資料案内『流域のコレクティブアクション実践の手引き』
2026/08/01
- この記事のポイント
- 2026年8月1日水の日に、WWFジャパンは、『流域のコレクティブアクション実践の手引き』を公開。このレポートは、近年企業に取り組みが求められる「コレクティブアクション(協働活動)」の重要性と実践の方向性を示すものです。地域事例や既存の自然資本に係る国際的な枠組みなどの分析を通じ、コレクティブアクションの必要性、成立要件、課題を整理し、多様な主体の役割と連携の在り方を示すとともに、このような取り組みがネイチャー・ポジティブ実現の鍵となることを解説します。水のサステナビリティに取り組む企業担当者や流域にかかわる「あらゆる関係者」の皆さまにぜひご活用いただければ幸いです。
2026年8月1日「水の日」に、WWFジャパンは、『流域のコレクティブアクション実践の手引き』を公開しました。
本レポートでは、水を起点に流域単位で課題解決を目指し企業や自治体、金融機関、研究機関、地域コミュニティなど、あらゆる関係者が連携する「コレクティブアクション(協働活動)」の重要性と、その実践に向けた考え方や具体的な関連事例を紹介しています。

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・資料名:『流域のコレクティブアクション実践の手引き』
・発行元:WWFジャパン
・発行日:2026年8月
気候変動と生物多様性から考える「水」
洪水や渇水、水質汚染、淡水生態系の劣化といった水の課題は、気候変動や生物多様性の危機と密接に関係しています。
例えば、気候変動に伴う降雨パターンの変化は突発的な豪雨災害をもたらしています。一方で、森林や湿地といった自然環境は、雨水を貯留・浸透しゆっくりと流す、つまり激甚化する水害被害を軽減する役割も担っています。
このようなつながりを捉え、森林保全による水源涵養、湿地の再生を進め、自然に根ざした解決策(Nature-based Solutions:NbS)の実践を流域の中で実践することで、水循環の維持だけでなく、気候変動対策や生物多様性の回復にも貢献することが可能です。
分野横断的なテーマに対応するためには、工場や事業所での節水活動といった従来の「点」的な水管理では限界であり、その水がどこから来て、どのように流れ、気候や生物多様性など、他の要素とどう関連しているのか、より広い「面」的な視点で考えることが重要です。
つまり、上流~下流のつながりを捉えた「流域」の視点で現状や課題を見たとき、水、気候変動、生物多様性の相互関係をとらえ、対策を考えることが可能となります。

企業に求められる「ウォーター・スチュワードシップ」
近年、企業の水に関する取り組みとして国際的に推奨されているのが「ウォーター・スチュワードシップ(責任ある水利用管理)」です。
スチュワードシップには、「託されたものを慎重かつ責任をもって管理する」という意味が込められています。
つまり、ウォーター・スチュワードシップとは、水に関わるあらゆるステークホルダーが、自らの水利用が流域全体や他の利用者、生態系に与える影響を認識し、責任ある行動をとることで、社会(企業、政府、地域コミュニティなど)に託された水資源とそれを育む自然環境の持続可能な利用を実現しようとする考え方です。
企業が水を単なる投入資源としてではなく、社会全体で守り育てるべき共有資源として捉え直し、企業により従来から行われてきた水管理、つまり自社の取水量削減や排水管理といった自社拠点レベルの対応(=マネジメント)にとどまらず、水が循環する地域・流域という広がりの中で、水利用者として責任をもって社会的・環境的な価値を守ること(=スチュワードシップ)を目指す点が、ウォーター・スチュワードシップの特徴です。

WWFジャパン『流域のコレクティブアクション実践の手引き』より
コレクティブアクションの実践に向けて
水リスクは、自社の操業だけで完結するものではありません。同じ流域を共有する全ての利用者の行動が相互に影響し合う以上、個社が単独でいかに取水量を削減し排水を適正管理したとしても、流域全体の水課題を解消することには限界があります。
ウォーター・スチュワードシップにおいて、共通の水課題を抱える企業、地域コミュニティ、行政、金融機関、研究機関、NGOなど複数のステークホルダーが協働し、流域レベルでの課題解決に向けて連携して行動する「コレクティブアクション(協働活動)」が重視されるのは、こうした水が本来持つ共有資源としての性質に根ざしています。
本レポートでは、日本国内でコレクティブアクションに関連する取り組みとして、次の4つの事例を取り上げました。
- 熊本ウォーターポジティブアクション
- Mother Lake Goals(MLGs)
- 黒部川流域ネイチャーポジティブ・プロジェクト
- ネイチャーポジティブ那須野が原アライアンス
これら事例の情報収集も踏まえ、コレクティブアクションの実践に向け、取り組みの各段階で以下の要素が重要と考えました。

WWFジャパン『流域のコレクティブアクション実践の手引き』より
流域のコレクティブアクションがネイチャー・ポジティブ実現の鍵に
流域であらゆる関係者とともに共通課題に取り組むコレクティブアクションは、水のサステナビリティという枠組みを超え、「ネイチャー・ポジティブ」――自然の損失を止め、2030年までに生物多様性を回復軌道に乗せることを目指す国際的なイニシアティブの実現にも不可欠です。
ネイチャー・ポジティブは、2022年の昆明・モントリオール生物多様性枠組における目標として国際社会に共有されましたが、その達成には、各国政府だけでなく、企業や金融機関を含む社会の多様なステークホルダーの取り組みが重要であることが強調されています。
企業は今、自社のビジネス活動における自然への依存・影響に向き合った情報開示が求められているところですが、今後期待されるのは、自社ビジネスによる負の影響の軽減にとどまらず、地域社会へのポジティブな価値創出に応えていくビジネスの在り方の見直しです。
ネイチャー・ポジティブは短期間で目に見える成果を出すことが困難なため、営利的に明らかなベネフィットを見出すことは容易ではありません。
しかし、これまで有限な自然資本に依存してきたビジネスの背景を踏まえると、もはやネイチャー・ポジティブに取り組むことが企業の「責任」だと言えます。自然資本の利用者として責任をもって社会的・環境的な価値を守る、「スチュワードシップ」の実践が今、求められています。
WWFジャパンは、企業が水やそれを育む自然を回復させる、ネイチャー・ポジティブに向けた取り組みの効果的なアプローチとしてコレクティブアクションを実行し、流域・地域に貢献することを期待し、推奨していきます。

本レポートに関するご注意
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タイトル:『流域のコレクティブアクション実践の手引き』
発行元:公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
発行日:2026年8月
※引用の範囲を超えるご利用(転載を含む)は、たいへん恐縮ながら、基本的にお断りをしております。
※本制作物は、米国The Coca-Cola Foundation助成金プロジェクト「有明海流入河川流域を対象とした減災と淡水生態系保全の両立プロジェクト」の活動の一環として制作されました。
本レポートやウォーター・スチュワードシップ全般について、ご質問・ご関心をお持ちの方は、下記までお問い合わせください。
WWFジャパン淡水グループ:water@wwf.or.jp
関連資料:
WWFジャパン『流域治水でめざすネイチャーポジティブポイントブック』



