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スナネコをペットにしないで!


「砂漠の天使」―最近巷でこんな言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。そう、これは中東や北アフリカの砂漠地帯に生息するスナネコ(Felis margarita)に付けられたニックネームです。

スナネコ(Felis margarita)は最も小型の野生のネコ科動物の1種で、ネズミや、時には毒ヘビなどを捕食します。乾燥した環境に適応し、夜行性であることなどは知られていますが、研究は進んでおらず、詳しい生態は分かっていません。
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スナネコは最も小型の野生のネコ科動物の1種で、ネズミや、時には毒ヘビなどを捕食します。乾燥した環境に適応し、夜行性であることなどは知られていますが、研究は進んでおらず、詳しい生態は分かっていません。

日本では近年、その愛らしい容姿からスナネコをペットとしたいという需要が高まっています。

しかし、野生の動物をペットにするのは、簡単な事ではありません。
実際、スナネコは警戒心が強く、同種を飼育している那須どうぶつ王国の佐藤園長も「動物園生まれの個体も人に懐くことはなく、決してペットには向かない野生動物だ」と述べています。

それでも、そうした事情を知らない人たちには、SNSなどでも大人気。先日都内で開かれた大規模なペットフェアでも、一般向けに売られているのを確認しました。

スナネコが威嚇する様子。スナネコは非常に警戒心が強く、人にも慣れにくいといわれています。
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スナネコが威嚇する様子。スナネコは非常に警戒心が強く、人にも慣れにくいといわれています。

さらに、スナネコのペット需要が高まると、野生の個体が過剰に捕獲される事態が懸念されます。

同様に、容姿が「可愛い」といった理由でコツメカワウソ(Aonyx cinereus)やスローロリス(Nycticebus spp.)といった野生動物のペット需要の高まりは、個体数の減少や違法取引などの問題を引き起こしました。

東南アジアに生息する絶滅危惧種のコツメカワウソ(Aonyx cinereus)。日本ではペットブームによる違法取引が増え、2019年にワシントン条約により国際的な商取引が禁止されました。
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東南アジアに生息する絶滅危惧種のコツメカワウソ。日本ではペットブームによる違法取引が増え、2019年にワシントン条約により国際的な商取引が禁止されました。

現在スナネコは絶滅危惧種に指定されていませんが、地域によっては絶滅した可能性も報告されており、今後ペットブームになることで、その危機がさらに高まるおそれがあります。

野生動物のペットブームの背景には、その動物が欲しい、手元に置いて飼いたいという消費者の需要が必ず存在します。

同じ過ちを繰り返さないためにも、「可愛い」と思っても、ペットとして「買わない・飼わない」選択が大切です。

まだまだこの野生動物のペット問題については、一般に知られていないことが多くあります。私たちも情報の収集と発信に取り組みながら、解決に向けたアクションを行なっていきたいと思います。

(野生生物グループ 岡元)

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
岡元 友実子

獣医学修士(ソウル大学)/ 学芸員 / IUCN カワウソ専門家グループメンバー
学部から大学院に至るまで、野生動物について専門的に学ぶ。修了後、上野動物園など日本および台湾での動物園勤務を経て、2021年WWFジャパン入局。現在はペットプロジェクトに関連した業界変容を担当。

学生時代に海外で野生のカワウソを見たことをきっかけに、大のカワウソ好きに。「二ホンカワウソ絶滅」の悲劇を二度と起こしてはならない!の決意を胸に日々野生動物保全のため奮闘中。特技は語学(英語・中国語・韓国語)。

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