© David Lawson / WWF-UK

コツメカワウソがワシントン条約で取引禁止!

この記事のポイント
ペットとして日本で人気のコツメカワウソ。このコツメカワウソの国際取引を禁止する提案が、現在スイスで開催されているワシントン条約 第18回締約国会議の委員会において可決されました。決定の最終承認は、27日~28日の全体会合を待ちますが、国際取引禁止が決まった場合、日本の国内でもコツメカワウソの商業取引が原則禁止になります。
目次

コツメカワウソに迫る危機

コツメカワウソ(Anoyx cinereus)は東南アジアに生息するイタチ科の野生動物。生息地である水辺の開発や密猟などにより、絶滅のおそれが心配されています。

過去30年間で野生のコツメカワウソの個体数は、およそ30%減少したと推定され、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「危急種(VU)」に指定されています。一部の生息国では捕獲や取引が規制されているなど、保護の対象となっています。

そんな中、カワウソ類が生息するタイやインドネシアでは、オンライン取引が活発に行なわれ、違法取引が頻発していることがTRAFFICの調査から明らかになりました。
主な目的は、ペットとしての利用です。

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報告書「The Illegal Otter Trade in Southeast Asia(東南アジアでのカワウソの違法取引)」

このコツメカワウソの違法取引には、ペットとして人気の高い日本の市場も深く関係しています。東南アジアで2015年~2017年に押収された59頭の生きたカワウソのうち、少なくとも32頭は日本に向けられたものであることが分かりました。日本がこの最大の密輸先であるとの指摘もなされています。

こうした報告を受け、TRAFFICでは、日本国内でのペット需要と取引の実態について緊急調査を実施し、2018年10月に報告書を発表しました。

調査からは、人気テレビ番組などマスメディアやSNSの投稿が需要の引き金となっていること、また、国内取引に規制がなく、流通が極めて不透明であることから、密輸個体のロンダリングが行なわれている実態が明らかとなりました。

報告書「Otter Alert :日本に向けたカワウソの違法取引と高まる需要に緊急評価」

報告書「Otter Alert :日本に向けたカワウソの違法取引と高まる需要に緊急評価」

ワシントン条約で国際取引が禁止に

国際的にもカワウソ類の取引が問題とされる中、2019年8月17日から28日にかけて、スイスのジュネーブで開催されているワシントン条約の第18回締約国会議(CITES-CoP18)で、インド、ネパール、フィリピンが、コツメカワウソを条約の「附属書Ⅰ」に掲載し、国際取引を原則禁止すべきとの提案を提出しました。

現在、コツメカワウソは輸出国が許可すれば商業目的の取引が可能な「附属書Ⅱ」に掲載されています。これが附属書Ⅰにアップリストされると、商業目的の国際取引が原則禁止となります。

そして、CoP18では、この「附属書Ⅰ」への提案が8月26日、分科会で審議され、投票の結果、賛成98票、反対16票、棄権14票で可決されました。

スクリーンに映し出される投票結果
©TRAFFIC

スクリーンに映し出される投票結果

この分科会の決定は会議の最後(8月27日~28日)に開催される全体会合で最終承認が行なわれます。

まれに、分科会の決定に対して議論が再度行われ、結果が変わることもありますが、今回のコツメカワウソの提案に関しては、分科会の議論の様子からも、そのまま承認される可能性が高いと考えられます。

ビロードカワウソLutrogale perspicilata CoP18では、ビロードカワウソの附属書Ⅰ掲載もバングラデシュ、インド、ネパールにより提案され、分科会で可決された。日本でビロードカワウソがペット利用されている例は確認されていないが、幼獣の場合、コツメカワウソとビロードカワウソの識別は専門家でも難しいと言われている。
© Mikaail Kavanagh / WWF

ビロードカワウソLutrogale perspicilata
CoP18では、ビロードカワウソの附属書Ⅰ掲載もバングラデシュ、インド、ネパールにより提案され、分科会で可決された。日本でビロードカワウソがペット利用されている例は確認されていないが、幼獣の場合、コツメカワウソとビロードカワウソの識別は専門家でも難しいと言われている。

附属書Ⅰ掲載の影響

今回のCoP18で決定した新たな附属書の取引規制の内容は、締約国会議が閉会してから90日後に発効することが決まっています。

この附属書Ⅰの掲載が発効することで、2つの大きな変化が生じることになります。

国際取引に対する影響

まず、一つ目の変化は、国家間の取引、つまり国際取引に対する影響です。

これまで、「附属書Ⅱ」であったコツメカワウソは、輸出国の許可があればペット用に商業輸出が可能でした。
これが「附属書Ⅰ」になることで、販売用の国際取引が原則禁止されることになります。

つまり、近年インドネシアからペット用のコツメカワウソの幼獣を輸入し、販売してきた日本も、これからはペットビジネスを目的とした海外からの輸入ができなくなる、ということです。
ワシントン条約では、附属書Ⅰでも、国に登録された「飼育繁殖」を行う施設からの輸出については、野生の個体群に影響を与えないことを条件に、商業取引を可能とする規定がありますが、これはあくまで例外上の措置。
また、該当する施設の登録に当たっては、野生個体の違法な導入や、繁殖目的に野生個体が利用されることを防ぐための管理が求められるほか、繁殖された個体についても、識別が可能なマーキングを義務づけるなど厳しい条件が課されます。

また、近年頻発している「密輸」への影響についても、コツメカワウソの輸出入が厳格な管理下に置かれることで、取り締まりの強化につながることが期待されます。

「附属書Ⅰ」への掲載は、直接、密輸防止の効果を発揮するものではありませんが、ワシントン条約が定める明示的な国際取引の禁止は、関係国当局の密猟や密輸に対する認識を高める上で、大きな力を発揮します。

コツメカワウソが生息するインドネシアの森
© WWF-Indonesia/Jimmy Syahirsyah

コツメカワウソが生息するインドネシアの森

日本国内の取引も禁止に

コツメカワウソの「附属書Ⅰ」掲載がもたらす2つ目の大きな変化は、日本国内での取引への影響です。

日本では、ワシントン条約の「附属書Ⅰ」に掲載された野生動植物を、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」に基づき、国内での取引を原則禁止しています。

コツメカワウソは今後、これに該当することになり、国内でペットとして販売することができなくなるのです。

また、「種の保存法」は、商取引だけでなく無償の譲り渡しも禁止しているため、販売だけでなく、個人や事業者による取引全般が、禁止の対象となります。

もっとも、国内取引の禁止にも例外はあり、個体ごとに、合法に入手したことを証明し、環境省に登録を行えば、国内での取引が許可されることがあります。

とはいえ、現状で行なわれているような規模での、ペット目的の取引は、ほとんど不可となるため、日本のペット需要が生息国のコツメカワウソに及ぼす影響を抑えられることが期待できます。

カワウソカフェで展示されるカワウソ
©TRAFFIC Japan

カワウソカフェで展示されるカワウソ

日本のペット需要と絶滅危惧種のつながり

これまでも日本では、許可を得て合法的に輸入されたカワウソの個体か、密輸された個体なのか見分けが付けられず、取引が続けられてきた問題が指摘されていました。

その中で今回、「附属書Ⅰ」への登録が実現し、国内での取引が基本的に全面禁止となることは、絶滅が危惧される野生のコツメカワウソの保全上、大事な一歩になります。

また同時に、こうした取り組みを推進するためには、法制度の改善だけでなく、コツメカワウソを「かわいい」愛玩物として盛んにもてはやす、日本のメディアや市民の意識も変えていかねばなりません。

日本での暮らしや、その中で生じるさまざまな需要が、野生生物を絶滅のふちに追いやっている。WWFでは国際社会への働きかけと法律の改善を求めながら、その現状をこれからも訴えていきます。

©Gerald S. Cubitt / WWF

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