© Tom Vierus WWF-UK

【開催報告】農業サプライチェーンにおける責任ある水管理の世界的先進取り組み紹介―ドイツ大手スーパーEDEKAの事例―

この記事のポイント
「世界水の日」の3月22日、WWFジャパンはセミナーを開催し、企業の「水」の取り組みにおける世界的先進事例として、ドイツ大手スーパーマーケットEDEKAの取り組みを紹介しました。同社が、自社の農業サプライチェーンの「水」に対し、どのようにリスクを把握し対応しているのかや、「責任ある水利用管理(ウォーター・スチュワードシップ)」の具体的な活動等を解説しました。
目次

サプライチェーン上の「水」に取り組む意義

食品、精密機器、衣料品、医薬品など、さまざまなモノを製造するものづくり大国の日本。これらモノの原材料生産や加工・製造過程は全く異なりますが、共通項のひとつとして「水」が挙げられます。

農産物の生育に必要な灌漑用水、半導体製造の洗浄工程において必要な超純水など、多くの産業のなかで、水は欠かせない資源のひとつと言えるでしょう。一方で、水需要の高まりや気候変動など、さまざまな要因により、水や水を育む環境・生態系が深刻な状況に陥っています。

食品生産に関する水リスクを例にとると、2021年に起きた干ばつで、カナダ産の菜種が大きな影響を受け、輸出量が減少。世界的な需要増もあり、国際相場が約2倍に高騰したため、日本の油脂メーカーも価格改定を強いられることになりました。

ほかにも、半導体製造の事例として、2020~21年、半導体生産の世界シェア6割が集中する台湾で、降雨量の減少等による記録的な干ばつが発生し、その年の生産に甚大な影響を及ぼしました。

水リスクは地域性が高く、気候変動の影響を大きく受けます。例えば、その年の降雨パターンによっても影響が異なる場合もあります。また地域性が高いがゆえに、必ずしもグローバルスケールでのツールでは水リスクが顕在化しないものの、現場では水リスクを深刻にとらえられている場合もあります。しかし、洪水や渇水などの水リスクは、経済活動や地域の人々の暮らしに深刻な影響を及ぼしています。これらは、決して気候変動だけが要因ではなく、産業活動がリスクを増大させている例も少なくありません。

ブラジルのように、農業生産や畜産の拡大により、土地利用の変化が加速化。裸地化した農地・牧草地から雨季に土砂が流亡し、周辺の河川に大量の土砂が堆積し、河川流量の減少が起きている地域もあります。

© Andre Dib / WWF-Brazil

林から大豆畑に改変されたブラジルの農地。森林伐採とそれによる裸地化が、極度の乾燥や、雨季に大規模な土砂流出の一因になっている。

水が豊かな国と言われる日本ですが、これらのグローバルな水リスクは、決して他人事ではありません。

日本企業のサプライチェーンは、原材料の輸入や製造工場など、海外にも広くつながっており、各地の淡水やその生物多様性に深くかかわっているためです。将来を見据えた、持続可能な企業活動を目指すとき、既に起きている水の問題、そして、将来の水リスクへの対策を始めることが重要です。

現在、サステナブル経営というと、TNFDなどの情報開示や、SBTs for Natureの目標設定といった枠組みに関心の高い企業も多いかもしれません。これらの枠組みには、「淡水」も含まれています。TNFDでは、直接操業だけでなくバリューチェーンを通じた自然との接点についても適切な情報開示が求められています。

持続可能な企業活動のために、自社ビジネスにとって重要な地域・流域で取り組みを始めることは、これら既存の枠組みへの対応にもつながります。

サプライチェーン上の「水」をどのように優先順位付けし、どのように取り組むべきなのか。企業の「責任ある水利用管理(ウォーター・スチュワードシップ)」とは、どのようなものなのか。WWFジャパンではその考え方を解説し、具体的な企業の先進事例を紹介するオンラインセミナーを、国連の定める「世界水の日」の2024年3月22日に開催しました。

原材料調達地での水リスク把握が第一歩

このオンラインセミナーでは、企業の「水」の取り組みにおける世界的先進事例として、ドイツ大手スーパーマーケットEDEKAの取り組みを紹介しました。

当日は同社より、自社の農業サプライチェーンの「水」に対し、どのようにリスクを把握し対応しているのかや、「責任ある水利用管理(ウォーター・スチュワードシップ)」の具体的な活動等を解説。

また、WWFジャパンとEDEKAのディスカッション・パートでは、現場での具体的な取り組み、農地での認証取得、農業者をはじめとするステークホルダーとの協力、節水設備の導入、水質・水量モニタリングなどを紹介し、現在・将来の水リスクに対して取り組む意義について共有しました。

本セミナーには、企業関係者を中心に、304名が登録、158名の参加がありました。

© WWFジャパン

セミナーの様子

EDEKAの取り組みが示す3つの重要なポイント

本セミナーの中で、EDEKAが責任ある水利用管理に取り組むうえで、特に重要な点として挙げたのは、次の3点です。

  • 国内拠点だけでなく、サプライチェーン(EDEKAの場合、国外の農産物調達地)全体を俯瞰し、水リスク、生物多様性保全、自社ビジネスにとって重要性といった観点から、取り組むべき地域・流域を優先順位づけし、情報公開すること。
  • 優先地域・流域では、現地での詳細なリスクの検証のほか、農地での国際認証取得により、消費者からの透明性・信頼感を得られるよう努めること。
  • 認証取得にとどまらず、流域プラットフォームを立上げ、農業者や他企業、科学者や行政、NGOなどと連携して取り組む「コレクティブアクション」を推進すること。

これはあくまでEDEKAとしての例になりますが、場所によってリスクの種類も度合いも異なる「水」は、地域・流域ごとの水環境に即した、コンテクストベースでの検討が肝要です。

しかし、いかなる企業とその事業に関連する場所においても、取り組みの第一歩は共通しています。

それは、「原材料品目+調達地」という観点で、グローバルな水リスクを比較検討し、自社にとって重要な地域・流域を優先順位づけすること。その情報公開も含めて、適切な現状把握と情報公開が、最初のステップとなる点です。

イベント概要:農業サプライチェーンにおける責任ある水管理の世界的先進取り組み紹介―ドイツ大手スーパーEDEKAの事例―

日時 2024年3月22日(金) 17:00~18:30
場所 オンライン
参加者 158名
主催 WWFジャパン

プログラム(講演者、敬称略)

  • はじめに
    並木崇:WWFジャパン自然保護室淡水グループ長
  • EDEKAの水の取り組み紹介
    アンドレ・ベックラー:EDEKA ZENTRALE Stiftung & Co. KG マーケティング第2部 ブランド|製品|サステナビリティ サステナビリティ・エコロジー部 環境保護グループ 淡水プロジェクトマネージャー
  • ディスカッション
    アンドレ・ベックラー、並木崇
  • おわりに
    並木崇

各講演の抄録

はじめに
並木崇:WWFジャパン自然保護室淡水グループ長


冒頭、WWFジャパン自然保護室の淡水グループ長、並木崇より、今回のセミナーの背景情報として、水リスクや淡水生態系の劣化と、企業活動のつながりについて説明しました。

© WWFジャパン

2024年3月5日にWWFジャパンが発表した冊子を紹介。企業が水のサステナビリティに取り組むうえで、前提となる水リスクの捉え方や、流域、サプライチェーンといった広い視点でリスク把握と対策を行う重要性について概説を述べました。特に現場での対策について、効果的な対策を進めるために必要な協同活動(コレクティブアクション)の重要性についても触れました。

さらに、淡水生態系の劣化とその要因についても解説。WWFが発表している『生きているレポート』でも、淡水の生物多様性の豊かさは、1970年から2022年までに83%も減少したとみられ、その危機が年々深刻化していること、そして、気候変動だけではなく、食料や繊維生産、都市・インフラ開発、ダム建設などといった人為的要素も、一因であることを指摘しました。

世界経済フォーラムより毎年報告されているグローバルリスクのなかでも、今後10年間のリスクトップ4が、異常気象、地球システムの危機的変化、生物多様性の損失と生態系の破壊、天然資源の破壊であることを紹介。いずれも水に関わりのあるリスクであり、経済的な観点でも淡水や淡水生態系への取り組みが急務であることを強調しました。

EDEKAの水の取り組み紹介
アンドレ・ベックラー:EDEKA ZENTRALE Stiftung & Co. KG マーケティング第2部 ブランド|製品|サステナビリティ サステナビリティ・エコロジー部 環境保護グループ 淡水プロジェクトマネージャー


ドイツ大手スーパーマーケットEDEKAでサステナビリティ・淡水を担当するアンドレ・ベックラー氏は、流域での責任ある水利用管理に向けた取り組みである「ウォーター・スチュワードシップ」について、農業サプライチェーンでの取り組みを紹介。企業として、責任ある水利用管理にどのような意義やメリットを見出し、現場での活動に貢献しているのか、お話しいただきました。

© WWFジャパン

EDEKAは、2012年からWWFドイツとのパートナーシップの中で、淡水/責任ある水利用管理(ウォーター・スチュワードシップ)をリード。責任ある水利用管理は、水辺の生態系の保護と回復に貢献し、水質改善、水消費量の削減、飲料水の供給と衛生設備の確保、そして流域におけるより持続可能な水資源管理手法の強化に役立つものと捉え、活動を進めている。近年、EDEKAとWWFは、淡水のリスクの特定に一貫して取り組んでいる。

ベックラー氏は、水や大気、土壌など自然環境の恵みを受けてビジネスを行う食品リテーラーとして、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を越えない、サステナブルな操業を行うことがEDEKAのビジネスの前提にあると紹介。

特に、生物多様性、気候変動、淡水の消費、土地利用の変化、生物地球科学的循環(リン、窒素)といった要素は相互に連関しており、企業は、個別に切り分けて考えるのではなく横断的に取り組むべきだと述べました。

また、EDEKAのサステナビリティの取り組みの一環として、WWFとの協力にも言及。

2009年にWWFとサステナブルなシーフードにおける取り組みから開始し、水に関しては2012年から現在に至るまで連携を拡大中。2032年までのパートナーシップのなかで、特に、「淡水、生物多様性、気候、資源」の4つの柱に焦点を当て、サプライチェーンとなる生産地での取り組みを更に充実化させていくことを目指す、としています。

そして、サプライチェーンで取り組むうえで、最初に行なうべき優先順位付けについても具体的に紹介。

EDEKAでは、WWFのウォーター・リスク・フィルター、そしてサプライヤーと連携し、自社サプライチェーンの水リスクを分析してきたこと。南欧やラテンアメリカ、アフリカ南部などに高いリスクがあることを把握しビジネスの方向性を定めたこと。実際に、スペインでは柑橘類プロジェクト、コロンビアやエクアドルではバナナ・プロジェクトなどを実施し、現地の農業者へのトレーニングや設備の支援、水質・水量など基礎調査、エコロジカル・コリドーの拡充などの活動に投資してきたことを説明しました。

特に、コロンビアでは、バナナ生産地の流域で水環境や淡水生態系を保全していく、協同活動(コレクティブアクション)の取り組みを実施。これは、EDEKAとWWFだけでなく、スターバックス等の他企業や、地方行政、研究機関、農業者などステークホルダー間で連携する枠組みです。

これらに加え、責任ある水利用管理の指針のひとつである、AWS(Alliance for Water Stewardship)認証の取得も、具体的な取り組みのひとつとして紹介。コロンビア、エクアドルのバナナ農地で、農業者の協力のもと、各農園レベルでAWS認証を取得している事例も解説されました。

また、同じ流域に依存・影響する他社と、集団でAWS規格の実施を推奨していく、「AWSインパクト・アクセラレータ―」の取り組みについても触れ、スペイン南部のプログラムにEDEKAも参加していること、さらに、認証取得を確実に進めながら、現地コミュニティにとっての機会の創出や流域の生態系保全活動など、認証だけにとらわれない活動展開を行なっていることをお話しいただきました。

ディスカッション
アンドレ・ベックラー、並木崇


EDEKAのベックラー氏と、WWFジャパン並木のディスカッション・パートでは、EDEKAの取り組みを掘り下げて紹介しました。

© WWFジャパン

並木:2011年のエルニーニョ現象の激化によるバナナ生産への打撃など、これまでに、バナナのサプライチェーンに渇水・洪水による影響が発生したことはありましたか。

ベックラー:プログラムを開始してからは、コロンビア・エクアドルでは大きな混乱は発生していないものの、気候変動などによる小さな問題はたびたび発生しています。ドミニカ共和国からのバナナ輸入については、大きな洪水被害を受けたことがありました。その際は、サプライヤーや農業者と調整し、流通量を変更しなければならなくなりました。これらのリスクに備えるためにも、取り組みが必要です。

並木:AWS認証を取得した背景や理由は何でしょうか。コストもかかるなか、取得するメリットやモチベーションを伺いたいと思います。

ベックラー:EDEKAは、2016年からAWSの企業メンバーシップに加入しています。ウォーター・スチュワードシップへの取り組みとして、第三者認証を得ることは信頼感の醸成につながります。農地以内の取り組みだけでなく、農地の周辺での生態系保全やステークホルダーへの機会創出にもつながっています。そのような、流域での協力が、コレクティブアクションとなり、流域全体へのベネフィットの創出になります。

並木:AWS取得について、ステークホルダーなど対外的にはどのような説明が必要になりましたか。

ベックラー:AWS取得は、ウォーター・スチュワードシップの入口のひとつだと考えています。流域全体にインパクトをもたらすためには、長期的なステークホルダーとの協力がとても重要です。短期的に認証取得をするのではなく、現地での水リスクや生物多様性の損失に対し、長期的にコミットしていくことを大切にしています。コロンビアでは、約10年前にコレクティブアクションの取り組みを開始しましたが、未だ解決できていない現地の課題はたくさんあります。マラソンのように、長期的に、農業者やNGO、行政などと協力を継続していきたいと思います。

並木:すでにお話いただいたように、バナナやオレンジでのプログラムを現状進めていると思いますが、どんな商品からサステナビリティに取り組んでいるのでしょうか。まずはプライベートブランドの商品から始めるのか、など、優先順位付けや絞込みの考え方をお聞かせください。

ベックラー:プライベートブランド商品で、農地まで遡ってサステナブルな生産に貢献することで、企業としての透明性や信頼感を示すことができます。野菜や果物を中心に取り組んできましたが、小麦や飲料の原材料など、その他の品目にも将来的に拡大したいと思っています。原材料のサプライチェーン分析は難しいですが、2026年までに、分析を完成させるという高い目標を掲げています。

並木:品目をどのように絞るのかは、企業によって異なると理解しています。EDEKAでは、販売量や自社にとっての重要品目、という考え方で絞り込みを行ったのでしょうか。

ベックラー:2013年から、水リスクや水使用量、生物多様性への影響などを組み込んだ分析を行い、9つの影響度の高い産品・流域に絞込みを行いました。そのうちの一つが、コロンビア・エクアドルでのバナナ生産でした。しかし、ラテンアメリカだけでなく、南アフリカやスペインなど、さまざまな地域がリスクにさらされており、これらの地域にも取り組みを拡大することになりました。

並木:トレーサビリティの確保は共通の課題と認識しています。EDEKAにとってのトレーサビリティ上の課題は何でしょうか。

ベックラー:サプライヤーと、自社チームが連携し、サプライチェーンの分析を実施しています。野菜や果物など、加工せずにそのまま輸入する品目に関してはトレーサビリティの確保ができていますが、飲料など加工品の原材料に関しては、まだ発展中です。2026年までに原材料のトレーサビリティも確保できるよう、サプライヤーと協力して取り組んでいます。

並木:コロンビアでのコレクティブアクション(同じ一つの「流域」の中で、同業他社や地域のステークホルダーと協働する取り組み)としては、具体的にどんな施策を行っているのでしょうか。

ベックラー:水源となる山地で、コーヒー農地周辺のレストレーション、バナナ農地での廃棄物処理管理などが大きな取り組みです。これらの取り組みはEDEKAだけでなく、現地の行政や関係者、農業者などさまざまな人々の協力で成り立っています。

並木:コレクティブアクションを進めていくうえで、直面した課題や注意している点を教えてください。

ベックラー:例えば、スペインでは、最初は農業者たちの理解を得ることができませんでした。しかし、渇水や気候変動の影響を農業者たちも日々感じているなかで、長期的にサステナブルな生産を行う必要性を、対話により理解いただくことができました。その他、生産現場での節水や、水源を守るためのバッファーゾーンの整備など、具体的な対策を一緒に考えることが重要です。

並木:長期的なステークホルダーとの協力を進める点、重要と考えます。一方で、サプライヤーとの関係上、短期的なメリットも提示が必要な場面はなかったでしょうか。

ベックラー:ありました。サプライヤーにとっての短期的な機会の創出として、EDEKAが生産農家に対して年間の調達を一年の最初に約束することで、農業者からの協力や信頼を得ることができました。

質疑応答


Q:日本文化が抱える課題の一つに、農家の高齢化があります。デジタルツールを使えない方々も共に進めていきたいと思いますが、有効な方法があればご教示願います。(エクアドルなどでもデジタルツールは活用されていたのでしょうか。)

ベックラー:EDEKAのプロジェクト・パートナーである農業者たちも、生育状況のモニタリングなどのために、デジタルツールの活用している事例はあります。しかし、当然、世代によってもデジタルツールの活用の有無は異なりますし、地域や状況に合った方法をとるべきだと考えています。

Q:サプライヤーからの多大な協力を得られ、活動を推進されている事、素晴らしいと思いました。サプライヤーからこのような協力を得ることはとても難しい事だと思います。彼らの理解を得るために工夫されたことがあれば教えて下さい。例えば、サプライヤーとの対話を始める際は何かレターかメールを出したのでしょうか。それとも1件1件実際に訪れ、対話を重ねたのでしょうか。

ベックラー:もちろん、最初はメールを送るところから始まりますが、オンラインや対面でのミーティングの機会を最も大切にしています。サプライヤーと継続的にミーティングし、相互に必要な条件や方法を話し合います。どのようにツールを活用すべきか、また、AWS認証取得などの条件についても、サプライヤーと認識を合わせています。

Q:水リスク、生態系への影響、操業が与える周辺環境への影響評価などは、技術的にもまだまだ難しく、高度な専門家、科学者の力が必要だと思います。また調査対象がグローバルにまたがっており、評価作業も膨大なものと思います。EDEKAは、自社でデータベース構築、分析の実施を行っているとのことですので、高度な専門家チームを自社内で持っているということでしょうか。何人ぐらいのチームなのでしょうか。

ベックラー:EDEKAのサステナビリティ部は、35名ですが、それ以外にも、社内の調達部門など多くの人々が関わっています。また、社外では、WWFドイツとの連携が大きく、リスク・フィルター・ツールや現地支援などの取り組みで協力しています。

おわりに
並木崇


最後に、WWFジャパンの並木より、全体の総括を行ない、本セミナーの重要ポイントを振返りました:

  • 「水」は、生物多様性にも気候変動にも大きく関係しているため、関連した取り組みとして取り組みを推進している。
  • EDEKAの水の重要な取り組みは、原材料調達地(海外の農地を含む)にある。
  • 重要な取り組みを進める優先順位付けが重要であり、EDEKAの場合は、比較分析を、品目+調達流域を1セット、計9セットで実施した。
  • 重要な取り組みを進める優先順位の考え方には、様々なレイヤーがあり、淡水の生物多様性、水リスク、商品としての重要度などがある。
  • 優先的に取り組む場所では、AWS認証を進めている。その理由として、第三者認証による責任ある水利用管理(ウォーター・スチュワードシップ)への取り組みへの透明性、信頼性の醸成が挙げられる。
  • 水リスクへの対応は、農園でのAWS認証にとどまらず、流域プラットフォームを立ち上げて、流域全体を俯瞰して課題を特定した上で取組む、コレクティブアクションが必要になる。

EDEKAの責任ある水利用管理の取り組みを踏まえ、まずは、「最初の第一歩として、原材料品目+調達地という形で水リスクを比較検討し、重要な場所で取り組みを開始する」ことが大切だと強調しました。

最後に、WWFジャパンとサウジアラビア・アブドラ王立科学技術大学(KAUST大学)教授との共同研究を紹介。日本の輸入が世界の流域・淡水生態系に及ぼす影響の可視化を目指した本共同研究は、企業の原材料調達地の絞込みにも関連しています。

参考情報
共同研究:日本の輸入が世界の流域・淡水生態系に及ぼす影響の把握

WWFは引き続き、世界の淡水生態系を保全する上で重要な意味を持つ、企業による責任ある水利用管理と、水リスクや生物多様性保全への対応を促進する取り組みを続けていきます。

当日の発表資料はこちら

「はじめに」WWFジャパン 並木崇
「EDEKAの水の取り組み紹介」EDEKA アンドレ・ベックラー
「おわりに」WWFジャパン 並木崇

ご質問、ご関心をお持ちの企業関係者の方は、下記までお気軽にお問い合わせください。

WWFジャパン 淡水グループ
water@wwf.or.jp

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