© 藤根誠道

カメの利用──沖縄で起きた事件から考える


2025年10月、沖縄県で天然記念物リュウキュウヤマガメ107頭などを違法に捕獲し、70頭を密輸出しようとしたとして、中国籍の男女が逮捕され、7月に西表島で同じく天然記念物のヤエヤマセマルハコガメ35頭を違法所持していた中国人の男も一味であったと報道されました。

飼育下の個体。今年、西表島を訪問した際には、道を横切るヤエヤマセマルハコガメCuora flavomarginata evelynaeに出くわしました。
© 沖縄こどもの国

飼育下の個体。今年、西表島を訪問した際には、道を横切るヤエヤマセマルハコガメCuora flavomarginata evelynaeに出くわしました。

どちらのカメも南西諸島にのみ生息する固有種で、文化財保護法により厳しく保護されています。

以前、沖縄県内の爬虫類事業者から、特に赤みの強いリュウキュウヤマガメGeoemyda japonicaは中国人に人気が高いと聞いたことがあります。
© 沖縄こどもの国

以前、沖縄県内の爬虫類事業者から、特に赤みの強いリュウキュウヤマガメGeoemyda japonicaは中国人に人気が高いと聞いたことがあります。

南西諸島の固有種は海外でも高い人気があり、密猟や密輸が後を絶たず、野生個体の減少や生態系への影響が懸念されています。
爬虫類愛好者や研究者からも外国人による日本固有種の大量の違法捕獲や密輸に大きな懸念の声が上がっています。
この事件は、希少な野生動物が愛玩・鑑賞目的で違法に取引される現実を改めて浮き彫りにしました。
雑誌「生命の科学 遺伝」11月号の特集:日本のカメ類の保全と危機2へ私が寄稿した記事では、密輸出事例を含め、日本のカメ取引の実態と課題を解説しています。

ペット展示利用されるカメ

世界的にも拡大している爬虫類ペット市場でカメは、活発に取引されています。

タイの野生生物市場でも多種多様なカメが販売されていました。
© TRAFFIC

タイの野生生物市場でも多種多様なカメが販売されていました。

11月に開催されるワシントン条約第20回締約国会議(CoP20)においても「リクガメと淡水ガメの違法取引と法執行」が議題に上がっています。
こうした国際的な議論の行方に注目するとともに引き続き税関、行政や企業の密猟・違法取引防止の取組みの支援も行なっていきます。

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、青年海外協力隊(現 JICA海外協力隊)を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

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