満に気温上昇を抑えることにあっているかどうかを科学的に確認し、目標の促進を議論するプロセス(2018年促進的対話と呼ばれる)が行なわれる予定です。

2018年にはIPCCから「1.5度報告書」が発表される予定。IPCC報告書の発表、グローバル・ストックテイク、各国の国別目標の発表、事前協議、決定などのプロセスは、パリ協定の取り決めをパイロット的に試行する形になるため、その成功は重視されるところでしょう。その議論の場や進め方がCOP22で決められるかどうかも注視されます。

また、COP22ではパリ協定の論点とは別に、「グローバル気候アクション」というイニシアティブのフォローアップが行なわれることになっています。これは2020年までの各国の取り組みのレベルを向上させようとする取り組みで、政府だけに任せるのではなく、自治体や企業、NGOなどが立ち上げたさまざまな取り組みが進行しています。

これらも2018年の促進対話に寄与していくことになる要素です。2016ねn5月に開催された補助機関会合では、多くの論点、特にグローバル・ストックテイクにおいて、この2018年促進対話のことがいろいろな国の発言で言及されていました。特に、COP22の議長となるモロッコの大臣は、この2020年までの取り組みの重要性に何度も触れていたことは注目に値します。この2018年促進的対話の機会をいかに活かしていくかも、マラケシュの大きな注目点となるでしょう。

その他のハイライト

気候変動枠組み条約(UNFCCC)に新しい事務局長がお目見えします。新UNFCCC議長は、2010年メキシコ・カンクンで開催されたCOP16において、失敗に終わったCOP15を乗り越えて「カンクン合意」として見事にまとめ上げたカンクン会議の議長パトリシア・エスピノーザ氏。その手腕で、パリ協定の実施を力強く進めていくことが期待されています。


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