© David Bebber / WWF-UK

世界土壌デーに考える――土壌の健全性を守る、リジェネラティブ農業


12月5日は、世界土壌デー(World Soil Day)。
土壌資源の重要性と持続可能な土壌管理を提唱するために、国連食糧農業機関(FAO)と国連総会が2014年に定めた国際デーです。

土壌は、繊維や食品の原料となる農作物を生み、人々の生活を支える基盤です。加えて、健全な土壌は雨水の浸透と保持に優れ、干ばつや洪水に対する耐性を高めるためにも重要な役割を果たします。

© WWF- Türkiye

土壌は生物多様性の宝庫でもあり、地球の生物種の約59%が土壌で暮らしています1。また、土壌にすむミミズ、線虫、昆虫、菌類、細菌などは、その働きで土壌の健全性を支えています。そして、上位の捕食者である大型の節足動物やミミズなどを捕食する土壌動物や鳥類も、土壌生態系に依存し生息しています。

1: Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO) (2025)

土壌食物網と栄養段階

土壌食物網と栄養段階

しかし、農薬や化学肥料の過剰な利用を伴う従来の農業は、土壌や周辺流域の水に汚染をもたらし、生態系や生きものに深刻な被害を及ぼしています。

こうした土壌と水にかかわる課題を改善するため、WWFジャパンは2022年よりWWFトルコとともにブユック・メンデレス川流域において、リジェネラティブなコットン栽培を推進。

必要最小限の耕起、作物多様性の維持、土壌表面の被覆、生きた根の年間を通した保持、家畜放牧の統合を五つの主要原則として、土壌の健全性を優先する取り組みを、現地農家と協働して展開しています。

年間を通して現場で実施しているリジェネラティブ栽培のサイクルを示しています。

年間を通して現場で実施しているリジェネラティブ栽培のサイクルを示しています2

3年間のパイロット実践を経て、これらの取り組みが土壌健全性の改善と化学肥料と農薬の使用削減につながると確認しました。今後、さらに多くの地域で導入できるよう、活動を継続していきます。

2: WWF-Türkiye: REGENERATIVE AGRICULTURE IN COTTON PRODUCTION SCORECARDよりグラフを抜粋し、WWFジャパンが仮訳し編集しました。

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「世界土壌デー」の今日、皆さまにも是非、こうした土壌や流域の生物多様性についてご関心をお持ちいただき、私たちの取り組みを、応援していただければと思います。

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© Sanchez & Lope / WWF

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自然保護室(淡水)
金 惠娜

修士(文化交渉学・上智大学)。近代アジアの服飾文化交流を研究。アパレルメーカーで品質管理を経験した後、第三者検査機関において海外事業サポートとCSR(企業の社会的責任)監査を担当。 世界各地で人権を守るために、人々が生活している地域の環境、生態系を守らなければいけないと気づき、2025年WWFジャパンへ入局。海外における繊維生産地域の淡水生態系保全活動に従事。

繊維産業を持続可能にするために、人々がファッションが自然や他人に加担することなく楽しめる未来のために、自然に優しいモノづくりを探求し、それを実践している方々と共にそれを常識化していきたいと思います。

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