カメの利用──沖縄で起きた事件から考える
2025/11/06
2025年10月、沖縄県で天然記念物リュウキュウヤマガメ107頭などを違法に捕獲し、70頭を密輸出しようとしたとして、中国籍の男女が逮捕され、7月に西表島で同じく天然記念物のヤエヤマセマルハコガメ35頭を違法所持していた中国人の男も一味であったと報道されました。

飼育下の個体。今年、西表島を訪問した際には、道を横切るヤエヤマセマルハコガメCuora flavomarginata evelynaeに出くわしました。
どちらのカメも南西諸島にのみ生息する固有種で、文化財保護法により厳しく保護されています。

以前、沖縄県内の爬虫類事業者から、特に赤みの強いリュウキュウヤマガメGeoemyda japonicaは中国人に人気が高いと聞いたことがあります。
南西諸島の固有種は海外でも高い人気があり、密猟や密輸が後を絶たず、野生個体の減少や生態系への影響が懸念されています。
爬虫類愛好者や研究者からも外国人による日本固有種の大量の違法捕獲や密輸に大きな懸念の声が上がっています。
この事件は、希少な野生動物が愛玩・鑑賞目的で違法に取引される現実を改めて浮き彫りにしました。
雑誌「生命の科学 遺伝」11月号の特集:日本のカメ類の保全と危機2へ私が寄稿した記事では、密輸出事例を含め、日本のカメ取引の実態と課題を解説しています。
ペット展示利用されるカメ
世界的にも拡大している爬虫類ペット市場でカメは、活発に取引されています。

タイの野生生物市場でも多種多様なカメが販売されていました。
11月に開催されるワシントン条約第20回締約国会議(CoP20)においても「リクガメと淡水ガメの違法取引と法執行」が議題に上がっています。
こうした国際的な議論の行方に注目するとともに引き続き税関、行政や企業の密猟・違法取引防止の取組みの支援も行なっていきます。



