© Staffan Widstrand / Wild Wonders of China / WWF

愛鳥週間に寄せて


毎年5月10日から16日までの一週間は、野鳥保護の大切さを知ってもらい、広めていくための愛鳥週間です。50年以上前に(公財)鳥類保護連絡協議会によって制定されました。

連休中にバードウォッチングを楽しんだ方もいらっしゃることでしょう。

私たちが皆さまのご支援のもと、ユキヒョウの保護活動に取り組んでいる西ヒマラヤにも、多くの鳥が生息しています。なかでも象徴的なのがオグロヅルです。

和名はオグロヅル( Grus nigricollis )ですが、英名はBlack-necked Crane (首の黒いツル)です。体高は140cmほどで、植物や昆虫、爬虫類を食べます。
© WWF-Japan

和名はオグロヅル( Grus nigricollis )ですが、英名はBlack-necked Crane (首の黒いツル)です。体高は140cmほどで、植物や昆虫、爬虫類を食べます。

© WWF-Japan
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西ヒマラヤに生息する野鳥。水鳥から猛禽まで多様な鳥が生息しているのは、草原、高山、湿地などさまざまな環境があるからです。

オグロツルは、夏場に標高の高いラダックへ飛来し、湿地で繁殖します。私も川辺や湿地に座り込んで抱卵している様子を目にしたことがあります。

現地では幸福の象徴とされていますが、開発による生息地の劣化や減少で絶滅のおそれが高まっています。

近年さらに脅威となっているのが外来種です。ラダックでは、野生化し人の手を離れて世代を重ねるようになったノイヌ(野犬)が巣の卵、抱卵中の親鳥や孵化した雛を襲うのです。

ユキヒョウ保護プロジェクトのフィールドであるチャンタンのプンゴック集落で確認された野犬に襲われたとみられるオグロヅル
© WWF India

ユキヒョウ保護プロジェクトのフィールドであるチャンタンのプンゴック集落で確認された野犬に襲われたとみられるオグロヅル

ツォモリリ(モリリ湖)では、野犬の影響でオグロヅルを含む鳥の営巣地がまるごとなくなったそうです。

以前は市街地に限られていた野犬の活動範囲が拡大し、今や、こんなところに?と思うような場所でも野犬の姿を見ることがあります。

人や家畜が襲われる事件も起こっており、ラダックで野犬の問題は深刻化しています。


今後、草食動物やユキヒョウなどへの影響が出てくる可能性もあり、フィールドチームは、野犬の問題への取り組みも開始しています。

今の季節、まだ西ヒマラヤは厳しい寒さが残る時期ですが、夏をこの地で過ごす渡り鳥たちは、徐々にその姿を見せてくれることでしょう。

ラダック南東部のツォカー(カー湖)。冬は凍てつく寒さですが、春から秋は多くの鳥でにぎわいます。
© WWF-Japan

ラダック南東部のツォカー(カー湖)。冬は凍てつく寒さですが、春から秋は多くの鳥でにぎわいます。

現場で生じているさまざまな問題への対応を進めながら、生きものたちがより活動的になるシーズンの訪れを、楽しみに待ちたいと思います。

草原の国、ツルのふるさと
【寄付のお願い】ユキヒョウの未来のために|野生動物アドプト制度 ユキヒョウ・スポンサーズ

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

人と自然が調和して
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