環境省提供

ペット由来外来種:新報告書公開!

この記事のポイント
外来生物法の施行から20年が経った日本。しかし、さまざまな野生動物が国内に持ち込まれ、逸走・遺棄を経て外来種化するケースは、今も各地で確認されています。WWFジャパンは、2026年2月、新たな報告書『ペット由来外来種:日本における現状と課題』を公開しました。本報告書は、近年社会問題となっている外来種の定着・拡散において、「ペットとして流通する野生動物」がどの程度関与しているのかを多角的に検証したものです。科学的根拠に基づき課題と今後の対応の方向性を示しています。
目次

ペットや展示が外来種化の“主要ルート”に

日本では近年、多様な野生動物がペットとして輸入され、ペットショップ、フェアなどで広く販売されています。

しかしその一方で、飼育されている個体の逸走や飼いきれなくなった個体の遺棄により、外来種として定着し、さらに在来の生態系、人の健康や農林水産業に悪影響を及ぼす侵略的外来種(IAS)となる例が相次いでいます。

そこで、WWFジャパンではペット利用される野生動物が、日本国内でどれくらい外来生物化しているか、その現状について調査を行ないました。

今回、2015年版生態系被害防止外来種リストや都道府県の外来種リスト等に掲載されている哺乳類・鳥類・爬虫類を分析した結果、

哺乳類の32%
鳥類の76%
爬虫類の76%

がペット目的で利用されていたことが分かりました。観光施設などでの展示目的と合わせるその割合はさらに高くなります。

●●●●●●
© Kanako Tanaka

ペットショップで販売されていたセキセイインコ Melopsittacus undulatus 。オーストラリア原産の鳥だが、米国や日本で野生化が確認されている。https://www.exoticpetguide.org/guide/%e3%82%bb%e3%82%ad%e3%82%bb%e3%82%a4%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%82%b3/

こうした傾向は海外の科学研究とも整合し、国際的なペット市場が外来種の主要な供給源となっていることが再確認されています。

事例紹介:アライグマとグリーンアノールがもたらす深刻な影響

本報告書では、すでに日本で深刻な被害が顕在化しているアライグマ(Procyon lotor)とグリーンアノール(Anolis carolinensis)をケーススタディとして取り上げています。

アライグマ

© Junkichi Mima / WWF-Japan

1970年代以降の大量輸入とペット利用を経て、現在は46都道府県で生息を確認。農作物被害は2023年に4.8億円にのぼり、文化財や住宅への損傷、寄生虫や人獣共通感染症のリスクも懸念されています。

アライグマによる国内の農作物被害額の推移

アライグマによる国内の農作物被害額の推移(農林水産省, 2023)

グリーンアノール

小笠原諸島や沖縄で定着し、固有昆虫類や在来爬虫類に甚大な捕食圧を与えています。オガサワラシジミやトンボ、ミツバチなど小笠原固有の昆虫の多くが絶滅寸前に追い込まれ、受粉の成功率低下による植物生態系の崩壊という連鎖的影響も確認されています。

これらの事例は、ペットとして持ち込まれた個体が逸走・遺棄されることで、取り返しのつかない生態系被害が発生した典型例です。

グリーンアノールAnolis carolinensis を含めたアノール属7種が特定外来生物に指定されている。これらの種の輸入・飼育・販売や譲渡などは禁止されている。
環境省提供

グリーンアノールAnolis carolinensis を含めたアノール属7種が特定外来生物に指定されている。これらの種の輸入・飼育・販売や譲渡などは禁止されている。

日本のペット市場データ × 国際データセットの照合

市場調査を行なった爬虫類フェアの様子。
© WWF-Japan

市場調査を行なった爬虫類フェアの様子。

WWFジャパンでは今回、国内のペットショップ・爬虫類フェアなどで記録した148種 4,969個体の市場データと、以下の5つの国際的な外来種データベースを照合。

日本でペットとして柳津している種が海外で外来種化しているか、それ等の種は外来種化によって経済や自然にどのような影響を及ぼしているかを分析しました。

  • GRIIS:各国による外来種の導入・定着状況を含むデータベース
  • EICAT:IUCNの専門家グループが環境影響を評価した外来種データベース
  • InvaCost:経済コストの観点から外来種の影響を記録したデータベース
  • GIDIAS:IPBESの概念的枠組みを採用した外来種の自然・社会への影響のデータベース
  • CABI Horizon Scanning Tool:外来種となりうる種を探すことができるツール

その結果、26種(17.6%)が1つ以上のデータセットで外来種として記録されていることが判明しました。

つまり、これらの種は、現在日本で外来種化が確認されていなくても、今後そうなる潜在的可能性があることを示唆しています。

特に以下の種は複数のデータセットに記録され、潜在的リスクが高いと言えるでしょう。

オキナインコ(Myiopsitta monachus
ボールパイソン(Python regius
コーンスネーク(Pantherophis guttatus
カリフォルニアキングスネーク(Lampropeltis californiae
グリーンイグアナ(Iguana iguana

●●●●●●
© Anthony B. Rath / WWF

中南米及び西インド諸島原産の昼行性爬虫類であるグリーンイグアナ Iguana iguanaは、米国やスペインに移入され、沖縄の石垣島でも定着が懸念されている。https://www.exoticpetguide.org/guide/%e3%82%b0%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%a4%e3%82%b0%e3%82%a2%e3%83%8a/

上記5種の中には、すでに日本国内で野外個体の発見や遺棄・逸走事例がある種も含まれ、対策が急がれます。

予防原則-最もコスパの良い方法

報告書で述べている通り、アライグマによる農業被害や駆除のために年間数十億円の費用を要しています。

外来種問題への対策で最も有効なのは「導入前の予防」であることが科学的に明らかになっています。WWFジャパンは、次の点を特に重視すべきと考えます。

・科学的根拠に基づくリスク評価の制度化
・高リスク種の輸入・流通段階での管理強化
・飼育者による遺棄防止の徹底
・早期発見のためのモニタリング体制の強化

野生動物のペット利用が、外来種問題・感染症リスク・生物多様性の損失につながり得ることを社会全体で理解し、予防原則を基本とする取り組みを加速させることが求められます。

【WWFジャパン報告書】『ペット由来外来種:日本における現状と課題』(日本語版)

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP