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野生生物の違法取引撲滅を!始まった運輸業界の取り組み

この記事のポイント
野生生物の違法取引撲滅に向けて、運輸業界がその取り組みに乗り出しています。2018年12月6日、日本の航空業界でははじめて全日本空輸株式会社(ANA)が、社員向けのトレーニングワークショップを開催しました。これは、空港や税関などの水際以外でも、違法な取引(密輸)のような不正取引撲滅を目指す取り組みです。今回の開催を支援したWWFジャパンの野生生物取引監視部門であるTRAFFICは、こうした企業の取り組みを支援すると共に運輸業界と執行機関の連携拡大を目指しています。

野生生物の違法取引

センザンコウとセンザンコウ皮革製品

象牙や皮革、骨や角、またペットにされる生きた個体まで、さまざまな形で行なわれる野生生物の違法取引の規模は現在、年間2兆9,000億円と試算され、世界4大犯罪のひとつに数えられています。

その背後にあるのは、途上国での汚職(取り締まりをするはずの職員による不正行為)や密猟といった問題です。現在、野生のサイは7時間ごとに1頭、アフリカゾウは毎日55頭が違法に殺されているとも言われています。

サイやゾウをはじめ野生生物や野生生物に由来した製品の違法取引が生じるのは、何らかの需要があるためです。
その用途は、木材製品や伝統薬、装飾品や食材の原料、また、動物園やペットとしての需要など実にさまざまです。

アフリカゾウと象牙製品

野生生物取引の多くは合法的に行われていますが、「ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)」のような国際的な規制をかいくぐって行なわれる違法な取引、つまり密輸も相当数あると考えられています。

また、高値で取引され、需要も高い象牙のような製品については、大量のゾウが密猟される事態も引き起こします。

これまでも、密猟や密輸を阻止するためにさまざまな取り組みがなされてきました。

保護区の監視官(レンジャー)による見回りや取り締まり、税関による水際の摘発など各国政府の対策として実施されてきました。

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運輸業界が背負うリスクと責任

しかし、こうした問題は、行政だけの努力では解決しきれません。
野生生物・野生生物由来製品は、乗客、積荷、国際郵便、クーリエ便など、その生物の生息地・製品の生産地から最終消費地・消費者の元まで何らかの輸送手段を利用して運ばれます。

それらを運ぶ飛行機や、船、トラックといった輸送に関わる人々には、密輸行為を見つけ出し通報する機会と、果たすべき役割があるのです。

また、こうした責任を果たせなかった場合の社会的な責任を、企業として問われるリスクが生じるほか、密輸され、押収した生きた動物に接触することで怪我をする可能性や、その生物が持っている病気の蔓延といったリスクにもさらされることになります。

そこで近年、特に空港などの職員が、法を執行する機関と連携することの重要性が広く認識され始めています。

運輸業界ができること

とりわけ航空機をあつかう輸送関連の企業の関与は、世界的にも注目されています。
2014年には、英国ケンブリッジ公ウィリアム王子が発起人となり、野生生物連合・違法な野生生物製品の輸送に関する国際的タスクフォースが立ち上がりました。

2016年3月には、野生生物の違法取引撲滅に向けた11の誓約が盛り込まれた「バッキンガム宮殿宣言」が策定され、およそ40の関連企業・団体がこれに署名。企業自らが行動し、違法な輸送を削減することを目指す意思を明らかにしました。現在では100近くの組織がこの内容に合意し宣言にサインをしています。

こうした取り組みや意思表示は、違法取引の撲滅にあたり、大きな意味を持っています。

実際、さまざまな人やモノが行き来する際の水際である空港で働く職員は特に、乗客と接触する時間が長いため、不審なものや人を目撃する機会が多くあります。

また、法を執行する機関ではないものの、迅速な通報をすることを通じ、違法行為の摘発にも貢献することができます。

2017年の世界の旅客数は41憶人、運航計画は3,670万便。日本政府は2020年までに観光客数を4,000万人に増やすことを目指すなど、人とモノの行き来はさらなる増加の途をたどろうとしています。

そうした中で、バッキンガム宮殿宣言にもサインをしている全日本空輸株式会社(ANA)が2018年12月6日、野生生物の違法取引対策における企業の取り組みとして、日本の航空業界では初の実施となる社員向けのトレーニングワークショップを開催しました。

当日のプログラム

3回のセッションで合計102名が参加

執行機関である東京税関の職員の方からの情報提供

野生生物由来製品の紹介

野生生物の違法取引において空港職員が貢献できること(ビデオ)

ROUTESパートナーシップ

このワークショップでは、「ROUTES: Reducing Opportunities for Unlawful Transport of Endangered Species(絶滅のおそれのある種の違法な輸送削減に関する取り組み)」として2015年に立ち上がった、輸送セクターを支援するパートナーシップ・プログラムのトレーニングツールを利用して行なわれました。

ROUTESは、野生生物の違法取引を阻止するため、政府機関、輸送セクターである企業と執行機関が連携して取り組むことを目指した協力関係(パートナーシップ)です。

具体的には、違法取引のルートやパターン、密輸者の言動の分析から、現場スタッフがいち早く違法取引を発見し、執行機関と連携して摘発率を上げること。また、より多くの監視の目を増やすこと、社員や乗客の意識向上を目指すことを目的としたものです。

輸送セクター職員を対象としたワークショップは、そのトレーニングの一環として実施されます。TRAFFICも、トレーニングツールの作成や実際の実施にあたり協力を行なっています。

ROUTESトレーニングの内容

今回、TRAFFICの全面的な協力によって実現したワークショップでは、主に下記の大きな項目ごとにトレーニングが行なわれました。

密輸行為を見つける(不正取引のサイン)

  • 密輸の手口
  • 五感を働かせる(密輸者の言動に注目)
  • 書類からわかること(通関書類の不備や偽造など)
  • 注意すべきポイント(積荷への疑念)
  • よく使われる密輸ルートやこれまでの事例紹介

リスクについての認識

  • 不正行為による運輸業界への滞在的リスク
  • 生きた動物を発見した場合の対処

誰に報告すべきか

  • 現状の保管(捜査や訴追に役立つ証拠を保存する)
  • 報告/通報ラインの確認やリストの作成

また、トレーニングでは、実際に触れる密輸品に触れる機会も多い空港職員自身へのリスクも紹介し、まずは自身の身を守ることの重要性についても解説しました。

また、実際の執行機関の役割について東京税関の職員の方からもお話しいただき、同じ「空港」という場所でさまざまな問題に対処する立場同士、改めて課題の共有が図られました。

今回のワークショップに参加した航空会社の社員の方々からは、「野生生物の違法取引の実態をよく知らなかった」、「乗客によって運ばれるケースがあることに驚いた」など、意識と認識の向上をうかがわせる反応が認められました。

国境を越えた取引では、より多くの人が問題を認識し連携することが非常に重要です。

WWFは今回の取り組みを第一歩とし、日本の運輸業界全体で連携が拡がるよう、引き続き日本国内での違法な野生生物取引問題への対策を支援していきます。

当日のトレーニング資料より

密輸者の辿るコース:飛行機に搭乗する乗客(密輸者)の辿るルートを把握して、発見ポイントを理解する

密輸行為の発見:密輸者を見極める際のポイントを理解する(不審な言動を見逃さない)

密輸行為の発見:密輸品を見極めるポイントを理解する(不審な積荷を見逃さない)

ホットスポット(空港):特に注力すべき出所地などを覚えておく

企業へのリスク:違法取引を見逃すことは企業としても重大なリスクになりうる

職員へのリスク(野生生物が媒介する病気):特に生きた動物の取扱には注意をする

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