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奄美大島・徳之島の野生生物の持ち出し自粛を求めて:自治体が共同文書を公開

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2025年6月12日、鹿児島県の奄美大島と徳之島で、観光などで島を訪れる人に対する「おねがい」をまとめた共同文書が公開されました。これは、両島の自治体と環境省、自然保護にかかわる関係機関が発表したもので、島に生息する野生の生きものたちを、島から持ち出さないよう、訴えるものです。法的な拘束力はないものの、特に規制の網がかかっていない生きものの、捕獲や持ち出しの抑止につながる手立てとして期待されます。

世界遺産の島々の生きものたちに迫る危機

奄美大島と徳之島を含む、世界自然遺産に登録されている南西諸島および周辺地域では、世界でその地域にしか生息・生育していない固有の野生動植物が生息しています。

しかし、残念ながら、こうした動物・植物が、珍しさや美しいその姿を求める個人や業者により、ペット利用・観賞用、さらにそれらの販売を目的に、島外へ持ち出されるケースが後をたちません。

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固有種は、特定の地域、そこにしか生息していない種。大量な捕獲や、過剰な利用は、こうした種の保全を難しくしてしまいます。また、その種が生息する生態系全体へも影響を及ぼす可能性があります。

中には、捕獲や採集が法的に禁止されている種(しゅ)が、そうした行為の対象になる、違法行為が生じる例も発生しています。

さらに、こうした南西諸島の固有種や、絶滅のおそれのある動植物は、現状ではその多くが、法的に十分な保護下に置かれておらず、取引や持ち出しについても、規制されている種は、ごく一部に過ぎません。

野生生物の持ち出し自粛を求める共同文書

奄美大島・徳之島では特に近年、このように法的に捕獲や採集、持ち出しが規制されていない動植物が、島から外へと持ち出される懸念が高まり、大きな問題となってきました。

そうした中、現地では、各関係者が連携を取りながら、問題解決に向けた取り組みを進め、それが大量の野生動物持ち出し事件の摘発に繋がるなど、成果も見え始めていました。

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現地では、以前から注意喚起のための掲示や空港での呼びかけなどが実施されています。2025年5月には、関係者間の連携によって、天然記念物であるオカヤドカリ998匹の持ち出しが阻止されました。

今回発表された「島からのお願い」も、法的な拘束力はないものの、特に規制の網がかかっていない生きものの、捕獲や持ち出しの抑止につながる手立てとして期待されます。

またこれは、長年にわたり島の自然を守り続けてきた島民の皆さんの意思の表明であり、その自然は島を訪れるすべての人の協力なしには保たれないことを示しています。

島の自然を楽しむために訪れる一人ひとりが、そうした島の「お願い」を尊重することが求められます。

南西諸島の希少な野生生物と自然を守るため、WWFジャパンも引き続き、現地の取り組みを後押しする活動を続けていきます。

動植物持ち出しに関する共同文書:

  • 奄美大島自然保護協議会(奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町、龍郷町)
  • 徳之島地区自然保護協議会(徳之島町、天城町、伊仙町)
  • 鹿児島県
  • 環境省奄美群島国立公園管理事務所
  • 世界自然遺産推進共同体

奄美大島・徳之島の自然を守るため「島の生きもの」を島から持ち出さないでください(奄美市のウェブサイト:外部リンク)

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