環境アセスの意義を問う
2023/06/29
環境に配慮した「持続可能な開発」を実施するために重要な法制度である、環境アセスメント(環境影響評価)。
6月29日、その意義を問うオンラインの合同記者会見を、沖縄県石垣島から中継して開催しました。
※記者会見の詳細については、記者会見プログラムをご参照ください
取り上げたのは、石垣島で進められている総面積127haに及ぶ大規模なゴルフ場付きリゾート施設「石垣リゾート&コミュニティ計画」。建設予定地には、日本最南端のラムサール条約湿地・名蔵アンパルの水源地や、国の特別天然記念物カンムリワシなど希少な野生生物の生息地が含まれています。
記者会見では、各分野の専門家が、この計画のため事業者が行なった環境アセスに、次のような問題があることを指摘しました。
- 名蔵アンパル・名蔵湾への影響について科学的根拠なく「軽微」と断じて調査が不十分
- 環境アセス後に予定地内で営巣が確認されたカンムリワシの調査や影響軽減措置が不十分
- 大量の地下水汲み上げやゴルフ場で使用される農薬の影響について調査予測が不十分
- 重要種の同定など基本的な事項に誤りがある など
これらの項目については、沖縄県知事も環境アセスの手続きの中で指摘していましたが、事業者は未だ求められた調査等を実施しないまま、着工に必要な許認可申請を進めています。
環境アセスを形だけのものにしないためには、現在進行中の許認可手続きにおいて県知事や各専門家が指摘した調査や対策の実施と、不備の認められた項目について再調査を行なうことが欠かせません。
人の暮らしや営みの基盤でもある河川・地下水・土壌を含む周辺環境、生態系の頂点にあるカンムリワシを支える甲殻類・貝類・魚類・両生類などさまざまな生物相とこれらのつながりで成り立つ生態系をまもる手続きとして、環境アセスが本当に意義のあるものとなるように、事業者や許認可権限者に対して要請中です。
石垣島の貴重な自然が次世代へ継承されるために、環境アセスで事業者に課せられた宿題がやり残されたまま着工されるようなことがないように、石垣の皆さんや全国の団体・学会と共に活動を続けていきたいと思います。
(野生生物グループ 小田倫子)