© J.Mima / WWF

「七夕」の立役者!その鳥の名は?


WWFがさまざまな自然環境や野生動物の保全活動を展開している、海外のフィールドを訪れると、「知っている顔」に出会うことがあります。

日本でも見ることのできる、野鳥たちです。

緯度も景観も異なる地域ですから、基本的には稀なこと。でもその分、目にした時の喜びは、妙に大きかったりします。

時には、驚くような場所でそんな鳥たちに出会うこともありました。

一番の思い出として記憶に残っているのは、カササギ。

日本では九州北部を中心に生息しているカラスの仲間で、白と黒のツートンカラーに、一部光沢のある羽を持つ、美しい鳥です。

このカササギに、ユキヒョウ保護活動の現場で、出会ったことがありました。

場所はヒマラヤ山脈西部、標高4,000mの高地、少し歩けば息が切れるような酸素の薄い場所です。

カササギと出会った場所。5月、真ん中やや下の緑地と建物の周りで、数羽の群が見られました。冬は厳しい場所ですから、寒くなると標高の低い場所に移動するのかもしれません。
© J.Mima / WWF

カササギと出会った場所。5月、真ん中やや下の緑地と建物の周りで、数羽の群が見られました。冬は厳しい場所ですから、寒くなると標高の低い場所に移動するのかもしれません。

現場は、ユキヒョウなどの肉食獣による家畜被害が起きている地域で、数世帯が集まった小さな集落。

こんなところでまさか「知った顔」に出会えるとは、思いもよりませんでした。

西ヒマラヤのカササギ。近くでは、ユキヒョウの獲物となる草食獣のウリアル(右)の姿も見られました。カササギはユーラシア大陸に広く生息するカラス科の鳥で、日本には安土桃山時代に持ち込まれたといわれています。
© J.Mima / WWF

西ヒマラヤのカササギ。近くでは、ユキヒョウの獲物となる草食獣のウリアル(右)の姿も見られました。カササギはユーラシア大陸に広く生息するカラス科の鳥で、日本には安土桃山時代に持ち込まれたといわれています。

ちなみに、このカササギは、「七夕」の伝説にも登場します。

一説によれば、その役どころは、毎年この日になると、たくさんのカササギが翼を重ねて、天の川に「橋」をかけ、織姫と彦星の逢瀬を扶ける、という粋なもの。

「かささぎの渡せる橋」というのは、百人一首の和歌にも登場するくらいですから、古くから知られていた伝承なのでしょう。

カラスの一族が誇る賢さや、ヒマラヤの高地でも生きられる適応力の高さ、そしてスマートな外見と、さまざまな魅力を持つこのカササギ。

今年の「七夕」の本日は、無事に織女と牽牛の星をお引き合わせできるのか? 東京ではやや空模様が心配ではありますが、お役目を全うできるよう、祈りたいと思います。

西ヒマラヤに生息するユキヒョウ。彼らもカササギを見たことがある!に違いない!?
© Muhammad Osama / WWF

西ヒマラヤに生息するユキヒョウ。彼らもカササギを見たことがある!に違いない!?

【寄付のお願い】スポンサーになろう|野生動物アドプト制度

この記事をシェアする

自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP