気候変動の影響により35の地域で生物種の50%が絶滅のおそれ


十分な対策が講じられないまま温暖化が進行し、地球の平均気温が4.5℃上昇すると、21世紀の末までに、WWFの定める35の「優先保全地域」で、野生動植物の約50%が絶滅するおそれがあることが分かりました。これは、イースト・アングリア大学(イギリス)に委託したWWFの調査研究から明らかになったものです。この研究では、気温の上昇を「パリ協定」が目指す「2℃未満」に抑えたとしても、25%の動植物が絶滅する可能性があるとしており、野生生物保護の観点からも、温室効果ガスの大幅な削減が必要であることを指摘しています。

35の優先保全地域で気温上昇による被害のおそれ

2018年3月14日、WWFは、イギリスのイースト・アングリア大学の気候変動の研究所(the Tyndall Centre for Climate Change)に委託して行なった、地球温暖化による生物種への影響調査の結果を発表しました。

同日、学術誌"Climatic Change"に掲載されたその内容によると、アマゾンやガラパゴス、マダガスカルなど、貴重な生態系が残る優先的に保全すべき場所としてWWFが選定した35の地域で、約50%の野生生物が、温暖化の進行により絶滅の危機に追いやられる可能性が明らかになりました。

氷上でアザラシなどの獲物を捕まえるホッキョクグマには、氷がなくなることは大きな打撃となる(カナダ)

この研究では、効果的な温暖化対策が行なわれず、地球の平均気温が4.5℃上昇したケースを分析したもので、調査対象となった約8万種の生物のうちおよそ半分が、絶滅する可能性があると指摘。

また、平均気温の上昇を、2℃未満に抑えたとしても、対象地域では、野生動植物の25%が絶滅するおそれがあると分析しています。

WWFが選んだ貴重な生態系が残る35の優先保全地域

平均気温の上昇を2℃未満(できれば1.5未満)に抑えることは、2015年12月の国連気候変動会議(COP21)で採択された「パリ協定」が掲げる、2020年以降の温暖化防止のための世界目標。

しかし、これが仮に達成されたとしても、自然界は大きな打撃を受ける可能性があるということです。

インドとバングラデシュの沿岸部にある、世界最大級のトラの生息地スンダーバンズでは、温暖化による海面上昇でトラの生息地の96%水没するおそれがある

野生生物を追いつめる複合的な脅威

今回の調査研究ではまた、温度上昇にともなって野生生物が生息地を移動できる場合と、そうでない場合についても、予想を立てています。

気温上昇により、生物が移動を余儀なくされた場合、移動可能な経路や環境が存在すると仮定した場合、4.5℃の気温上昇では、地域内で絶滅するおそれのある種の比率は、50%から40%へ低下。2℃の上昇の場合も同様に、25%から20%へ低下すると予測されました。

アフリカ南部のミオンボ。哺乳類の80%、両生類の90%、鳥類の86%が絶滅するという、極めて大きな被害が予測されている

しかし、こうした野生生物の生息地は、温暖化以外の理由、たとえば森林伐採や農業開発、道路網の整備など、さまざまな自然破壊の要因により減少と分断化が進んでいます。

鳥類のように移動が比較的容易な生物については、気温上昇により一部数が増える可能性があるとされる一方、植物や両生類、爬虫類など、そもそも移動能力が無いか、限りなく低い生物については、環境の変化に対応ができないため、絶滅を免れません。

また研究では、気温上昇のレベルに応じ、野生生物の生息地がどれくらい維持されるかも予測。その結果、4.5℃上昇のケースでは18%まで下がると予測された維持率が、2℃上昇の場合56%にまで上がる結果も示されました。

オーストラリア南西部に生息するイワワラビー。この地域では両生類の89%が絶滅するおそれがある

こうした結果は、温暖化を極力抑えると同時に、本来野生生物が生息する自然の景観自体を保全、維持する必要があることを、如実に物語っています。

各国政府は現在、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の排出削減目標を掲げていますが、現状の目標を総合しても、パリ協定の目標にすら届きません。

WWFは、気温上昇による影響の大きさを、改めて示すものとなった今回の調査結果を受け、国際社会に対し、さらなる温暖化対策の推進と、自然環境の保全に向けた取り組みを求めてゆきます。

南米のアマゾンでは69%の植物種が絶滅する可能性があると指摘された

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