開発事業者へ合同要請~石垣島・名蔵アンパル水系におけるゴルフリゾート計画
2026/04/20
- この記事のポイント
- 沖縄県石垣島のラムサール条約湿地「名蔵アンパル」水系のカンムリワシ生息地で建設計画が進められているゴルフリゾート事業に対しては、生物多様性への深刻な影響と手続き上の重大な問題が見受けられることから、WWFは、他の団体・学会と連携して、繰り返し見直しを求めてきました。2025年にこの事業に対する開発許可・農地転用許可・林地開発許可が出されたことを受け、この許可審査の内容の分析を行ない、新たな明らかになった問題点も踏まえて、2026年3月、開発事業者に対し、合同要請を実施しました。この要請の内容と提出に至る活動の経緯について報告します。
着工に必要な各許可の審査状況と新たな問題
沖縄県石垣島の名蔵アンパル水系におけるゴルフリゾート事業「石垣リゾート&コミュニティ計画」に関しては、2015年に計画が発表された直後から、地元住民や専門家から見直しを求める声が上がり、WWFジャパンも、アンパルの自然を守る会をはじめとする石垣市民の団体、日本野鳥の会などの保全団体、日本魚類学会や軟体動物多様性学会などの学会と連携して、世界的な価値を有する自然環境への配慮を求めてきました。
【関連リンク】各分野の専門家から指摘されたこの計画の問題点についてはこちら
(生物多様性・環境アセスの観点から)
(開発事業の「経済効果」の観点から)
2023年には、この事業の着工に必要な許可(開発許可、農地転用許可、林地開発許可)の権限を有する沖縄県に対し、県条例に基づく環境影響評価手続きで事業者が未対応のままとなっていた重要な事項(大量の地下水汲み上げの影響、農薬を含む排水や土砂流出による水質・海洋汚染、カンムリワシの生息調査と配慮策など)について、各許可の審査において事業者に実施を求めることを要請しました。
【関連リンク】「石垣リゾート&コミュニティ計画」に係る知事許可事項に対する陳情
その後、約2年間の審査を経て、最終的に2025年5月に沖縄県から着工に必要な許可が出されました。WWFと連名団体は、これを受けて、この許可審査の状況や事業者が約束した調査や対策の内容について確認するため、関連する公文書の開示請求を行ない、その内容を分析しました。
その結果、沖縄県の許可審査においては、WWFなどが要請していた地下水汲み上げの影響や農薬を含む排水による水質汚染などの問題に関して、事業者に対し、一定の調査や対策が求められた経緯が確認されました。
最終的に許可を得るために事業者が義務付けられた継続調査の内容も明らかになった一方で、地下水モニタリング調査の誤りや水の調達計画の非現実性、カンムリワシ生息地への具体的な対策の不在など、残された深刻な問題も明らかになりました。
加えて、WWFなどが今まで指摘してきた、大量の地下水汲み上げによる周辺河川の水位低下や、農薬を含む排水・土砂流出による水質汚染といった懸念が現実のものであることも確認されました。
また、イシガキパイヌキバラヨシノボリなどの希少魚類が生息する河川で環境影響評価が未了の新たな道路工事が計画されていたり、周辺農家による水の利用について恣意的な調査が行なわれた結果「影響なし」と判断されたりといった、重大な手続き上の問題も明らかになりました。

石垣島の固有亜種イシガキパイヌキバラヨシノボリ。絶滅危惧IB類(環境省・沖縄県)、沖縄県希少野生動植物保護条例に基づく指定希少野生動植物種。ゴルフリゾート開発予定地内の小河川ウガドゥカーラは、現在確認されている唯一の繁殖地となっている。
事業者(株)ユニマットプレシャス宛て合同要請の内容
このように自然環境保全や周辺地域への配慮の点で、事業者による調査や対策が極めて不十分なまま、現地では着工に向けた準備が進められています。また、計画に対する根強い反対運動に加えて、事業者と石垣市民、また予定地周辺の土地所有者との間では、紛争も発生しています。
こうした事態を受け、今まで明らかになった事実関係を踏まえて、2026年3月、事業者に対し、WWFと連名団体は合同で要請書を提出しました。
「石垣リゾート&コミュニティ計画」に関する開発事業者(株)ユニマットプレシャスに対する要請
事業者に要請した内容は、次の項目です:
- カンムリワシの生息地保全に関して
- 本件事業の給水計画、特に大量の地下水汲み上げの影響に関して
- 本件事業の排水計画、特に名蔵アンパルへ注ぐ河川と名蔵湾への排水に関して
- 周辺地域の住民・農業従事者への影響と貴社の説明責任に関して
- 景観の保全に関して
- 光害に関して
- 文化財の保存に関して
- 土地境界の紛争と必要な緑地帯が確保されていないこと
- 事業用地選定の理由に関して
- 持続可能な観光の観点から

国の特別天然記念物、種の保存法の国内希少野生動植物種カンムリワシ。環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠA類(CR)。石垣島の個体数は約110(2012年3月環境省調査)、沖縄県条例に基づいて事業者が実施した環境影響評価調査では、開発予定地の一部で生息調査が実施され(予定地全体での調査は未だ実施されていない)、13個体の生息が報告されている。
この開発計画の問題点は、生物多様性・自然環境保全の観点にとどまらず、周辺住民の暮らしや農業・水産業・観光業への影響、景観・文化財の保存など、多岐にわたります。
ラムサール条約湿地を含む国際的に貴重な石垣島の自然環境、鳥類・魚類・貝類・甲殻類など多種多様な希少野生生物の重要な生息地、農業・水産業・観光業の重要拠点である地域の資源を著しく損なう点で、現行の開発計画は極めて問題のある内容となっています。
事業者がこの計画をこのまま着工するならば、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」として国際的に合意されたネイチャーポジティブ(生物多様性の回復)に逆行し、SDGs(国連の持続可能な開発目標)達成は著しく阻害されることになります。
開発事業者である株式会社ユニマットプレシャスと、この開発計画を推進する石垣市には、市民や専門家からの要請に真摯に対応し、石垣島の貴重な自然と生物多様性に配慮して、計画を見直し、必要な保全策を講じることが求められます。
WWFは、今後も連名団体の皆さんと協力して、この開発計画の見直しを求めて活動を続けていきます。



