国際司法裁判所が国家の気候変動対策の義務を認める!
2025/07/31
- この記事のポイント
- 2025年7月23日、オランダ・ハーグにある国際司法裁判所(ICJ)は歴史上初めて、「国家は気候変動対策の義務を負う」という勧告意見をまとめました。国際司法が、気候変動が人類共通の課題であり、健全な環境が人々の健康と福祉の基盤であることを正しく認識したとも言えます。今後、気候と自然を守らなければいけないという国際司法からのメッセージに各国がどう応えるか、注視されることとなります。
国際司法裁判所による歴史的勧告
2025年7月23日、オランダ・ハーグにある国際司法裁判所(ICJ)は歴史上初めて、地球の気候システムを守るために各国が果たすべき「相応の注意義務(デュー・ディリジェンス)」を明確にし、温室効果ガス排出による気候や自然への影響を回避するという国家の義務を認めました。
さらに裁判所は、地域社会や生態系も保護されるべき存在であり、それらに損害が生じた場合には、回復や補償の義務が発生することを認めました。

国際司法裁判所の裁判官たちがハーグの平和宮に集まり、裁判所長が気候変動に関する国家の義務についての画期的な勧告的意見を発表しました。
これは国際司法が、気候変動が人類共通の課題であり、健全な環境が人々の健康と福祉の基盤であることを正しく認識したとも言えます。
この勧告的意見は法的拘束力を持たないものの、国家の義務に関する法的解釈を示し、各国の政策決定に影響を及ぼすだけでなく、今後、国家に気候変動対策を求める裁判を起こす際にも影響を及ぼす可能性があります。
また、世界の自然と生態系の健全性を確保する上でも重要な意味を持ちます。
太平洋諸島の若者が勝ち取った勝利

ほとんど温室効果ガスを排出していないにも関わらず太平洋の島国は気候変動により存続の危機に直面しています。
この国際司法裁判所の歴史的な勧告的意見は、気候変動の影響に最も脆弱な太平洋諸島の国々の法学生たちの努力の集大成でもあります。
世界の温室効果ガス排出量の0.01%未満しか排出していないにもかかわらず、バヌアツやツバルのような太平洋諸国の国々は、海面上昇によって存亡の危機に直面しています。
こうした国々で法律を学ぶ学生たちの運動をきっかけに、バヌアツの主導で132か国が国際司法裁判所に対し、国家は温室効果ガス排出から気候を守るためにどのような義務を負っているのか、そして、行動を怠った場合の法的な結果は何かを明確化するように求めたのでした。
この案件は前例のない関心を集め、国際司法裁判所史上最多となる91件の書面意見が提出されました。勧告的意見そのものは133ページに及び、裁判所長が読み上げるのに2時間を要したほどです。
司法のメッセージに各国はどうこたえるか
この国際司法裁判所の勧告的意見は、気候と自然にとっての大きな勝利です。
2025年11月にはブラジルで気候変動の国連会議COP30が予定されていますが、COP30では、各国の2035年の削減目標(NDC)の目標引き上げが期待されています。
気候と自然を守らなければいけないという国際司法からのメッセージに各国がどう応えるか、注視されることとなります。