COP22マラケシュ会議が終了 軌道に乗った「パリ協定」のルール作り


アフリカのモロッコ、マラケシュにおいて2016年11月7日から18日まで開催されていた第22回国連気候変動枠組条約(COP22)及び第12回京都議定書締約国会合(CMP12)が終了しました。21世紀末までに、温室効果ガスの排出をゼロにすることを世界が約束した「パリ協定」が発効して、初めての国際交渉となった今回の会議。交渉は最終日の深夜まで続きましたが、期待されていたパリ協定のルール作りは、無事にスタートすることが決まりました。また、最後には2017年の次回COP23は、世界で最も深刻な温暖化の脅威にさらされている国の一つ、フィジーがホスト国となることが決まりました。

期待された成果を挙げたCOP22マラケシュ会議

今回開かれたCOP22では、会期途中の11月15日より、パリ協定第1回締約国会合(CMA1)も開催されました。

一連の会議において、期待された成果は主に二つありました。

  • パリ協定のルール作りの作業計画が明確な終了期限を持って具体的に決まること
  • パリ協定をまだ批准できていない国を含めてすべての国がルール作りに参加できるようにすること(つまり、ルール作りが終了するまでパリ協定第1回締約国会合を中断するなど)

この決定を目指す交渉が、各国政府の代表たちにより2週間続けられました。
その結果、次の流れが確認され、取り決められました。

  1. CMA1は中断の手続きを取る
  2. 2018年のCOP24までにパリ協定のルール作りを完了させ、
  3. その時にCMA1を再開
  4. このCMA1で、協定のルールを採択する
  5. 2020年にパリ協定の取り組みがスタート

つまり、パリ協定は必要なルール作りを2018年までに終え、予定通り2020年に始動する準備が整うことになったのです。

COP22マラケシュ会議は期待された成果を無事に上げたといえるでしょう。

また、COP22ではその最後に、2017年の次回ドイツ・ボンでのCOP23について、温暖化の悪影響に最も苦しんでいる国の一つ、南太平洋の島国フィジーが議長国となることが決まりました。

詳細報告

パリ協定のルールブック作成とCMAの「再開」問題

パリ協定は、米中や欧州連合、インドなどの国々が率先して2016年9月、10月にかけて批准したことによって、2015年末の採択から1年をまたずに2016年11月4日に発効しました。

これは世界がパリ協定にかける意気込みを象徴している出来事で、COP22においてパリ協定の初めての会合が開かれることになったのです。その早期発効を受けて、COP22は明るいお祝いムードで始まりました。

そのお祝いムードは、11月8日のアメリカの大統領選挙の結果で冷や水をかぶせられましたが、しかし、すぐに中国が「アメリカの新政権の様子を注視してはいくが、我々は自国で決めた目標に向かって変わらず温暖化対策を進めていく」と記者会見で発表。

フランスのオランド大統領もアメリカの次期大統領に向かって「パリ協定の約束を尊重するように」と促すなど、他の国々も一応に「他国の動向にかかわらず、提出した国別目標に沿って温暖化対策を進めていく」として、決意を表明したのです。

会場の廊下では全員その話題で持ちきりでしたが、会議場の中ではほとんど影響を受けることなく、もともとの目的であったパリ協定のルール作りの具体化やCMA1の中断手続きの交渉が粛々と進められました。

結論としてパリ協定のルール作りは、2018年のCOP24までに完了させ、そのときに再開するCMA1においてルール作りを採択するということが決まりました。

なぜこうする必要があったのか。

その理由は、パリ協定が発効すると、その締約国会合であるCMA1がすべての権限を持つので、批准していない国は決定権がないオブザーバー参加となり、ルール作りに正式に参加できないからです。

そのため批准していない国も含めてルール作りに参加できるようにするため、CMA1は中断させて、これまでルール作りを行なってきたパリ協定特別作業部会(すべての国が参加しているCOPの下にある作業部会で、APAと呼ばれる)で交渉が継続されることが決まったのです。

このパリ協定のルールを作っていく特別作業部会(APA)において、国別目標としてどんな情報を出すべきか、どうやって目標を達成しているかを見ていくべきか、どのように各国の目標が全体として2度未満に気温上昇を抑えるに足りているかを見るのか、などそれぞれの項目ごとに、2017年にやるべき意見提出やその意見に基づいた統合文書作成、さらにその統合文書に基づいたワークショップなどの予定が細かに決められて、今後のルール作りの作業計画が具体化されたのです。

196か国もの国が参加する国連会議においては、こうしてまずどうやってルール作りを行なっていくか、どんな意見提出を求めるのか、どこで何回議論されるのか、などがなるべく細かく具体的に決まるほど早く進むので、作業計画が合意されることは大きな成果といえるのです。

もちろん、今回の議論は各国が好きなことを言いっぱなしなので、まだまだ各ルールに合意していく道は遠いのですが、少なくともどんなルールになるべきなのか、中身のある議論が始まりました。

「議題無し」から合意に至った重要論点「2018年の促進的対話」

今回のCOP22で、WWFも含めたNGOが重視したもう1つの論点として、「2018年の促進的対話」があります。

パリ協定の下で各国が掲げている現状の温室効果ガス削減目標は、温暖化の深刻な影響を軽減するには不十分な内容です。

このため、パリ協定では、5年ごとに世界全体レベルと各国レベルでそれぞれ、削減目標とそのための取組みを見直し、改善していくという仕組みを導入しています。

その最初の世界全体レベルでの取組み見直しが、2018年に予定されており、交渉では「2018年の促進的対話」と呼ばれています。

この世界全体レベルでの見直しを受けて、各国は国内で見直しをすることになります。

ところが、この「2018年の促進的対話」については、パリ協定採択時に一緒に採択された2015年のCOP21(パリ会議)の決定で、主な目的と2018年というタイミングが決定されただけで、どのようにしてやるのかについては決まっていませんでした。

しかも、今回のCOP22では当初、この問題について議論する「議題」が設定されていなかったのです。

会議が始まってから、WWFは他のNGOと協力して、この問題について、公式な議題には上がっていなくても、議論をして、今回の会議で、準備作業開始を告げる決定が出せるように各国に働きかけをしてきました。

会議の合間に、個別に国々の交渉団に意見交換の場をもらい、その場で、この問題の意義を訴え、今回のCOPで決定を出すことの支持を訴えてきました。

その甲斐もあり、最終的なCOP22の合意には、下記の決定が含まれることになりました。

  1. COP22の議長国および次のCOP23の議長国が協力して、各国と協議を行い、2017年のCOP23で報告すること
  2. その協議は、2017年5月に開催される補助期間会合(SB)とCOP23において行なうこと
  3. その協議は、参加が開かれ、かつ透明性の高いものにすること

手続き的な決定ではありますが、パリ協定最大の特徴である「5年ごとの見直し」の仕組みについて、着実に準備をしくことが決まったことは、今回の会議の隠れた重要成果です。

その影には、WWFを含むNGOの一致団結した働きかけがありました。もちろん、これが決まっただけで2018年が成功するわけではありませんが、そこに向けての「まずは一歩」が確保されたことになります。

COP22が見せた新たな潮流と、COP23への期待

アメリカの次期大統領が温暖化対策に否定的であることは大きな懸念として共有される会議でしたが、パリ協定がすでに発効した今、条約交渉の時代は終わっており、パリ協定をいかに実施していくかの段階に入っています。

その実施のために最も重要なステップであるルール作りが軌道に乗ったことはパリ協定をより強固にしたと言えるでしょう。

またCOP22では、企業や自治体、投資家による温暖化対策を競うイベントが相次ぎ、脱炭素化へ向かう方向性はすでに世界の大きな経済的な潮流となっていることを如実に表していました。

「この大きな経済の潮流に竿を差すことは誰にもできない」とアメリカのケリー国務長官が記者会見で語っていたことが印象的でした。

そしてもう一つ、COP22ではその最後に、温暖化の国際交渉においてまた一つ、新しい歴史を刻む発表が行なわれました。

2017年の次回COP23の議長国が、南太平洋の島国、フィジーとなることが決まったのです(会議自体の開催地はドイツ・ボン)。

フィジーはいうまでもなく、温暖化の悪影響に最も苦しんでいる国の一つです。

その発表の挨拶で、フィジーの代表団はアメリカの次期トランプ大統領に、「フィジーに来て、温暖化のもたらした悪影響を自身で見てほしい。「温暖化がでたらめである」という今の考え方を捨てて、パリ協定に真剣に取り組むよう要請する」と言葉を発し、会場の聴衆は総立ちでそのスピーチに拍手を送りました。

COP23に向けて:日本は?

COP22が始まって2日目にようやく批准した日本は、残念ながらパリ協定第1回会合にはオブザーバーとして参加する結果になりました。

パリ協定の正式な締約国となれるのは、その国が批准してから30日後と決まっているためです。

それでもあと30日待てば締約国に名前を連ねることになりますので、なんとか面目を保ったといえるでしょう。

アメリカ大統領選挙の不透明感もあって、パリ協定を早く発効させようとした欧州連合やオバマ政権下のアメリカ、中国などの国に比べると消極性はぬぐえませんが、パリ協定発車の最後尾には乗ることができました。

しかし、COP22の最後には、排出量の多い石炭火力発電所を新規で48基も建設する計画があることや、途上国における石炭火力発電所に巨額の支援を行っていることについて、パリ協定に逆行するとして不名誉な化石賞を受賞してしまいました。

やはりこういった石炭火力の推進やパリ協定批准遅れを招いているのは、「温暖化対策は二の次」という国内の姿勢のなせる業ではないでしょうか?

パリ協定は2050年までの長期的な削減計画を2020年までに出すことも求めています。

実は今回のCOP22の期間中にすでにアメリカとメキシコ、カナダが提出したのです。

日本においても長期的な削減計画の議論を加速させ、長期的な視点を持って温暖化対策を着実に進めていく姿勢が求められています。

関連情報

現地より動画配信中!

COP22会場より、WWFジャパンのスタッフが現地の様子をお届けしています。

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