「ゴーストギア調査隊」まとめ――漁業系プラスチックごみの潜水調査
2025/11/28
- この記事のポイント
- 人の暮らしに欠かせない水産物。しかし、それを漁獲する際に使われる漁網などのプラスチック製の漁具がさまざまな要因で海に流出し、持ち主の手を離れた後も水産資源を捕獲したり、また、それらの漁具に海洋生物が絡まり死亡する深刻な問題を引き起こしています。海に流出した漁具「ゴーストギア」の現状はどうなっているのか。WWFジャパンは2023年7月、海中のゴーストギアをダイビング事業者や漁業関係者、自治体の力を借りて調査する「ゴーストギア調査隊」を発足し、全国7地域で活動を展開しています。本ページでは、活動の概要や最新情報をお伝えします。
ゴーストギアについて
ゴーストギア映像
長崎県五島市の海で、ゴーストギア調査隊が確認した長さ11メートルにも及ぶゴーストギア(2025年8月)© WWF-Japan
ゴーストギアは放棄、逸失、もしくは投棄されて海に流出した漁網などの業務用の漁具由来のプラスチックごみです。世界の海洋プラスチックごみの約1割を占め、また、日本の海岸に漂着したプラスチックごみのうち漁具やブイ(浮体)などの漁業系プラスチックごみは重量比で5~6割を占めるというデータもあり(注1)、海洋国家であり、水産業が盛んな日本にとっては特に大きな課題です。
ゴーストギアは、海底に沈降してサンゴや藻場に覆い被さるなど海洋生態系に影響を与えたり、その丈夫さゆえに形状・機能が維持されるため、持ち主のいないまま魚などを獲り続けて水産資源を減少させる「ゴーストフィッシング」を引き起こし、持続的な水産業の妨げとなります。このほかにも、船の航行を妨げるなど、観光や地域経済にも大きな損害を与えます。
(注)環境省(2024)令和4年度漂着ごみ組成調査データ 取りまとめの結果について
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ゴーストギア調査隊について

環境や社会に様々な影響を与えるゴーストギアですが、ゴーストギアの日本近海での実態はまだ良くわかっていません。WWFジャパンは、2023年7月、海中のゴーストギアをダイビング事業者や漁業者、地元自治体と協力しながら調査する「ゴーストギア調査隊」を立ち上げ、ゴーストギア問題の実態解明に向けた活動を展開しています。
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ゴーストギア調査隊の活動地域とスケジュール(詳細報告も順次掲載)

WWFジャパンは、日本近海で海域の特性や漁法などを考慮し、以下の全国7地域を選定して、活動を進めています。2023年7月から2026年9月まで、各地域で6-8回の調査を行なったうえで、回収作業も検討します。2026年夏に、ゴーストギア調査隊について全体の活動をまとめて、報告書を作成する計画です。
※活動が完了した地域は、以下の地図に報告書を順次掲載していきます。現時点で、静岡県西伊豆町・伊東市の報告書作成が完了しています。
ゴーストギア調査隊の体制と流れ
WWFジャパンは、各地域で自治体、漁業協同組合の了承を得たうえで、ダイビング事業者に委託してゴーストギア調査隊の活動を実施します。各地域で基本的に6回の調査を行なった後、調査で発見したゴーストギアを適宜回収し、処分します。WWFジャパンは、外部のアドバイザーや専門家の協力を得ながら、各地域で関係者と協議し、調査結果をまとめる予定です。全7地域での調査が全て完了した後は、得られた情報や知見をもとに水産庁や環境省など行政への提言を予定しています。

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報道情報
ウミガメ救出!対馬沖に漂う「ゴーストギア」の脅威とは(NIB長崎国際放送、2025年9月)
海の幽霊?漂う漁具が魚を捕り続ける? “ゴーストギア”の実態(NHK、2025年8月)
命を奪い続ける「最も危険な海洋プラ」 ゴーストギア回収作業に同行(朝日新聞、2025年4月)
漁業を持続的なきれいな海へ… 海洋プラスチックごみから伊豆の海を守る 「ゴーストギア調査隊」=静岡【SDGs】(SBS静岡放送、2025年4月)



