Fawaz  W.Alenzithe  founder  and  owner  of Petzone, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

エキゾチックペット大脱走?!


日本のあちこちでペットショップから動物が逃げ出しています。

先日、キンカジューという中南米原産の動物が福岡の山中で保護されたというニュースが流れました。自ら人に寄って来る様子に発見者はさぞかし驚いたことでしょう。このキンカジューは、近所のペットショップから逃げたものだそう。

キンカジュー(Potos flavus)は、宅地・農地開発、肉や毛皮目的の狩猟やペット目的の捕獲で個体数を減らしています。

キンカジュー(Potos flavus)は、宅地・農地開発、肉や毛皮目的の狩猟やペット目的の捕獲で個体数を減らしています。

6月には千葉県の田んぼで、ミナミジサイチョウが捕獲されました。隣県のペットショップから逃げ出してから1年半も経っていたそうです。

ミナミジサイチョウ(Bucorvus leadbeateri)は、農地開発のための営巣地の喪失や気候変動により絶滅のおそれが高くなっています(危急種)。
© Martin Harvey / WWF

ミナミジサイチョウ(Bucorvus leadbeateri)は、農地開発のための営巣地の喪失や気候変動により絶滅のおそれが高くなっています(危急種)。

いずれも、無事に捕獲されましたが、これらの動物を逃がしてしまったペットショップに対して、第一種動物取扱事業者として登録を認めた自治体からは何かの指導がなされたのでしょうか?動物を逃がしてしまうことも、すぐに捕獲できないことも、プロであるはずの事業者として、きちんと義務を果たしていないと感じます。

本来、日本にいない生きものを逃がすことで、その地域の生態系に影響を与える可能性がありますし、在来の野生生物や接触した人・家畜に思わぬ感染症をうつす危険性もあります。キンカジューの場合、人が重篤な脳炎を起こし得るアライグマ回虫感染の疑いのある事例が報告されています(1)。ミナミジサイチョウは、家畜伝染病予防法で法定伝染病に指定されるニューカッスル病を家禽や野鳥に感染させる恐れがあります(2)。

様々な野生生物がペットとして販売されている。
©TRAFFIC

様々な野生生物がペットとして販売されている。

現在の日本では、飼育に専門的な知識と管理が必要なエキゾチックペットも街のペットショップで販売されています。私は、このあらゆる動物(一部の獰猛な動物を除く)を「簡単に買えるし飼える」現状を変える時期に来ていると思っています。人や動物の健康と環境を守るために、ペット事業者も私たち消費者も変わる必要があります。

(1).大前比呂思(2012)輸入寄生虫病 — マラリアと人獣共通寄生虫症を中心に考える—, 日獣会誌, 65
http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06511/a6.pdf
(2) IUCNレッドリスト
https://www.iucnredlist.org/species/22682638/92955067
(2021年9月1日アクセス)

【寄付のお願い】好きだからこそ 違法な取引から野生動物を守りたい

この記事をシェアする

自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP