© Michel Gunther WWF

ビジネスと持続可能な「水」の利用について

この記事のポイント
農業、工業をはじめ、さまざまな産業に欠かせない水。現在、世界では健全な水の母体である水辺の自然環境(ウェットランド)と、水資源そのものが、深刻な破壊と枯渇の危機にさらされています。原因は農地の開拓やインフラ整備を伴う大規模な開発、そして過剰な水資源の利用と、汚水の排出です。産業の担い手である企業にとって、これはビジネスの将来を左右する大きな問題の一つといえるでしょう。WWFはビジネス界への働きかけを通じた、水環境の保全と、その持続可能な利用の実現を目指しています。

農業、工業、サービス産業を支える「水」の危機

現在、世界の農業は地上に存在する、淡水資源の70%を使用しているといわれています。
特に乾燥した地域などの農業で大規模に行なわれる灌漑工事などは、貴重な淡水の利用に拍車をかけ、周辺の砂漠化や河川、湖沼の涸渇を招く大きな要因となっています。

また、工業などを含め、さまざまな産業で利用するため拡大し続ける淡水資源の利用や、出された総量の80%が再び自然界に戻されている廃水などが、環境に深刻な影響を及ぼすことも懸念されます。

© Stephen Kelly WWF US
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このまま淡水の利用と涸渇が進めば、世界のあらゆる地域で、人の暮らしと、さまざまな産業にその影響が及ぶことになりかねません。

その意味で、企業にとって、水環境の保全と水資源の持続可能な利用の実現は、きわめて重要な経営上の課題といえるでしょう。
水の利用に関わる方針を持たず、その管理自体が不十分であれば、それは大きなリスクとなります。

ビジネスに関連した水をめぐる具体的なリスクの例

  • 洪水・水害
  • 水質の汚染
  • 健全な水を供給する生態系サービスと生物多様性の破壊
  • 水環境の保全にかかわる政策や法律への対応の不足
  • 投資家やメディアの評価

逆に、こうしたリスクを考慮し、早期に明確な社としての方針を立て、第三者の意見を入れた適切なアプローチを心掛けるならば、それはビジネスに持続可能な未来への道を開くことにつながります。

© Jason Houston WWF US

SDGsとWater Stewardshipの取り組み

安全な水の供給は、SDGs(持続可能な開発目標)の6番目の目標に掲げられていますが、実際には、この目標だけでなく、他の多くの目標を達成する上での重要な基盤にもなっています。

目標の達成には、企業と地域社会ほか、水の利用にかかわるさまざまな主体の協力が欠かせません。

そして、企業がビジネスを健全な形で継続しながら、地域社会の活性化を実現し、その母体となる流域の自然環境の保全する、この3つを同時に実現していく必要があります。

WWFはこうした視点を重視し、実際にそれに向けて行なわれる取り組みを支えるための「Water Stewardship」を、世界各地で推進することを目指しています。

これは、社会、文化の観点から公平で、環境保全の観点からは持続可能な、そして経済的な利益を伴う形で、水の利用を推進する試みです。その達成には、関与する多様な主体(ステークホルダー)との協働と、事業所レベルから流域レベルまでの視野を伴った行動が求められます。

Water Stewardshipにおいて求められる5つの観点

1)淡水の現状についての理解

人の暮らしに欠かせない水が、さまざまな環境問題によって不足していることを、企業のトップや経営層、また、そのサプライチェーンに関わる主要な主体が、正しく理解していること

2)淡水の利用に対する理解

企業が利用している水資源がどこからもたらされているのか。また、排水がどこへ廃棄されているのか。サプライチェーンを含めた観点で、確実に把握していること。また、淡水の供給源として、社会的、環境的にリスクのある地域を確認していること

3)淡水の適切な利用方針の策定

企業内での活動や、直接やりとりのある仕入先(サプライヤー)が、環境や社会に配慮した、適切な淡水の利用・調達を実現するための方針を定め、その下で事業を進める規則を設けること。また、可能な限り、間接的にかかわりのあるサプライヤーに対しても、同等の方針を採用するよう、働きかけること。

4)一企業の枠を超えた取り組み

過剰な水の利用によって水資源や水環境に悪影響が及んだ場合、一企業の企業活動の範囲を超えて広がるケースがあることを想定し、他の企業や自治体、NGO、地域社会と連携した「多様な主体を巻き込んだ取り組み」を実践すること。自社が及ぼし得る影響範囲を広く認識した淡水の利用方針を検討すること。

5)国内外の政策への影響力

企業の取り組みは、各国政府や国際法の枠組みにも影響を及ぼすことが可能。
持続可能な淡水の利用と水環境の利用に成功した、先進的な取り組みを行なっている企業は、成功を自社内にとどめず、法律や規制の適切に管理された形で、それを普及させる努力が求められる。またこれにより、業界をリードする企業と目されるのみならず、対策が遅れている他社にも適切な対応を迫ることが可能になる。
こうした取り組みを、法的な裏付けを得て行なうことで、より水環境への負荷の軽減を、安定的、永続的に実施することが可能になる。

WWFではすでに、水資源を利用するさまざまな企業と、水環境の保全に向けたパートナーシップを結び、協働を開始しています。
こうした取り組みを今後、さらに世界的に広げていくことが、WWFの目標です。

© Asim Hafeez WWF-UK

Water Risk Filterについて

WWFとドイツの金融機関DEGによって開発されたWater Risk Filterは、水環境にかかわるリスクを調査、評価、および対応できるようにする主要なオンラインツールです。多国籍企業や中小企業から金融機関まで、何十万ものユーザーを対象にリスクを検証する上で、主要かつ信頼できるデータ・ソースとして活用されています。 2018年には大幅にアップグレードされたWater Risk Filter 5.0がリリースされ、企業と投資家はこれを使った水に関連したリスクの調査、評価、評価、対応が可能となりました。

水環境および淡水生態系の保全について

地上のあらゆる生命の土台として、また人の暮らしを支える最も基本的な資源として、欠かすことのできない「水(淡水)」。今、大規模な開発や、水資源の乱用により、世界の各地で水の危機が指摘されています。WWFは健全な水の母体であり、多様な生物が息づく湿地の自然(ウェットランド)を、「流域」という観点で保全し、未来に向けた持続可能な水資源の利用を実現する取り組みを目指しています。

「流域」の保全について

湖や川、湿原や干潟といった湿地(ウェットランド)をはじめとする水環境を保全するためには、「流域(集水域)」という視点を持つことが必要です。限られたエリアで川や湖をばらばらに保全してみても、水の持つ「つながり」を保全しなければ、こうした環境を維持することはできないからです。これは、そこに生息する野生生物についても同様です。

水田・水路の生物多様性と農業の共生プロジェクト

日本を代表するウェットランドの一つ、水田。そこは、多くの固有な野生生物の宝庫です。しかし今、その自然は深刻な危機にさらされています。環境省の「レッドリスト」は、日本産の淡水魚の実に43%が絶滅の危機にあることを指摘。その多くを、水田などに生息する魚類が占めていることを明らかにしています。

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