北太平洋漁業委員会2026結果報告 事前合意済みのサンマの漁獲枠10%削減は5%に 制度の不備を悪用

この記事のポイント
2026年4月14日から4日間にわたり開催されていた、サンマやマサバなどの漁業資源の管理について話し合う国際会議、北太平洋漁業委員会(NPFC)年次会合が閉幕しました。年次会合では、サンマの総漁獲可能量(TAC)は漁獲管理規則により10%削減に事前合意されていたにもかかわらず、台湾、中国の反対により5%となりました。これは、ほぼ前例のない事態であり、制度の不備を利用した悪例となりました。一方、マサバについては漁獲枠削減に合意、マイワシについては初めて漁獲枠が設定されるなど、一定の進捗もありました。
目次

サンマの漁獲管理規則(HCR)が履行されず 漁獲枠10%削減予定が5%に

2026年4月14日から17日まで、大阪で北太平洋漁業委員会(NPFC)の第10回年次会合が開催されました。

9の加盟国・地域(*)が参加したこの会議では、サンマやマサバなど北太平洋の魚種を中心とした漁業資源の保全と利用について話し合いが行なわれました。

*日本、アメリカ、カナダ、ロシア、中国、韓国、バヌアツ、EU、台湾

秋の風物詩でもあるサンマですが、以前は主に日本沿岸(EEZ内)で漁獲、庶民の魚として重宝されていました。

しかし近年は、遠洋漁業国による公海上の漁獲が急増。現在は日本以外にも台湾、中国、韓国、ロシア、バヌアツによって漁獲されています。

特に台湾、中国の漁獲量増加は著しく、かつて世界1位であった日本の漁獲量は、現在、台湾、中国に続く第3位に後退しています。

遠洋漁業国による漁獲量が急増するにしたがい、サンマの漁獲量および資源量は急減しています。

以前は60万トンもあった漁獲量は、2021年には歴史的最小値の9.3万トンにまで減少。資源評価結果も「枯渇状態」となり、大きな問題となりました。

そこで、昨年2024年の年次会合では、資源が目標値未満の場合、自動的に漁獲枠を10%減少させる漁獲管理規則(HCR)に合意。その後、遠洋漁業船で、漁獲上限到達による操業が停止されるなど、資源回復に向け一定の効果をみせていました。

しかし、2025年12月に行われた科学委員会では、中国が資源評価モデルの不確実性を理由に資源評価結果に合意できないこと、またその結果に基づく漁獲管理規則にも従わないことを表明しました。くわえて台湾も、今回の年次会合において、自国の経済的影響を理由に、漁獲枠を削減することに反対を表明。漁獲管理規則において、資源評価結果が合意されないなどの例外的な事例が発生した場合の措置が定められていなかったこともあり、事前に合意されていたにもかかわらず漁獲管理規則が履行されないという、ほぼ前例のない事態となりました。

それに対し中国・台湾以外の国は猛反発。WWFも、ポジションペーパーを提出するとともに、事前合意した漁獲管理規則の重要性や、サンマの資源管理の必要性を強く訴えました。

【WWFがNPFCに提出したポジションペーパー(英文)】
WWF NPFC2026 Position Statement.pdf

議論は難航し、結論は最終日まで持ち越されましたが、最終的には、漁獲枠を2025年の5%減の19.2万トン(公海上は11.5万トン)とすることに合意。また来年2027年は10%削減することを明記することとなりました。また、再発防止策として、漁獲管理規則の例外措置についても来年議論することとなりました。

NPFC年次会合風景。対面による会議とオンライン会議のハイブリッドでの開催となりました。
© Shuhei Uematsu / WWF Japan

NPFC年次会合風景。対面による会議とオンライン会議のハイブリッドでの開催となりました。

マサバの漁獲枠削減に合意

漁獲量が急減しているマサバについて、近年の不漁に対処できる漁獲枠の削減に合意されるか、注目されていました。

マサバの産卵場は主に日本沿岸に位置することから、歴史的にも日本が多く漁獲してきましたが、近年は、北太平洋の公海上において、遠洋漁獲国による漁獲が急増。NPFC科学委員会による資源評価結果では、マサバ資源は近年急減し、漁獲圧が高すぎると評価され、漁獲枠を削減することを推奨していました。

これをうけて年次会合では、漁獲枠の削減にむけた議論を行った結果、公海における2026年及び2027年の漁獲上限をそれぞれ5.1万トン(昨年は7.1万トン)、4.5万トンに削減することに合意しました。

マサバは、しめさば、塩焼き、味噌煮、缶詰などさまざまな形で消費され、庶民の魚として親しまれているほか、養殖の餌としても使用されています。

マサバは、しめさば、塩焼き、味噌煮、缶詰などさまざまな形で消費され、庶民の魚として親しまれているほか、養殖の餌としても使用されています。

マイワシの漁獲枠が設定 NPFCでははじめて

サンマ、マサバが危機的状況にありますが、実はマイワシも危険な状況です。

NPFC管理区域(マイワシ太平洋系群資源)では、以前は日本がマイワシのほとんどを漁獲していましたが、近年は日本以外の漁獲量が急増。現在はロシアが日本を抜き漁獲1位に(日本は2位に後退)、中国は漁獲3位ですが漁獲圧はロシア、日本以上に高い状況です。しかし、まだNPFCでの資源評価が完了しておらず、漁獲枠導入など実効的な漁獲管理が行われていない状況であり、乱獲に陥るリスクが高まると懸念されていました。

実際に最新2025年の日本独自の資源評価結果にでは、太平洋系群のマイワシ資源は、「漁獲圧が高すぎる」と評価されています。

そこで日本政府は、NPFCとして資源評価が完了していない状況ではあるものの、緊急的に漁獲枠を設定することを2025年より年次会合において提案し続けてきました。

昨年は、中国の反発により提案は却下されましたが、今回2026年は、前年漁獲実績並みではあるものの、無事に漁獲枠を設定することに合意されました。また、NPFCに、マイワシのワーキンググループが結成され、今後、早期に資源評価を実施するための協議が開始されることになりました。

マイワシは、刺身、塩焼き、煮つけ、缶詰などで食べられるほか、養殖の餌としても使用されています。

マイワシは、刺身、塩焼き、煮つけ、缶詰などで食べられるほか、養殖の餌としても使用されています。

IUU漁業対策強化に向けて 報告データの最低基準の確立

現在、違法、無報告、無規制(IUU)漁業が、水産資源の乱獲を招くだけでなく、奴隷労働の温床にもなっていることから、SDGsやG7、G20など、世界の優先課題としてとりあげられています。

【関連情報】
IUU漁業について
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/282.html

漁業の適切な管理のためには、漁業者は適切に各種情報を収集・報告し、管理当局(旗国、監視船など)はそれらの情報をもとに、IUU漁業を行っていないか、しっかりと検証する必要があります。そして、もし不備等があった場合には、管理当局は、注意勧告や、IUU漁船リストへの掲載をNPFC TCC(Technical Compliance Committee)会議に提案する必要があります。

しかし、管理当局にどのような情報を提出すべきかの基準がまだなく、それが理由でIUU漁業かどうかの判断にNPFC内で意見が分かれることが多くありました。
そこで今回の年次会合では、漁業者が提出すべき情報の最低基準を定めることについて議論し、無事、合意することができました。
これにより、今後、IUU漁業に関するNPFC内での合意形成が迅速に行われ、結果としてIUU漁業管理の強化につながることが期待されます。

© James Morgan / WWF-US

NPFC加盟国・地域は持続可能な漁業のため責任ある行動を

今回のNPFC年次会合の結果に対し、オブザーバーとして会合に参加したWWFジャパン海洋水産グループ漁業政策シニアマネージャーの植松周平は、次のように述べました。

「今回の年次会合では、サンマを最も多く漁獲している台湾と中国の反対により、事前合意されていたサンマの漁獲管理規則である漁獲枠10%削減が実行されないという、前代未聞の事例となりました。
その主因は、中国によるサンマの資源評価結果への不合意ですが、その理由や対応について疑問を持たざるを得ません。
サンマ資源評価は、日本、台湾、中国が独立して資源評価を実施し、その結果をもとに一つにまとめるという手法が用いられていますが、科学委員会に提出された結果は、3か国ともほぼ同じ結果でした。それにもかかわらず、中国が、一方的に不確実性を理由に資源評価結果に合意しませんでした。
しかも本来ならば予防原則に従い、もし不確実性が高い場合にはより多く漁獲枠を削減するべきなのですが、中国は合意済みの漁獲枠10%削減にすら反対。中国は、漁獲枠を削減させないため、資源評価結果に反対したと疑われても仕方がない状況です。

そして、この混乱に乗じ台湾は、漁獲枠を削減すると自国漁業への影響があるという理由で、漁獲枠削減に反対しました。

これら両国の対応は、サンマ漁獲大国として、責任ある行動とは到底思えません。

日本政府をはじめ、韓国、米国、カナダ、EU、議長、NGOなどからの強い非難と説得があり、何とかサンマ漁獲枠の5%削減に合意。サンマ資源回復への道は維持されましたが、今後、決してこのようなことが繰り返されないよう、例外措置の導入とともに、NPFCとしてのコンプライス強化が必要です」。

WWFは、北太平洋の持続可能な漁業の確立とIUU漁業廃絶のため、引き続き各国政府に働きかけをおこなっていきます。

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