© André Inidio da Silva / WWF-Brazil

メディア勉強会シリーズ「コロナ後の国際動向~生物多様性とワンヘルス」 


生物多様性、感染症、そしてワンヘルスに関する勉強会

2020年3月、WHOは新型コロナウイルス感染症のパンデミックを宣言しました。その半年後の2020年9月、この50年間で生物多様性は3分の2が損失したと、WWFは『生きている地球レポート2020』で示しました。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックを契機に、動物由来感染症と、森林破壊や野生生物取引との関連が世界的に注目され、国際社会では、「人」、「動物」、「生態系」の健康をひとつと捉えるワンヘルスという考えに基づいた生物多様性の回復への動きが広がっています。
今や生物多様性の回復は、気候危機への対策と並ぶ喫緊の課題です。WWFジャパンでは、この地球危機を乗り越えるための国際社会の動きをご紹介し、日本に求められていることなどについて、ジャーナリストの皆様と意見交換する場として、2020年10月より、勉強会を数回にわたって開催しています。

これまでの勉強会の概要 および資料

こちらのサイトでは、これまでの勉強会で使用している資料を公開しています。 ぜひご活用ください!

第6回:生物多様性の経済学 ~ダスグプタ・レビューから読み解く、自然資本の未来と求められる金融の変革(2021年6月8日)

いまや生物多様性の損失は、気候変動とともに、世界経済の大きなリスクとして知られています。自然は、経済活動の基盤である土壌、大気、水などを供給し、世界の総GDPの半分以上にあたる44兆ドル(約4,480兆円)の経済価値を生み出しています(世界経済フォーラム、2020)。一方で、人間は、森林を伐採し、農地の拡大を進めるなど、自然が回復するよりも早いスビートで自然資源を消費し、あたかも無限であるかのように扱っています。
2021年の生物多様性条約第15回締約国会議の中心議題は、ポスト2020国際枠組みを採択することです。2030年までに生物多様性を回復軌道に乗せるため、経済や社会の変革の方法について、現在、専門家会合などで話し合いが続いています。
この次の10年の経済や金融の方向を決めるタイミングで、2021年2月、英国財務省は、生物多様性と経済の関係を分析した、パーサ・ダスグプタ経済学名誉教授(ケンブリッジ大学)による報告書『生物多様性の経済学:ダスグプタ・レビュー』を発表しました。これまでの経済で生物多様性は、どのように扱われていたのか具体的な事例を踏まえて説明しています。
そこで、ダスグプタ教授ともかかわりが深い2人の環境経済学の専門家にレビューの内容をわかりやすく解説していただきました。同志社大学経済学部の和田教授からは、経済学の歴史や背景について、また、国立環境研究所主任研究員の山口氏からは、自然資本の考え方について、お話しいただきました。
また、具体的な施策事例として、WWFが提案する金融のしくみTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)について最新情報を担当者から紹介しました。 

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(資料の使用に関しては個人使用に限ってお願いします)

第5回食と生物多様性の回復~生物多様性条約COP15に向け必要な政策を、農林業や食の視点から解説(2021年4月16日)

日本の生物多様性は、過去50年で損失、劣化傾向にあることが、2021年3月に環境省が発表した「生物多様性及び生態系サービスの総合評価2021(JBO3)」報告書で明らかになりました。日本の生物多様性を回復に転じるためには、これまでの直接要因を対象とした対策だけでなく、生産と消費の見直しなど、間接要因への対処による社会変革が重要である、としています。

これは世界の生物多様性の状況をまとめた「生物多様性及び生態系サービスの地球規模評価報告書」(2019,IPBES)での結果や提案と同様の方向を示しています。

とくに世界が注目する課題は、生産と消費の見直し、なかでも「食」です。近年、食料確保のため、農業による森林伐採、持続可能でない方法による土地劣化、水資源の枯渇など、さまざまな問題が浮き彫りになっています。すべての人がかかわっている「食」―どのようにすれば、食料確保と生物多様性の保全が両立するのでしょうか。

2021年10月、生物多様性条約第15回締約国会議が中国昆明で開催される予定です。ここで、ポスト2020生物多様性国際枠組みを決定します。国際枠組みのなかに、「生産と消費の見直し」が的確に取り入れられ、実行することが求められます。

そこで、元生物多様性条約事務局スタッフとして会議運営に関わり、長年自然資源管理の研究をされてきた香坂先生に、生物多様性条約のしくみや背景、また農林業など食のしくみが生物多様性に影響することなどを具体的な事例を交えてお話しいただきました。

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第4回生物多様性の回復と国際的な動き~自然に根ざした社会課題の解決策(2021年1月21日)

新型コロナ対策と持続可能な社会づくりを同時に進める経済再生策、グリーンリカバリーがヨーロッパ中心に進んでいます。そのなかで、いま注目されている考え方が、「自然に根ざした解決策(Nature-based Solutions:NbS)」です。NbSの特徴は、気候変動、食料安全保障や自然災害対策など、さまざまな社会課題を解決することを目的として、自然から学び、自然の機能をうまく活用しつつ、地域の人たちに貢献することです。

気候変動対策では、生態系を活用した気候変動適応策のEbA(Ecosystem-basedAdaptation)が注目されています。また、自然災害が多い日本では、自然の機能を活かしたグリーンインフラ、生態系を活用した防災・減災策のEco-DRR(Ecosystem-basedDisasterRiskReduction)の基となる考え方として、NbSが重視されています。

2021年10月頃、現在の生物多様性の危機を乗り越えるための国際的な枠組み「ポスト愛知目標」が、生物多様性条約第15回締約国会議で話し合われ、2030年までの目標が決定します。2020年8月の「ポスト愛知目標」ドラフトには、「自然に根ざした解決策」が提案されています(ターゲット7、10)。また、2021年1月にフランス政府、国連、世界銀行の共催で開催されたワンプラネット・サミットで、イギリスとフランスは、気候変動対策の海外への公的資金の30%を、「自然に根ざした解決策」に充当することを発表しました。

古くて新しい考え方「自然に根ざした解決策」をよく知り、国内でも広げていくことが生物多様性の回復につながります。

そこで第4回目では、IUCN日本リエゾンオフィス/大正大学地域構想研究所教授古田尚也氏を講師にお招きし、生物多様性の回復に「自然に根ざした解決策」を活かす方法について、国内外の事例を交えてお話いただきました。また、その背景にある、なぜ生物多様性が大切なのか、地球の緊急事態についてWWFジャパン清野比咲子が解説しました。

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第3回 次のパンデミックを防ぐためのワンヘルスとは~動物由来感染症とワンヘルスを巡る世界と日本の動向(2020年12月17日)

動物由来感染症である新型コロナウイルス感染症の世界的流行(パンデミック)は依然として続いています。2020年10月29日には、IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)が、自然破壊とパンデミックに関する報告書を発表しました。報告書によると、哺乳類、鳥類が保有しうる未知のウイルスは170万種あり、そのうち最大で85万種が人間に感染する可能性があるとされ、次のパンデミックが起こりうるとの警告を発していることに加え、その予防のためには、「ワンヘルス」の実現が急務であると指摘しています。

そこで、人と野生動物に共有する感染症の専門家である、日本大学生物資源学部動物資源学科特任教授の村田浩一氏をお招きし、「ワンヘルス」が誕生した背景や歴史といった基本的な情報から、今後、新たな野生動物由来感染症のパンデミックを回避するために、国際社会、そして日本はワンヘルスという概念をどう実現することができるのか、解説いただきました。また、WWFジャパンの浅川陽子からは、野生生物取引という視点からの感染症リスクについてお話ししました。

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第2回 国際医療の第一人者が語る パンデミックと自然破壊~動物由来感染症のリスクと国際機関が注目する「ワンヘルス」という概念(2020年11月12日)

新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の世界的大流行(パンデミック)により、社会や経済の姿は一変しました。
ジョンズ・ホプキンス大学の発表*によると、2020年11月17日現在、世界の感染者は5500万人 を超え、収束する兆しは一向に見えません。
*https://coronavirus.jhu.edu/map.html

COVID-19は動物から人に感染する動物由来感染症と考えられていますが、この動物由来感染症はWHOが確認しているだけで200種以上あり、すべての感染症の約半数を占めるほどです。また、過去50年程の間に新たなウィルス(新興感染症)の発生頻度が高まっており、毎年3~4種類の新たな感染症が発生、そのうち60~70%が動物由来であるとも言われ、今後もCOVID-19のようなパンデミックが起こる懸念がもたれます。

新興感染症発生の背景には、大規模な森林の破壊・分断をともなう土地利用の転換や農畜産業の拡大、さらに野生生物の取引・消費といった問題があるとされ、パンデミックは人と自然の共生関係が崩れたことによる結果と指摘されています。国連環境計画(UNEP)や生物多様性条約(CBD)といった国際機関・条約も、こうした自然破壊と動物由来感染症の問題に注目し、あらゆる政策決定に「人」「動物」「環境」の健康をひとつとして捉える、「One Health」の導入の必要性を訴えています。

そこで、第2回では、アフリカの医療、公衆衛生に長年携われてきた、東京女子医科大学の医学部医学科国際環境・熱帯医学の杉下智彦教授をお迎えし、ポストwithコロナ時代の人と自然が調和した社会の再構築が必要性についてお話しいただきました。また、森林破壊と動物由来感染症リスクの関連性と、ワンヘルスについて、WWFジャパンから岩渕翼、浅川陽子がそれぞれ解説しました。

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第1回 生物多様性の回復と国際的な動き~生物多様性条約と2030年目標、生物多様性と金融の国際動向(2020年10月28日)

世界の生物多様性を守り、持続可能な範囲で利用する方法を話し合う生物多様性条約締約国会議。名古屋市で2010年に開催された第10回会合で、2020年までの達成をめざす「愛知ターゲット」が設定されました。今年9月、国連「地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)」の報告によると、残念なことに、20の目標のうちすべての項目を達成できたものはゼロでした。

これを受けて、9月末の国連生物多様性サミットでは、各国の首脳が地球環境の危機と緊急行動を訴えました。いま国際社会では、コロナ対策とともに、世界共通の課題である気候変動対策や生物多様性の回復をめざした動きが急速に高まりつつあります。

しかし、日本では、ウィズコロナの経済復興策の議論の中で、気候変動や生物多様性の危機的状況について語られることはほとんどありません。健全な社会や経済のために環境リスクを回避しようとする国際社会の動きに取り残されつつあります。海外の自然資源に大きく依存している日本は、国内の政策やビジネスにおいて生物多様性の保全を重視し、地球環境の保全を進める責任があります。

そこで第1回目では、生物多様性の回復をめぐる世界の潮流を紹介するため、国際自然保護連合(IUCN)日本委員会事務局長/(公財)日本自然保護協会広報会員連携部長の道家哲平氏を講師にお招きし、2021年に開催される生物多様性条約第15回締約国会議の最大のテーマである2030年目標の設定と実行策についてお話いただきました。また、その背景にある地球の緊急事態や、金融における生物多様性の最新動向についてWWFジャパン清野比咲子と松田英美子がそれぞれ解説しました。

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