© WWF Japan / J.Mima

タンザニア、アフリカゾウ保護プロジェクトの現場から


真新しい建物の壁に取り付けられた、2つの蛇口。
子どもたちが把手をひねると、きれいな水が流れ出します。

そのすぐ左には、パンダのロゴと「Kupitia Mardi wa Tembo」の文字が入ったプレートが。

現地の言葉で書かれたこの文字の意味は、「アフリカゾウ保護プロジェクト」です。

© WWF Japan / R.Nishino

WWFの支援で設置された給水設備。プレートにあるTemboとは現地の言葉でゾウを意味します。

ここは、アフリカのタンザニア北東部、ムコマジ国立公園の周辺にある自治区ゴハにある学校の一つ。

私たちがWWFタンザニアの仲間たちと共に、アフリカゾウの保護活動に取り組んでいる、まさに最前線の現場です。

© WWF Japan / R.Nishino

:水を飲む子どもたち。以前利用していた給水設備は、衛生面などに課題があったため、子どもたちは離れた施設まで歩いて水汲みに行っていました。そこでのゾウとの遭遇事故を防ぐため、2024年に学校内に給水タンクを設置。しかし、ゾウがタンクを襲うおそれがあったため今回、壁で囲った設備を作りました。

ここが最前線である理由は、ムコマジの周辺では現在、地域住民とゾウの間で、深刻な「あつれき」が生じているためです。

2017年頃より、国境を接したケニア側から、たくさんのゾウがタンザニア国内にやってくるようになり、この地域では、アフリカゾウによる農作物や居住地への被害が多発。住民にも犠牲者が出る事態が生じました。

地域によっては、集落の近くや幹線道路にも姿を見せるようになり、子どもたちが学校に行けなくなることも。

そうした状況の中で、今から3年前、日本の皆さまからのご支援のもと、タンザニアでのアフリカゾウ保護プロジェクトを開始し、「あつれき」の現状調査と問題の解決に取り組んできました。

© WWF Japan / J.Mima

ムコマジ国立公園を遠望。あそこからゾウは水を求め離れた人里にも姿を現します。日差しが強く、乾燥した季節も長いこの場所では、コップ一杯の水の価値が、日本とは大きく違うのだなと、あらためて感じます。

目指すのは、アフリカゾウと地域の人々が「共存」できる社会を築くこと。

今回、現地で活動の進捗を確認し、その取り組みが着実に進んでいること、そして、その成果が地域の人々に感謝され、ゾウとの衝突も押さえられていることを確認しました。

7月からの新年度に向け、アフリカゾウ・スポンサーズの皆さまはじめ、ご支援いただいた皆さまに、あらためて御礼を申し上げますとともに、アフリカの仲間たちと取り組みの充実を目指したいと思います。

© WWF Tanzania

今回の現地訪問では、フィールドで使用するカメラのレンズや三脚など、皆さまのご支援で購入した機材も提供しました。

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自然保護室(野生生物 グループ長)、TRAFFIC
西野 亮子

学士(芸術文化)
2009年よりTRAFFICにて広報分野を中心に従事し、イベント運営、出版物作成などワシントン条約に関する普及啓発に努める。2016年からは重点種(特に注力すべき種)プログラム推進に携わり、取引を中心とした現状調査を担当。2018年以降は、関係する行政機関や企業へ働きかけ、取り組み促進を促す活動に従事し、野生生物の違法取引(IWT)の撲滅、持続可能ではない野生生物取引削減を目指す。ワシントン条約第70回常設委員会参加。東京都象牙取引規制に関する有識者会議委員(2022年3月終了)

「野生生物を守る」ことを起点に、そこに暮らす人、その場所の環境、そして利用する側の意識、すべての段階で取り組みが必要です。生息地から市場まで、それらを繋ぐことが私の役割です。

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