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馬が群れる与那国島の豊かな水辺で


先日、沖縄県・与那国島での淡水生物の調査に同行させて頂きました。

現場となったのは、環境省が「生物多様性の観点から重要度の高い湿地(重要湿地)」に選定した樽舞湿原を含む、数カ所の湿地帯です。

調査は、与那国町教育委員会の村松稔さんにご案内頂きながら、湿地帯生物研究者のオイカワ丸先生と、アンパルの自然を守る会の事務局長で理学博士の井上志保里さんが実施。

与那国の自然と共に生きる会の皆さんと一緒に私も参加し、絶滅危惧種の陸貝類や水生昆虫などの生息を確認することができました。

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環境省が「生物多様性の観点から重要度の高い湿地(重要湿地)」として選定した、与那国島の樽舞湿原

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与那国島の固有種の巻貝ティンダハナタクリイロカワザンショウ(写真右).絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN)(沖縄県)

タイワンオオミズスマシ(与那国島の淡水域で撮影)

タイワンオオミズスマシ(与那国島の淡水域で撮影). 絶滅危惧Ⅱ類 (VU) (沖縄県),準絶滅危惧 (NT)(環境省)

また、ヨナグニサン展示資料館「アヤミハビル館」敷地内に、島民の方々が協力して設置したビオトープも見学。ゲンゴロウ類が元気に泳ぐ姿も見られました。

アヤミハビル館の敷地内に設置されたビオトープの前で。写真右は今回の調査にご協力頂いた与那国町教育委員会の村松稔さん。「アヤミハビル」とは、沖縄県の天然記念物で世界最大の蛾ヨナグニサンの地元の呼称。

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島内ではあちこちで馬が草を食む姿が見られ、車道を通せんぼされたことも。四方を海で囲まれた断崖の上に馬が群れる風景は、他では見られない独特の魅力がある。

今回の調査で、与那国島には、他の島や地域では生息が確認できなくなってしまった希少種を含む多種多様な生きものを育む、非常に豊かな水辺が残されていることが確認されました。

調査が行なわれた樽舞湿原では、開発計画による湿地の消失も心配されており、軟体動物多様性学会やWWFジャパンも、懸念を表明する声明を発表しています。

与那国島の集落内に掲げられた横断幕。樽舞湿原を埋め立てる新港湾建設計画に対しては、地元住民からも懸念の声が上がっている。

八重山を含む南西諸島の豊かな自然が次世代へ継承されるように、今後も取り組みを続けていきたいと思います。

与那国島の生きもの情報満載の『与那国島の自然と動植物』(与那国町教育委員会発行)。島の固有種を含む動植物が写真と共に解説されているだけではなく、外来生物やロードキルなどの環境課題もレポートされていて、与那国島の自然や生物への深い愛が伝わる解説書。アヤミハビル館や島内売店等で販売中。

(野生生物グループ 小田倫子)

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自然保護室(野生生物)
小田 倫子

弁護士として10年間稼働後、家族の転勤に伴い沖縄県名護市に居住したことを契機に、自然保護の仕事を志し大学で保全生態学を専攻、2013年WWF入局。法人パートナーシップ担当として生物多様性保全・気候危機対策に関する企業との協働プロジェクトの提案・実施業務を担当後、野生生物グループに異動、今は国内希少種を保全するフィールドプロジェクトを担当。
学士(法学・農学 東京大学)
法学修士(カリフォルニア大学バークレー校)

国内希少種の宝庫である南西諸島で主に活動しています。フィールドで生き物に出会い、その美しさ・不思議さを仲間と分かち合える瞬間が至福の時。趣味は里山散策と水生生物の観察。

人と自然が調和して
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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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