「神は細部に宿りたまう」問われるパリ協定のルール作り


国連の気候変動会議COP22が開かれている、アフリカのモロッコ、マラケシュより温暖化担当の小西です。

3日目を迎えたマラケシュの朝は、アメリカ大統領選挙の結果を伝えるニュースとともに明けました。

新政権の誕生によって、中国と同時に早期に批准してパリ協定の発効にはずみをつけ、近年の国際交渉をリードしてきたアメリカの温暖化防止政策がどうなるのか。

今後への影響に関心を寄せない人はいないでしょう。

アメリカ合衆国のパビリオン。毎日さまざまな発表が行なわれています。大統領選の結果が判明した9日も、予定通りのプログラムが進められました。

しかしこの日、会場では、順調にスタートしたパリ協定のルールづくりを前進させる多くの会議が開かれ、粛々と策定作業が進められました。

パリ協定は、今世紀後半までに「二酸化炭素の排出ゼロ」をめざす長期目標を掲げています。

ただ、その目標を達成するための詳細なルールはまだ決まってはいません。

COP22は、そのルール作りに着手し、作業計画を策定する、初めての国連会議なのです。

パリ協定を批准した国の数を紹介する国連気候変動枠組み条約のサイト。11月8日に日本が批准しその数は103カ国に

ルールの内容は多岐にわたります。

たとえば、各国の今後の削減目標に何を盛り込むのか、という議題一つをとっても、ただ温室効果ガスの削減量だけでいいのか、それとも温暖化への適応計画も入れるのか、さらには途上国の削減行動を支援する資金拠出の額なども盛り込むのか、といった問題があります。

「神は細部に宿りたまう」といわれるように、パリ協定に実効性をもたせ、高く掲げた目標を実現するためには、それぞれの議題ごとに、具体的で詳細なルールを一つひとつ決めていくことが非常に重要なのです。

振り返れば、マラケシュは、京都議定書のルールを決めたCOP7の開催地でした。

そして今、2020年にパリ協定を始動させるべく、そのルールづくりが始まる地として、再び歴史に名を刻もうとしています。

私たちも議論の行方を見守りながら、パリ協定に魂を吹き込み、よりよい結果が引き出せるように、働きかけています。

最終日まで、ぜひご関心をもって見ていただければと思います。

COP22の本会議場。イスラム建築をイメージした木組みの装飾が美しい

関連情報

現地より動画配信中!

COP22会場より、WWFジャパンのスタッフが現地の様子をお届けしています。

この記事をシェアする

専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP