2018年を振り返って


WWFジャパンでは、多くのサポーターの皆さまのご支援のもと、2018年もさまざまな活動に取り組んでまいりました。

実際にご報告、発信できた情報は、その一部に限られましたが、それでも年間で247件の活動記事やスタッフブログなどを発信させていただきました。

この1年間の活動を振り返る中で、特に大きな動きがあったものを、ご案内いたします。

地球温暖化

© Richard Barrett / WWF-UK

地球温暖化については2018年12月、年末の国連気候変動会議「COP24」で、温暖化防止に向けた世界の新しい約束「パリ協定」のルールが決まりました。

©︎WWFジャパン

先進国と途上国の対立が長年、国連交渉の場で続けてきた対立を乗り越え、このパリ協定のルールの合意を実現した裏側には、温暖化が世界各地のさまざまな環境、社会、経済に、すでに大きな影響を及ぼし始めている現状があります。
WWFが3月に発表した、温暖化がもたらす生物種への深刻な危機についての報告書は、その一端を示すものでした。

WWFが3月に発表した、温暖化がもたらす生物種への深刻な危機についての報告書

こうした問題に対し今、国際社会では、各国政府だけでなく、企業や地方自治体、NGO(非政府組織)などの「非国家アクター」たちが、パリ協定の実現を求め、自主的な行動をとり始めています。日本でも初となる非国家アクターのネットワーク「気候変動イニシアティブ(JCI)」が発足。2020年のパリ協定のスタートに向け、アクションを開始しました。

野生生物保護

©Martin Harvey

WWFジャパンが今、特に力を入れている、野生生物の違法取引については、年初に大きなニュースが飛び込んできました。世界最大の象牙の消費国である中国が、2017年いっぱいをもって、象牙の国内市場の閉鎖を宣言したのです。
さらに香港やイギリスなども国内取引の停止を決定。この背景には現在、年間2万頭が密猟されているというアフリカゾウの危機と、こうした違法行為が紛争など他の深刻な社会問題の資金源となっている問題がありました。
この世界的な傾向に向かう中、WWFは今も象牙の国内取引を続けている日本の状況を調査。その結果、国内で販売されている象牙が、違法に中国などに持ち出されている現状を明らかにしました。

©TRAFFIC

また、ペットとしてもてはやされているカワウソ類についても、取引の状況を調査し、日本の消費が世界の野生生物取引や、野生生物の生息に影響を及ぼしている可能性を指摘。政府に対し、法制度などの改善を強く働きかけました。

©IUCN OSG

森林保全

© naturepl.com Anup Shah WWF

森林の保全については、従来より日本での紙や木材、パーム油の消費が深くかかわってきたインドネシアの森林保全に加え、インドシナ半島の森の保全活動が、本格的に始まった一年となりました。
こちらの現場で問題になっているのは、森を切り拓いて造られている、天然ゴムの農園(プランテーション)です。その主な用途は自動車のタイヤ。この生産を、森林や地域社会に配慮した持続可能なものとするために、WWFでは2018年、天然ゴムをあつかう企業を集め、この問題に取り組むための国際的なプラットフォームを設立しました。

©WWF Japan

ゴムの木の表面を専用のナイフで削ると出てくる白い樹液(ラテックス)を集めて、凝固、加工したものが天然ゴム。

また、現地のインドシナの森で行なった調査では、あらたに150種を超える新種が発見されたほか、絶滅寸前の危機にあるトラの亜種インドシナトラの調査・保護活動もスタート。
プラットフォームでの取り組みと、現場へ支援を通じた森林保全の取り組みは、2019年以降もWWFジャパンにとって大きなテーマの一つです。

© Kabir Backie / WWF-Greater Mekong

インドシナトラ

海洋保全

© Brian J. Skerry / National Geographic Stock / WWF

海洋の保全については、沿岸域の保全や漁業にかかわる話題の多い一年でした。
大きな朗報は、WWFジャパンが東日本大震災からの復興支援を通じて、持続可能な養殖業の国際認証であるASCの取得を後押ししてきた宮城県南三陸町の志津川湾が、湿地の保全条約である「ラムサール条約」に登録され、世界的な保全湿地として認められたこと。海の恵みである養殖を行ないながら、海を守る取り組みを目指してきた地域の人たちの頑張りが、このような形で認められたことは、大きな進展であり希望となりました。

志津川湾とカキの養殖筏(いかだ)

一方、世界の海の環境に目を向けると、近年深刻化が指摘されている海洋プラスチックごみや、マグロなどの漁業資源の管理が抱える課題が、国際的な問題として大きく取り上げられた一年となりました。そうした中、日本では国内漁業の在り方を定めた漁業法が実に70年ぶりに改正され、大きな話題になりました。国際化が進む漁業の未来をどう考え、描いていくのか。それは海洋環境の保全にも大きくかかわる課題です。

© Greg Armfield

持続可能な社会を創る

© Shutterstock / A3pfamily / WWF

一年を振り返った時、ニュースになった話題、そうはならなかったが重要であった事件など、いくつもの多様な出来事が思い出されます。
そして、WWFの取り組みに限らず、環境保全について前進と言える出来事がいくつもあった一方で、地球環境の現状については、厳しい現状も明らかになりました。WWFは2018年に最新版の「生きている地球レポート」を発表。この中で、1970年時点と比べ、世界の自然の豊かさが、60%も損なわれてしまっていることを示しました。

2018年10月30日に公表された『生きている地球レポート2018』は、1970年以降、脊椎動物の個体群のサイズが60%も減少するなどの生物多様性の危機を伝えています。

2018年は、環境や野生生物をめぐって、さまざまな出来事のあった1年間でしたが、そこでの取り組みはいずれも、2019年につなげ、活かしていくべきものです。人の暮らしが地球の環境を大きく損なうことなく、多様な生物と共存できるように。損なわれてきた自然の豊かさを取り戻すための取り組みを、これからも続けてゆかねばなりません。
2019年が、また新しい前進につながる一年になるように、活動に邁進してゆきたいと思います。

まだまだ読み足りない方は、最新の活動の記事もぜひご覧になってみてください。

皆さま、どうぞよいお年を!
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

森、海、気候、野生生物、さまざまな活動をサポートしています。

虫を追いかけ40年。鳥を追いかけ30年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの20年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと思っています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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