© Andre Dib / WWF-Brazil

野生動物のペット利用の課題とWWFジャパンの取り組み

この記事のポイント
時に愛らしく、時に珍しい姿や行動で注目され、人気を集める「ペット」。近年は、イヌやネコ以外の「エキゾチックペット」や「エキゾチックアニマル」と呼ばれる動物をペットで飼う人も増えています。ペットの存在は個々人にとって、大切なものであると共に、それを扱うさまざまなビジネスは、巨大なペット産業として、経済活動の一部をなしています。しかし今、このペット、特に野生動物のペット飼育や、これに関連するビジネスが「環境問題」を引き起こしています。深刻化する野生動物のペット利用の問題について考えてみましょう。
目次

野生動物のペット利用とその現状

日本における野生動物のペット利用

日本では、ペットショップに行くと、さまざまな動物の姿を見ることができます。

個人の愛玩や観賞を目的としたペット飼育に限らず、アニマルカフェでのふれあいなど、動物の利用の在り方はさまざま。

また、イヌやネコのような家畜化された動物(※1)だけでなく、サル、フクロウや、トカゲ、カメ、カエルなどの野生動物も含まれています。

※1.長期間ヒト社会で暮らし、元の野生種とは形態的・生態的・遺伝的に異なっている動物をさす。イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ハムスター、金魚、カイコなどの動物

© John E. Newby / WWF

キツネの中で世界最小と言われるフェネック(Vulpes zerda)。日本から遠く離れた北アフリカを原産とする生きものもペットとして飼育や販売がされています。

© J.J. Huckin / WWF-US

近年、ペットショップが数多く出店するペットフェアでも販売が確認されているピグミーマーモセット(Cebuella pygmaea)

イヌやネコと異なりペットとして流通している野生動物は、自然界で捕獲された個体か、その個体を飼育下で繁殖させた個体です。

海外原産の野生動物であれば、それは当然、日本に輸入されたもの。

特に日本は、欧米に並ぶ、野生動物の輸入大国とされており、2021年のペット利用される野生動物の輸入頭数(※2)は、推定40万頭にもなります。

※2. 厚生労働省の輸入動物統計から家畜化された動物(フェレット、ハムスター、ラット、マウス、モルモット、ハト)を除く哺乳類、鳥類、及び財務省貿易統計から爬虫類、両生類の輸入量を概算。

増え続ける野生動物の取引と自然環境の危機

日本は多くの野生動物を海外から輸入しています。

たとえば、ワシントン条約(※3)の規制対象となる生きた動物の2020年の輸入頭数は次のようになっています。
※3. 野生動植物の国際取引が動物種を絶滅の危機にさらすことなく、持続可能な形で行なわれるように、加盟国が協力して「取引規制」を行なう枠組み。正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約、CITES)」

●両生類(カエルやイモリなど):約5,000頭
●爬虫類(カメ、トカゲ、ヘビなど):約62,000頭

これら動物の輸入量は、両生類、爬虫類ともに世界2番目の規模です。(2020 年の輸出国による報告。CITES WILDLIFE TRADEVIEW 2022年11月更新)

© Wild Wonders of Europe / Konrad Wothe / WWF

ファイアーサラマンダー(Salamandra salamandra)

© naturepl.com / Nick Garbutt / WWF

パンサーカメレオン(Furcifer pardalis)

また、野生動物の取引は、国際的に拡大しています。

2019年の研究によると、地球上に生息する陸生の脊椎動物のうち、国際取引されているのは、全体の約24%に相当する7,000種を上回ります。

さらに、生きた動植物に加え、木材、水産物、皮革などの野生生物産品の国際取引額は、過去14年間で5倍以上も増加し、2019年には1,070億USドル(約11兆円)に達した、と報告されています。

© Kari Schnellmann

シロフクロウ(Bubo scandiacus)は絶滅のおそれが高い種のひとつ。生態系の頂点に位置するフクロウの個体数減少は、その地域の生態系維持にも大きな影響を与えます。

このような取引や利用の拡大と、それによって生じる野生生物の減少は、生息地の自然環境やそこに広がる生態系を著しく損なう、大きな要因の一つとなっています。

野生生物の過剰な取引や利用は、地球温暖化(気候変動)や外来生物、森林破壊などと並ぶ、深刻な「環境問題」なのです。

ペット利用をめぐる「5つのリスク」

野生動物の取引や利用、特にペットとしての利用は、どのような環境的、社会的な問題を実際に引き起こしているのでしょうか。

指摘されている「5つのリスク」に目を向けてみます。

1.野生動物を絶滅に追い込むリスク
2.密猟・密輸を増加させるリスク
3.動物由来感染症(人獣共通感染症)に感染するリスク
4.動物福祉を維持できないリスク
5.外来生物を発生・拡散させるリスク

1.野生動物を絶滅に追い込むリスク

野生生物に関する知見を束ねる国際機関IUCN(国際自然保護連合)が公開している「レッドリスト」には、2022年6月現在、約1万6,700種もの野生動物が、「絶滅のおそれの高い種(=絶滅危機種:CR, EN, VU)」として掲載されています。

そのうちの11%で、「ペット・展示利用」が確認され、ペット市場で販売されている野生動物の中に、野生から捕獲された個体が含まれていると考えられます。

日本もまた、このような絶滅の危機が指摘される野生動物を輸入しています。

2017年2月に、WWFジャパンの野生生物取引調査部門TRAFFICが行なった、日本の爬虫類のペット市場調査によると、販売が確認された爬虫類606種のうち、全体の18%にあたる108種が、「レッドリスト」で絶滅危機種に選定されている種であったことが明らかになりました。

© WWF Lutz Obelgonner

コバルトツリーモニター(Varanus macraei)。 絶滅のおそれが高いと指摘されているが、野生で捕獲された個体が日本で販売されています。

【関連情報】TRAFFIC 日本における爬虫類ペット市場の現状

爬虫類は特に人気が高く、現在世界で知られている種の35%以上が、ペット取引の対象となっているほか、その対象種の90 %で、野生由来の個体が流通していることが分かっています。

©WWFジャパン

近年メディアでも注目を集めているスナネコ。

また、近年日本への輸入が増えているスナネコ(Felis margarita)も、その多くが野生から捕獲されています。

ワシントン条約のデータベースによれば、2019年及び2020年に併せて100頭を超える野生個体の輸入申請がなされました。


スナネコは現在のところ絶滅の懸念は低いとされていますが、野生の個体数は明らかになっておらず、生息域であるアフリカやアジアの砂漠、またその周辺では、道路の建設や油田開発の調査などが進んでおり、その影響が心配されています。また、観光客への販売を目的とした野生の個体の捕獲も、各地で続けられています。

日本の野生動物もペット利用されている

ペットとして販売される野生動物は、海外の動物だけではありません。
日本原産の野生動物も、ペットとして利用され、ペット利用が絶滅の危機を加速させています。
特に人気が高いのは、沖縄や奄美諸島などの南西諸島だけに分布している、固有の両生類と爬虫類です。
こうした日本の希少かつ固有の野生動物は、多くが「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(「種の保存法)」や「文化財保護法」、地域の保護条例で保護されているにもかかわらず、違法に捕獲され、海外に持ち出されるケースが後を絶ちません。
リュウキュウヤマガメ(Geoemyda japonica)やクロイワトカゲモドキ(Goniurosaurus kuroiwae)などは、海外のペット市場で販売されており、日本から違法に持ち出された可能性が指摘されています。

写真左:2018年には、日本人男性がリュウキュウヤマガメ60頭を手荷物に入れて香港に持ち出し、禁固1年の実刑判決を受けました。
写真右:クロイワトカゲモドキは、「種の保存法」で捕獲や販売が禁止されていますが、その保護対策を強化するため、2021年2月にワシントン条約の規制対象になりました。

【関連情報】ペット利用される南西諸島固有の両生・爬虫類 最新報告書発表

2.密猟・密輸を増加させるリスク

日本でペット利用されている野生動物の中には、生息国の法律や国際条約で保護され、捕獲や輸出が規制されている動物もいます。

しかし、こうした動物はその希少性から、高値で取引されるため、違法に捕獲し、取引を行なう「密猟」や「密輸」のターゲットになっています。

© Rob Webster / WWF

スローロリスは乱獲や密猟が続き、2007年に国際取引が禁止となりましたが、その後も密輸が止まず、日本向けの密輸として100頭以上が押収されました。

これまでにも、サルやキツネ、フクロウ、カメやカエルなど、多種多様な野生動物が日本に密猟、密輸されてきました。

日本の税関が、密輸の疑いがあるとして、2007年から2018年に押収したペット利用される野生動物は、78件、1,161頭にのぼります。

しかし、すべての密輸を水際で差し止めることは不可能なため、こうして発覚した事例は、密輸全体の一部にすぎないと考えられています。

日本の法律では、ペットショップなど動物を販売、展示する事業者に動物の入手の合法性の証明を求めていません。
そのため、水際をすり抜け、国内市場に流入した個体は、他の個体と紛れて、合法個体として取引されてしまうのです。

図1.密輸個体の合法市場混入時の流れ

【関連情報】TRAFFIC Crossing the Red Line:日本のエキゾチックペット取引

また、密輸で持ち込まれる際、動物は狭い場所に押し込められ、水や餌が十分に与えられないばかりでなく、声などを出さないよう睡眠薬などを投与して運ばれることがあります。

こうした酷い境遇の中で、日本に到着した時には死亡している例も少なくありません。

また、密猟、密輸する側の人間は、こうして個体が死亡しても利益が得られるよう、一度に数百頭もの個体を持ち込こもうとします。多くの個体が犠牲になることも少なくないのです。

実際に、違法取引は、合法取引の何倍もの収益を生むと言われています。

日本の税関で差し止められたペット利用される野生動物の市場推定価格は、1件あたり平均150万~350万円。
2014年から2018年までに、同じく日本の税関で差し止められた個体の合計市場推定価格は、5,400 万~1億2,500万円にのぼります。

こうした高値で行なわれる取引が、新たな密猟や密輸といった、違法行為を引き起こす、大きな原因になっているのです。

© WWF-France

違法取引が横行する象牙。一度の密輸で数トンの象牙が押収されることも少なくありません。

また国際的にも、この違法取引の問題は深刻化しており、世界全体の野生動物の密輸規模は、年間推定で910~2,580億ドル(2022年5月のレートで11兆円~33.4兆円)。年々拡大しています。

© WWF-Madagascar

密猟された後、押収されたホウシャガメ(Astrochelys radiata)。

密猟、密輸といった違法な野生生物取引は、悪質な環境破壊行為である「環境犯罪」のひとつとして位置付けられていますが、この環境犯罪は今や、薬物犯罪、偽造品犯罪、人身売買に次ぐ、第4の規模を持つまでになり、他の国際犯罪ともつながった形で繰り返されています。

日本でも、野生動物の密輸によって得られた収益が、犯罪組織の収入源になっている可能性が指摘されていますが、これは他の犯罪撲滅の観点からも、野生生物の取引や消費の在り方を、早急に見直す必要があることを物語っています。

さまざまな問題が、野生動物のペットを求める消費者のニーズと、その取引や展示等をビジネスとしている業界のニーズによって引き起こされていることを、忘れてはなりません。

人気者のカワウソをめぐる密輸問題

2016年頃より、日本でペット人気が高まったコツメカワウソ(Aonyx cinereus)は、生息国のひとつであるタイで、法律で保護され、捕獲や取引が禁止されていました。

しかし、ペット人気が過熱した結果として、密猟、密輸が横行。実際、日本に向けた密輸の摘発も明らかとなっています。

TRAFFICは2018年に発表した報告書の中で、2000年から2017年にかけて、日本が目的地の密輸未遂事件で、52頭のカワウソが保護・押収されたことを報告。

このうち39頭、すなわち75%は2016年以降に押収されており、日本のカワウソブームが違法取引増加の引き金になった可能性を指摘しました。

コツメカワウソ

【関連情報】TRAFFIC OTTER ALERT: 日本に向けたカワウソの違法取引と 高まる需要の緊急評価

3.動物由来感染症(人獣共通感染症)に感染するリスク

© Thomas Nicolon / WWF DRC

自然界に生息する野生動物は、人と長く暮らしてきた歴史を持つ家畜などと異なり、未知の病原体を保有しているケースがあります。

新型コロナウイルス感染症(COIVD-19)は、野生のコウモリが本来持っていた病原体が、人に伝播して引き起こされた感染症と考えられています。

野生動物の保有する病原体に関する研究は、現在のところ十分ではありませんが、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)によれば、哺乳類と鳥類が保有する未知のウイルスのうち、人間に感染する可能性があるウイルスは、80万種以上。

エボラウイルス病など、人に重篤な病気をもたらす病原体を保有している可能性が高い、サル類やコウモリ類は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)」で輸入が禁止されていますが、それでも、販売等を目的に国内に持ち込まれるケースは後を絶ちません。

実際、2007年~2018年の間に、サル類が185頭、コウモリ類が10頭、日本の空港で密輸の疑いで持ち込みが差し止められています。

© Michel Gunther / WWF

野生生物取引市場では、多様な種が密接して運搬、販売されているケースがあり、種から種へ感染症が伝播する危険性が高まります。

特に、密輸される動物の場合、検疫なども受けずに国内に持ち込まれることになるため、何らかの病原体を持っていたとしても、それを検知することが、きわめて困難になります。

また、日本の厚生労働省のガイドラインでは、サルやプレーリードッグ等の特定の野生動物種や爬虫類とのふれあい行為を推奨しないことも明記されています。(ふれあい動物施設等における衛生管理に関する ガイドライン厚生労働科学研究特別事業 , 2006)

野生動物との直接的な接触は、こうした感染症のリスクを伴うものなのです。

4.動物福祉を維持できないリスク

ペットの健康を考え、それを維持するために適した環境を整えることは飼い主の責任です。

「動物が精神的、肉体的に充分健康で、幸福であり、環境とも調和している」という動物福祉の実現のためには、5つの自由(※4)を果たすことが求められています。

※4.「5 つの自由」:
1 飢えと渇きからの自由
2 不快からの自由
3 痛み・傷害・病気からの自由
4 恐怖や抑圧からの自由
5 正常な行動を表現する自由
(参照:公益社団法人 日本動物福祉協会(2017).「動物福祉について」https://www.jaws.or.jp/welfare01/)


野生動物をペットとして飼うためには、その動物種の生態や習性を理解し、自然に近い飼育環境を整える必要があります。
しかし、それを一般家庭で準備、維持していくことは容易ではありません。

与える餌や温度、野生下での生息で必要とされるものと相応のスペースや設備など、用意が必要なものは種によってさまざま。

野生動物は、診療できる獣医師も限られており、病気などになった場合、治療にかかる費用もイヌやネコなどの動物に比べ高額になる可能性もあります。

また、野生動物は研究が進んでおらず、生態など分からないことが多いため、飼育に際して入手できる情報も限定的になりがち。
動物の生態や習性について飼育者の理解が乏しいまま、誤った飼育が行われていることがあります。

© Mikaail Kavanagh / WWF

例えば、夜行性のサルの一種であるスローロリス属(Nycticebus spp.)は、夜の暗闇でもよく見える集光性の高い目を持っていますが、昼行性の人間との生活を強いられることで、目への負担も心配されています。

また、この動物が見せるバンザイのポーズはSNSで「かわいい」とシェアされますが、これは危険を察知したときに見せる行動であることを専門家が指摘しています。

野生動物の飼育は、イヌやネコといった家畜化動物を飼育する場合と異なり、5つの自由を満たすことが極めて難しいのです。

野生動物に対する人間の不理解と勝手な都合が、飼われる動物に生きづらい環境を強いること、を忘れてはなりません。

【参考情報】京都市動物園と公益財団法人日本モンキーセンター
守ろう 地球の仲間たち -スローロリス(外部サイト)-

5.外来生物を発生・拡散させるリスク

ペット利用される野生動物は、合法、違法にかかわらず、本来その動物が住む生息地から、人間の手によって持ち出されたものです。

こうした野生動物が、飼育の不手際などで逃げたり、飼いきれなくなった飼い主により野外に遺棄されることで、「外来生物」になることがあります。

この、本来の生息地ではない自然環境に定着し、野生化した、外来の生物は、在来の野生動物を捕食したり、すみかを奪ったり、植生を食い荒らしたりするなどの環境問題を引き起こします。

© Harish Segar / WWF

2022年5月に外来生物法の改正案が可決され、販売や輸入が禁止される予定です。

特に、生物多様性を脅かすおそれの高いものを、侵略的外来種と言いますが、この侵略的外来種には、過去に日本へペットとして輸入された動物も含まれています。

ミシシッピアカミミガメ(通称ミドリガメ:Trachemys scripta)やワカケホンセイインコ(Psittacula manillensis)、そしてアライグマ(Procyon lotoro)などです。

© Frank PARHIZGAR / WWF-Canada

アライグマ

北米原産のアライグマはテレビ番組をきっかけに、人気となり大量に輸入されましたが、人慣れしないその飼いにくさから、野外に遺棄される例が多発したと考えられています。

これが原因で、現在、日本の各地で野生化した個体が確認されるようになり、タヌキやアナグマといった在来の野生動物と競合したり、野鳥やそのヒナ、卵などを捕食するといった問題の原因になっています。

また、農作物を荒らす害獣としての被害も深刻で、そのために捕獲されるアライグマも増加傾向にあります。

© Ola Jennersten

インドやスリランカが原産のワカケホンセイインコ。ペット利用のために1960年代に輸入されましたが、野外に逃げたり、遺棄されたことで野生化。今では都市部などに広く定着し、その姿が頻繁に目撃されています。

こうした侵略的外来種の中には、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」の「特定外来生物」に指定され、輸入のみならず、飼育や運搬が禁止され、防除が推進されている野生動物もいます。

安易なペットの購入や飼育、そして無責任な遺棄といった行動が、日本の生態系を壊す大きな原因になり得ることを、認識しておく必要があります。

野生動物のペット利用を見直す

© naturepl.com / Ross Hoddinott / WWF

ペット飼育は、人とは異なる生物への興味や自然への理解を深め、命の大切さを学ぶきっかけになる効果を持つと考えています。

しかし、野生動物をペットとして利用することには、多くの環境的、社会的リスクが伴います。

WWFジャパンは、こうした複数の側面から、野生生物のペット利用の根本的な見直しを社会全体で進めて行くべきと考えます。このためには、消費者、産業界の変容、そして法規制の強化が欠かせません。

WWFジャパンは野生動物のペット利用について、次の活動に力を入れています。

●消費者の野生動物のペット利用に関する意識の変容
野生動物のペット利用に関する問題を広く伝えながら、消費者のペットで飼いたい、という動機や、飼育の検討を促す要因などを分析。消費者の心理に効果的に作用するコミュニケーションを行い、野生動物のペット利用の見直しを呼びかけます。また、かわいさばかりに注目し、いたずらにペット需要を喚起するメディアに対しては、問題の指摘と、発信の改善を求めます。

●ペット産業への働きかけ
ペットの販売や展示など、野生動物を商業的に直接取り扱う企業に対し、持続可能な「責任ある調達」と、環境的、社会的責任を伴った飼育管理、消費者への適切な情報発信を求めていきます。
また間接的に関わる企業についても、野生動物のペット利用にかかわる事業の見直しなどを求めていきます。

●エキゾチックペットガイドの作成
イヌ・ネコ以外のペット利用される動物を対象に、飼育や取り扱いにどのようなリスクが伴うのか、どのような点に留意すべきかといった情報を動物ごとにとりまとめ、ペットを飼育したいと考える個人消費者や、ペット産業に属する企業に対し提供する、ウェブサイト運営を行ないます。



●法規制の強化
野生動物をペット利用することによって生じるリスクを抑えるためには、現行の法律や規制に見られる不備を改正し、法制度を強化していく必要があります。そのため、国会議員や関係省庁に対し、野生動物のペット利用に関する情報を提供し、問題への認知を高めます。密猟や密輸由来のペットを排除する仕組みの導入や、飼育にリスクが伴う野生動物種の飼育規制の厳格化などを求めていきます。

WWFジャパンの発信情報

「飼育員さんだけが知っているあのペットのウラのカオ」特設Webサイト
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【詳しく知ろう!】 ペット利用される野生動物を守る その仕組みと課題

野生動物を守る国際的な仕組み「ワシントン条約」

野生動植物の国際取引が動物種を絶滅の危機にさらすことなく、持続可能な形で行なわれるように、加盟国が協力して「取引規制」を行なう枠組みとして「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約、CITES)」があります。

ワシントン条約は、取引規制の対象とする種を「附属書」と呼ばれるリストに掲載し、輸出入を管理しています。

現在ワシントン条約で国際取引を規制している種は、約3万8,700 種。

その中にはペット利用される種も多数含まれています。

▼ワシントン条約附属書の規制内容とペット利用される対象種の例

© Ola Jennersten / WWF-Swede

ペットショップやアニマルカフェでも人気があるコキンメフクロウ(Athene brama)。

© naturepl.com / Edwin Giesbers / WWF

中南米を原産とするアカメアマガエル(Agalychnis callidryas)。

この附属書は、2、3年に1度開催される、条約の締約国会議(CoP)で協議され、掲載種の追加や削除、掲載される附属書の変更などが決められます。

全ての締約国がこの規制の仕組みに則った国際取引を行なうことで、特に絶滅危機の高い野生動植物を過剰利用から守ることができる仕組みです。

さらに、ワシントン条約は「違法取引の防止」という点でも大きな役割を果たしています。

通常、野生動物種は、生息国で法的な保護の対象に指定されていても、ひとたび国外に持ち出された場合、生息国側から取り締まりを求めることが困難です。

しかし、ワシントン条約の取引規制対象種は、持ち込まれた国の税関、つまり「水際」で発見できれば、条約のルールのもと、差し止めを求めることができ、密輸を阻止することが可能となります。

国際条約が機能することで、各国が協力し、こうした野生動植物の違法取引を抑えることができるのです。

© WWF-Myanmar

▼ワシントン条約関連事例:コツメカワウソ
東南アジアに生息するコツメカワウソは、生息地の劣化に加え、ペットなどを目的とした過剰な利用と違法取引により、過去30年間でその個体数が30%以上も減少していました。
これを受け、2019年8月に行なわれたワシントン条約の第18回締約国会議で、インドやネパールなど複数の締約国が、コツメカワウソを従来の附属書Ⅱから附属書Ⅰに「格上げ」するよう提案。
これが可決され、2019年11月以降、商業目的での輸出入が禁止されることになりました。

© Martin Harvey / WWF

オーストラリアに生息する爬虫類の一種マツカサトカゲ。日本向けの密輸として差し止めされたこともあります。オーストラリアではこうした野生生物の違法取引の容疑で、過去2年間に11人が有罪判決を受けました。

▼ワシントン条約関連事例:オーストラリア固有種の保護
2022年3月、野生動物の厳しい輸出入規制を設けているオーストラリアが、自国に生息する固有種を違法取引の脅威から守るため、127種にのぼる野生生物を、ワシントン条約の附属書Ⅲに掲載する申請を行ないました。
こうした申請の背景には、オーストラリア固有の希少な爬虫類などが、法的な保護下にあるにもかかわらず、国際的なペット需要によって違法に持ち出され、危機に瀕している現状があります。

野生動物を守る仕組みの課題

さまざまな目的で取引される野生生物は、多くの場合「ワシントン条約」や、それぞれの国の法律で守られていますが、そうした規制にも課題があります。

具体的には、次のような課題です。

1. 情報の不足
2. 法律の執行力の不足
3. 抑止力にならない罰則
4. ロンダリング対策の不足
5. 法的保護対象になっていない動植物の保全

1.情報の不足
ペット目的で利用される野生動物は多種多様。

© naturepl.com / Edwin Giesbers / WWF

日本でも販売されているグラスフロッグ(Centrolenella ilex)はワシントン条約の第18回締約国会議で附属書Ⅱに掲載する提案がされたものの、否決。

野生の個体群などの生息状況に関する研究や調査は十分と言えず、ワシントン条約でもそうした情報をふまえた規制が追い付いていません。(Hughes et al. 2021)

とりわけ、ペット利用が多く確認されている、爬虫類や両生類については、利用の影響に見合った適切な取引規制がなされていないのが課題です。

IUCNの「レッドリスト」によれば、世界の両生類は現存する約8,000種のうち40%がすでに絶滅のおそれがあるとされますが、ワシントン条約で取引規制の対象種となっているのは2%ほどに過ぎません。

2.法律の執行力の不足
強い規制を盛り込んだ法律があっても、実際にそれが執行できているかは、その国の行政の力と機能に大きく左右されます。
開発途上国などの場合、法律は整備されていても、それを執行する体制やスキルが不足し、実際には規制が機能しないケースが少なくありません。(WWF WILDLIFE PRACTICE, 2020)

© Adam Oswell / WWF

日本の場合も、十分とはいえません。

日本では空港や港湾で密輸を防ぎ、監視する役割を税関が担っていますが、日本の税関の記録によると、2008年~2018年の間でペット利用される野生動物の押収件数は、年あたり10件以下。

日本と同様、野生動物の一大消費国として知られるアメリカと比較すると、この「違法」な輸入の差し止め件数は、アメリカの2%程度にとどまっています。つまり日本は、活発なペットの取引や輸入を行なっている国として、十分な摘発ができていない可能性がある、ということです。

3.抑止力にならない罰則
違法行為を犯した時の罰則が厳しければ、当然それは同様の犯罪の再発を防ぐ強い抑止力になります。
逆に、罰則が弱ければ、それは抑止力として機能せず、再発を招く要因になりかねません。

日本は、ワシントン条約の附属書に掲載された動植物種の国際取引を「外国為替及び外国貿易法(外為法)」と「関税法」で管理しています。しかし、密輸を未然に防ぐ「抑止効果」として十分でないとの指摘もされています。
それを示すのが再犯の多さです。

© WWF / James Morgan

2007年~2018年に12の密輸事件で特定された18名の被告のうち、少なくとも4名には、過去に野生生物の違法取引に関係した前科がありました。つまり、再犯です。
さらに、判決の結果が確認出来た14名の被告人のうち、執行猶予なしの懲役刑を言い渡されたのは3名のみ。他の被告には3年から4年の執行猶予が与えられていました。
現状の罰則では、十分な犯罪の抑止力が発揮できていないことが分かります。

4.ロンダリング対策の不足
ワシントン条約で附属書Ⅱに掲載された野生動植物種を輸出入する際は、個体の由来(野生・飼育下繁殖など)を示し、輸出国政府が「この取引は野生個体群に有害ではない」と証明した場合に限って、取引が可能となります。

しかし、実際は野生で捕獲した個体を「飼育下繁殖した個体」と偽り、合法な証明を取得(ロンダリング)した個体が輸出されている例が多くあると考えられています。

このロンダリングの問題は日本でも起きている可能性があります。
日本で、動物を商業目的で販売、展示する事業者は「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)」で第一種動物取扱業者と呼ばれ、販売、広告する際に、対象個体の生産地等を表示することが義務付けられています。しかし実際には、その表示が徹底されていません。

© Martin Harvey / WWF

ブラジル北東部沿岸の熱帯林に生息する小型のサル、コモンマーモセット(Callithrix jacchus)。

また、サル類については、日本では感染症法で海外からの輸入が禁止されているため、国内で販売されているサルは、すべて国内繁殖と表示され、販売、展示されています。

しかし実際には、サルの密輸事件が後を絶ちません。一度日本国内に持ち込まれたサルは「国内繁殖」と偽った表示がされ、取引が行なわれているおそれがあります。

現行の法律の不備が、ロンダリングをしやすい環境を作り、密輸犯に悪用されている可能性は否定できません。

▼事例:インドネシアの爬虫類
インドネシアでは、野生で捕獲したトッケイヤモリ(Gekko gecko)やグリーンパイソン(Morelia viridis)といった、ペットとして人気のある爬虫類の個体を、繁殖施設に持ち込み、繁殖した個体と偽って、インドネシア政府から許可を得て、輸出していた事例が報告されています。日本は両種をインドネシアから輸入しており、特にグリーンパイソンについては、1990年から断続的に輸入。その数の累計は4,000頭を超えます。一度の輸入で500~800頭にも及ぶことがわかっています。(Nijman and Shepherd, 2015)

© Magnus Lundgren / Wild Wonders of China / WWF

トッケイヤモリ

© Martin Harvey / WWF

グリーンツリーパイソン(Morelia viridis)

©David Lawson WWF-UK

インドホシガメ

▼事例:日本向けのインドホシガメ
長年、日本はヨルダンから、ワシントン条約の附属書Ⅱの掲載種であったインドホシガメ(Geochelone elegans)の、飼育下繁殖個体を合法的に輸入してきました。
しかし、その繁殖に利用されている親個体のインドホシガメが、どこからやってきたものなのか、その由来が確認出来ていないことに加え、施設の設備やこのカメの繁殖能力を考慮すると、ワシントン条約の取引記録で確認できる飼育下繁殖個体の輸出数が「多すぎる」という指摘がなされるようになりました。

ヨルダンから輸出されるインドホシガメの合法性を問題視したワシントン条約事務局でも、ヨルダン政府に回答を求めていましたが正式な回答は提出されず。

回答が提出されないまま、インドホシガメは絶滅リスクが高まったと判断され、2019年8月に、附属書Ⅱから附属書Ⅰに格上げ。商業目的での輸出が禁止されることになりました。(CITES CoP18 Prop. 36)

5.法的保護対象になっていない動植物の保全
ペット利用などを含む捕獲や、生息環境の破壊、外来生物、気候変動の影響といった、野生動物を絶滅の危機に追い込む要因は少なくありません。
しかし、絶滅の恐れの高い種が、自動的に法的に保護される訳ではありません。IUCNの「レッドリスト」は、どのような野生生物がどれくらい絶滅のおそれが高いかを評価していますが、保全への対策が取られるためには、ワシントン条約の附属書に掲載されたり、各国の国内法で、法的な保護下に置くことが必要になります。

©Yuma Kanamori

シリケンイモリ(Cynops ensicauda)はIUCNのレッドリストでVU(危急種)に指定されていますが、ワシントン条約でも国内法でも保護の対象にはなっていません。

日本でも、野生動物の保護を定めるいくつかの法律があります。しかし、いずれの法律でもその対象に指定されていない動物種には、当然ながら法的な保護が約束されません。
こうした、法的な保護の網のかかっていない野生の動植物をどう守っていくのかは、大きな課題です。

© Cat Holloway / WWF

▼事例:動物愛護管理法
動物愛護管理法では、販売や展示を扱う動物取扱業に関する規制を定めています。しかし2022年6月現在、その規制対象となっているのは、哺乳類、鳥類、爬虫類のみ(実験動物・産業動物を除く)。
これらの動物については、第一動物取扱業の登録をした事業者しか取り扱えず、販売時には対面での個体の説明や生産地等の表示など義務付けられていますが、それ以外の分類群、たとえば両生類や魚類などについては、そうした義務が課されていません。
そのため、絶滅の危機にある種を含む多くの海外産のカラフルなカエルや熱帯魚、珍しいカブトムシやクワガタムシなどは、現状の日本では、事業者登録をしなくても自由に販売ができてしまいます。

また、販売時も、対面での説明などが義務づけられておらず、オンラインプラットフォームを通じた売買が可能となるため、容易に取引ができる状況です。

これを解決していくには、動物愛護管理法の改正を行ない、規制対象を拡大することが、有効な手段となります。

©Yuta Kanamori
国内希少野生動植物種に指定されているイボイモリ。日本から海外に密輸され、輸出国側で差止めされたこともあります。

▼事例:種の保存法
日本の「種の保存法」では、国内に生息する、日本原産の絶滅のおそれのある野生生物のうち、人の影響によってその存続に支障があると判断される動植物種を「国内希少野生動植物種」に指定し、保護を義務付けています。
しかし、これに指定された野生動植物は、2022年1月現在で427種。環境省が公開している日本版「レッドリスト」に絶滅危惧種として掲載されている野生生物の種数、3,772種と比較すると、まだ一部に過ぎません。
レッドリストの掲載種は、法的な保護対象ではないため、国内希少野生動植物種のさらなる指定を、早急に進めていくことが求められています。

また、この国内希少野生動植物種に指定され、捕獲や販売、輸出などが禁止されているにもかかわらず、違法に捕獲、販売された事例が確認されています。

国内の野生動物のペット利用についても、違法性や保護上の問題がないか、検証と対策が必要です。

野生動物のペット利用問題 その解決に必要なこと

ワシントン条約や日本の法律による規制が強化されれば、保全において高い効果が期待できますが、それが成立するまでには、かなりの時間を要します。

また、問題は国際取引のルート上や、日本のような野生動物の消費国にだけ存在するわけではありません。

野生動物が本来生息している国でも、密猟や密輸出の防止などを含めた、保全の対策が確実に行なわれる必要があります。また、そのためには、政府の人員や資金の不足、汚職などの問題を解決し、法律の執行力を高めていかねばなりません。

開発途上国のような、資金的、技術的にも支援を必要とする国の場合であれば、国際的な援助も重要なカギとなりますが、これも時間のかかる対策です。

今、世界の自然環境は急激に失われており、絶滅危機種の種数も毎年増え続けています。

© Justin Jin / WWF France

生物多様性の豊かさが世界でも群を抜くマダガスカル。この地域原産の生きものも日本でペットとして流通しています。

現時点では絶滅のおそれがないとされる野生動物でも、もともとの個体数が少ない種や、限られた地域だけに生息するような種の場合は、一度の捕獲や取引によって、大きな打撃を受けることもあり得ます。そのため、規制や執行体制の強化・改善を待っていては、手遅れになる可能性も否めません。

ペットとして販売されていたり、アニマルカフェで展示されている野生動物の個体の中には、確かに飼育下繁殖された個体もいます。

しかし、こうした飼育下繫殖が進んだとしても、野生の個体群への影響や生態系への負荷が完全になくなるわけではありません。

繁殖下個体の親は結局、野生から捕獲してきた個体であったり、何代も繁殖を重ねた動物種であっても、近親交配を避けるために、どこかで野生の個体を必要とするケースが大半なためです。

© Adriano ARGENIO / WWF-Italy

アフリカに生息するヨウム(Psittacus erithacus)は、飼育下繁殖もされていますが、近年密猟の増加が心配されています。

さらに、大規模に行なわれるペットの流通を賄なえるほど、繁殖個体のストックや技術が確立されている動物種の例は多くありません。野生からの捕獲が続く限り、絶滅や生態系の劣化のリスクは高まり続けることになるのです。

こうしたさまざまな課題を考慮した上で、WWFジャパンは、野生動物をペットで求める消費者や販売する事業者、そしてメディアが、それぞれの立場からこの問題を考えて、取り組むことが重要であると考えています。

【必要なこと1】消費者が意識を変えること

2021年2月にWWFが行なった野生動物を含むエキゾチックペットに関する意識調査では、こうした動物のペット飼育のリスク認知は低いうえに、ペット利用にリスクが伴うことを知っても、「触れてみたい」、「飼ってみたい」という気持ちを持つ人が一定数いることが明らかになりました。

リスクの伴う動物のペット飼育の見直しを求めるためには、ただ問題を伝える普及啓発活動に留まっていては大きな効果は期待できず、消費者の「触れたい」、「飼いたい」という心理に働きかける施策が必要です。

【関連情報】WWFジャパン「エキゾチックペットに関する日本の意識調査」より

エキゾチックペットに関する日本の意識調査(WWFジャパン,2021):調査ではエキゾチックペットを「一般的なペットとして飼われている動物以外で、特に外国産の動物や野生由来の動物」と定義し、アンケートを実施しました。ウサギやハムスターなどペットとして家畜化されている小動物はここに含まれていません。

そのため、消費者のペット飼育に関する動機や背景など分析し、彼らの心理に効果的に作用するコミュニケーションによって、ペット飼育の問題を社会全体に発信し、利用される動物の中には「リスクの伴う野生動物が存在すること」、そして「そうした動物を飼わない」という意識に変えていく必要があります。

【関連情報】Reducing Demand for Exotic Pets in Japan(WWFジャパン、TRAFFIC、GlobeScan)

【必要なこと2】メディアが適切な発信を行なうこと

消費者の野生動物のペット需要を喚起、下支えしているのが、テレビやSNSなどのメディアの発信です。

2021年12月にWWFジャパン及びTRAFFICが発表した調査では、飼育者や飼育意向者(※5)には、テレビの動物番組やSNSの投稿から、動物に関心持ち、さらに飼育に必要な情報を入手している人がいることがわかりました。
特にSNSは、飼育者や飼育意向者の情報源として、広く活用されています。

※5. 調査では、ウサギやハムスターのように家畜化された動物以外のエキゾチックペット(主に野生動物)を飼っている人を「飼育者」、飼ったことがなく、飼いたいと思っている人を「飼育意向者」とした。

©Gerald S. Cubitt / WWF

2016年~2018年頃にブームとなったコツメカワウソも、テレビ番組で芸能人と一緒に生活や旅行をする様子が取り上げられたことなどが、視聴者の一部に「カワウソはペットとして飼育できる」という認識を抱かせる原因になったと考えらえています。

さらにSNSはペットの販売を手掛ける事業者にとっても、消費者との接点を確保する販売プラットフォームとして、重要な役割も果たしています。

かわいい動物の映像とともに、事業者によるペット利用を推進する発信や販売広告の掲載は、現状では法的な規制を受けることなく、今も広く行なわれています。

それでも昨今、「野生動物の安易なペット飼育を促した」として、テレビ番組が大きな批判を受けたり、絶滅危機種をペットとして表現した広告に抗議が寄せられ、企業が広告を取り下げたりするなど、日本でも社会的に厳しい目が向けられるようになってきました。

© naturepl.com / Lynn M. Stone / WWF

テレビやSNSといったメディアを扱う企業は、番組や提供するプラットフォームの投稿を通じて、視聴者に「野生動物は簡単に飼える」「飼っても問題ない」というイメージを与えてしまう、その責任を認識する必要があります。

野生動物が持つのは、「かわいい」一面だけでは、決してありません。報道の仕方一つで、安易なペットの購入や飼育が行なわれ、結果的に、野生動物を絶滅の危機に晒してしまうおそれがあります。

メディア関連企業には、本来の野生での姿や、ペット利用に伴う問題まで伝える番組の企画や制作、配信内容のチェックや管理をすることが求められます。

【必要なこと3】ペット事業者による「責任ある調達」

日本は欧米と並ぶ野生動物のペット市場を有するペット消費大国です。消費者への販売や、ふれあい目的の展示サービスなども、広く行なわれています。

国際的にはこうした野生動物利用の環境・社会面の問題への懸念から、規制強化を進める動きが強まっており、野生動物を利用する事業者や企業にとっても、不適切な野生動物利用がビジネス・リスクとなる可能性が高まっています。

特に、野生動物の調達については、野生動物の絶滅の危機や密輸といった環境問題に直接影響を及ぼすことから、動物の由来を事業者自身が証明するような仕組みや、絶滅危惧種を扱わない方針の導入などが求められています。

しかし、事業者の中には、法律で求められる義務でさえ怠る人達が確認されており、その責任意識は十分とは言えません。

© Ola Jennersten / WWF-Sweden

今後、国際的にも野生動物をペットとして扱うことに対する規制の強化が厳しくなることを想定し、それに対応した上で、扱う野生動物については環境や野生の個体群への悪影響を及ぼさない、持続可能な形での調達を行なうことが求められます。

また、ペット産業の中には、ペット保険や、ペットフェアなどのイベントの運営をサポートする企業など、野生動物のペット利用に間接的に関わっている企業もいます。

こうした企業は、パートナーとなる販売事業者などが、野生動物や生態系に脅威とならないビジネスを展開しているか、監視の目を持つことも期待されます。

どうすれば持続可能な「責任ある調達」ができるのか。ペットにかかわるさまざまなビジネスの関係者が、協力しながら実践していくことが求められます。

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