©中本純市

環境アセスの意義を問う


環境に配慮した「持続可能な開発」を実施するために重要な法制度である、環境アセスメント(環境影響評価)。
6月29日、その意義を問うオンラインの合同記者会見を、沖縄県石垣島から中継して開催しました。

※記者会見の詳細については、記者会見プログラムをご参照ください

取り上げたのは、石垣島で進められている総面積127haに及ぶ大規模なゴルフ場付きリゾート施設「石垣リゾート&コミュニティ計画」。建設予定地には、日本最南端のラムサール条約湿地・名蔵アンパルの水源地や、国の特別天然記念物カンムリワシなど希少な野生生物の生息地が含まれています。

©WWFジャパン

名蔵アンパルからの風景

記者会見では、各分野の専門家が、この計画のため事業者が行なった環境アセスに、次のような問題があることを指摘しました。

  • 名蔵アンパル・名蔵湾への影響について科学的根拠なく「軽微」と断じて調査が不十分
  • 環境アセス後に予定地内で営巣が確認されたカンムリワシの調査や影響軽減措置が不十分
  • 大量の地下水汲み上げやゴルフ場で使用される農薬の影響について調査予測が不十分
  • 重要種の同定など基本的な事項に誤りがある など

これらの項目については、沖縄県知事も環境アセスの手続きの中で指摘していましたが、事業者は未だ求められた調査等を実施しないまま、着工に必要な許認可申請を進めています。

石垣島のカンムリワシ。国の特別天然記念物、種の保存法の国内指定野生動植物種。

環境アセスを形だけのものにしないためには、現在進行中の許認可手続きにおいて県知事や各専門家が指摘した調査や対策の実施と、不備の認められた項目について再調査を行なうことが欠かせません。

人の暮らしや営みの基盤でもある河川・地下水・土壌を含む周辺環境、生態系の頂点にあるカンムリワシを支える甲殻類・貝類・魚類・両生類などさまざまな生物相とこれらのつながりで成り立つ生態系をまもる手続きとして、環境アセスが本当に意義のあるものとなるように、事業者や許認可権限者に対して要請中です。

計画による生息地への影響が懸念される生物には、名蔵アンパルや石垣島・八重山の名前が付けられた野生生物も含まれます。上から、貝類のアンパルクチキレ、甲殻類のアンパルツノヤドカリ、沖縄県希少野生動植物保護条例に基づく指定希少野生動植物種であるヤエヤマヤマガニ、同じく指定希少野生動植物種であるイシガキパイヌキバラヨシノボリ

石垣島の貴重な自然が次世代へ継承されるために、環境アセスで事業者に課せられた宿題がやり残されたまま着工されるようなことがないように、石垣の皆さんや全国の団体・学会と共に活動を続けていきたいと思います。

(野生生物グループ 小田倫子)

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自然保護室(野生生物)
小田 倫子

弁護士として10年間稼働後、家族の転勤に伴い沖縄県名護市に居住したことを契機に、自然保護の仕事を志し大学で保全生態学を専攻、2013年WWF入局。法人パートナーシップ担当として生物多様性保全・気候危機対策に関する企業との協働プロジェクトの提案・実施業務を担当後、野生生物グループに異動、今は国内希少種を保全するフィールドプロジェクトを担当。
学士(法学・農学 東京大学)
法学修士(カリフォルニア大学バークレー校)

国内希少種の宝庫である南西諸島で主に活動しています。フィールドで生き物に出会い、その美しさ・不思議さを仲間と分かち合える瞬間が至福の時。趣味は里山散策と水生生物の観察。

人と自然が調和して
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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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