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国連生物多様性サミットが閉幕 自然回復への緊急行動を

この記事のポイント
2020年9月、国連の「地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)」が発表されました。このGBO5では世界の生物多様性を守る2020年までの20の項目「愛知目標」が、いずれも達成しなかったことが報告されました。その中で開催された国連生物多様性サミットでは、各国首脳が「人々の健康と生活に欠かせない自然の回復が急務であること」を宣言。新型コロナウイルス感染症からの復興を目指す施策の中で、この発言をいかに実行し、各国が協力するかが、今、深刻な危機にさらされている世界の環境を守る上での重要なカギとなります。

世界の共通認識となった生物多様性回復と「ワンヘルス」

2020年9月15日から開催された第75回国連総会の最終日、9月30日には生物多様性サミットが開催されました。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受け、オンラインでの開催となった今回のサミットのテーマは「持続可能な開発のための生物多様性に関する緊急行動」です。

ここでは約100ヵ国の各国首脳たちが、ビデオによるメッセージで、世界の生物多様性が壊滅的な喪失の現状と、それが人間の健康と生活に及ぼすリスクを訴えました。

ここで特に強調されたのは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを引き起こした原因が、森林などの自然破壊や劣化と結びついていることです。

また、各国首脳たちは、この国連生物多様性サミットの開催に先立ち発表された、「地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)」で、2020年までの世界の生物多様性保全のための20の目標、「愛知目標」の多くが、達成できていない現状が指摘された点をふまえ、国際社会が過去10年間に、十分な行動ができていなかったことを振り返りました。

そして、自然を回復への道筋をつけることが急務であると指摘。

そのための行動を、多くの国が約束すると表明しました。

日本の小泉大臣も、各国首脳に続いて行なったスピーチの中で、経済社会システムの再設計と分散型社会を創造することの必要性を強調。

多くの国々が発信した、これらの言葉を実現するためには、本気で社会を変革する行動と努力が必要であり、そのための具体的な目標と施策がカギとなります。

サミットでの小泉大臣ビデオメッセージ(出典:UN WebTV)

世界リーダーの「自然回復の誓約」を支持

こうした生物多様性の保全を強く求める、国際社会の結束に向けた動きは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、急速に強まっています。

感染症の発生・拡大が、生物多様性の消失に伴い生じていること、そして、同じく深刻な脅威を社会や経済にもたらしている、気候変動(地球温暖化)の影響が、国際的にも最も重要な課題と目されるようになっているためです。

そうした動きの一つとして、生物多様性サミットに先立つ2020年9月28日に開催された、ネイチャー・フォー・ライフ・ハブの「自然と人々のためのリーダーズ・イベント」では、世界の約70ヵ国・地域の代表たちが「自然回復の誓約」を発表しました。

イベントは、英国、欧州委員会など計10ヵ国・地域が共同ホストとして呼びかけたもので、WWFもUNEP(国連環境計画)、UNDP(国連開発計画)とともに、パートナーとしてこれを支援。

この中で各国首脳たちは、自国の自然環境の特徴と、その危機的状況を述べ、2030年までに自然回復の道筋をつけると力強く約束しました。

UNGA: World leaders endorse the Leaders' Pledge for Nature ahead of the UN Summit on Biodiversity

こうしたメッセージを発信した人物たちの中には、欧州委員会のライエン委員長、イギリスのジョンソン首相、ケニアのケニアッタ大統領、パキスタンのカーン首相らも含まれています。
日本は、参加をしておらず、G7 (先進7ヵ国)の中で参加していないのは日本と米国だけとなっています。

現在の参加国はこちら

「自然回復の誓約:Leaders Pledge for Nature」の主な内容は以下のとおりです。(全文和訳はこちら:PDF形式)



  • 国連生物多様性条約第15回締約国会議で、野心的かつ変革的なポスト2020生物多様性世界枠組みを進展させること。

  • 健康と経済の危機対応がグリーンかつ公正で、回復と持続可能な社会の実現に寄与すること。新型コロナ感染症復興策と資金投資などで生物多様性・気候・環境全般の取り組みを中核におくこと。

  • 地球の限界を超えることなく人々のニーズを満たす持続可能な生産・消費パターンと持続可能な食糧システムに移行すること。

  • 違法野生生物取引や違法伐採材取引など、環境の劣化、生物多様性の損失、気候変動に重大な影響を及ぼし、安全保障、人権、公衆衛生、社会経済開発を脅かす環境犯罪を撲滅すること。

  • 健康と環境の持続可能性に関し、あらゆるレベルのすべての関連政策及び意思決定プロセスに「ワンヘルス」アプローチを取り入れること。

  • 経済・金融セクターの変革と改革、人々の幸福、並びに地球環境保護の実現を図る資金的・非資金的実施手段を強化すること。

2020年9月に、地球環境の危機を示した報告書『生きている地球レポート』を発表し、その中で生物多様性が過去50年間で68%減少した現状に警鐘を鳴らしているWWFもこの世界リーダーの「自然回復の誓約」を支持。

さらに2021年に開催予定の生多様性条約第15回締約国会議(CBD-COP15)においても、各国の政府代表に対し、野心的で計測可能な「2030年目標」の採択を求めています。

この「2030年目標」は、具体的には、2030年までに自然回復の道筋をつけることをめざすもので、主には次の3つの行動を指すものです。

  1. 生息地の破壊を止めること
  2. 種の絶滅を食い止めること
  3. 生産と消費の負荷を半減させること

世界の生物多様性を守ること、地球環境や野生生物の健康を守ることは、人類自身の未来と健康を守ることでもあります。

WWFでは、より多くの国に「自然回復の誓約」への参加を呼びかけるとともに、生物多様性の保全に向けた各国の合意と緊急行動を求めてゆきます。

(出典:UNDP webpage)

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