マングース・ヒストリーから学ぶこと
2026/03/30
先月、私たちの活動にも協力してくださっている研究者で、外来種や島嶼生態系のエキスパートである森林総合研究所の亘悠哉さんが『マングース・ヒストリー』という書籍を出されました。

『マングース・ヒストリー』(東京大学出版会)とWWFジャパン発行の南西諸島の生物多様性に関する報告書。1991年のWWFジャパン報告書「南西諸島の野生生物に及ぼす移入動物の影響調査」でも奄美のマングース問題が取り上げられています。亘さんのご著書には、フイリマングース(Urva auropunctata)導入から根絶までの歴史のほか、奄美大島の地史、動物好き視点の野生動物の紹介や亘青年が外来種の研究をすることになった経緯など魅力的なお話が満載です。殺処分される外来種がかわいそうと思う人や将来自然にかかわる仕事がしたいと思っている子ども・若者に読んで欲しい一冊です。
一昨年、環境省が根絶を宣言した、奄美大島の特定外来生物フイリマングースのお話です。
これだけの広さの島での侵略的外来種の根絶の成功は、世界的にも例を見ません。
南西諸島でながく保全活動に取り組んでいるWWFジャパンにとっても特別な出来事でした。
本来西アジア、中央アジアから東南アジアを生息地とするフイリマングースを日本に持ち込んだのは、毒蛇ハブやネズミ対策が目的とされています。さらに,ハブとの決闘ショーのための展示目的で飼育され、そのことも野外放出を拡大する一因となりました。
その人間の安易な行動のツケを払わされたのは、特定外来生物に指定されたフイリマングース。そして、この肉食動物の獲物となった無数の在来の生きものです。

アマミノクロウサギ(Pentalagus furnessi)は、奄美大島と徳之島だけに現存する固有種です。マングースの根絶により個体数回復が顕著ですが、野生化したイヌやネコによる捕食やロードキルという課題はまだ残っています。近年はさらに農業被害という新たなあつれきが生じています。
人間の都合で本来の生息地ではない場所に連れて来られ、外来種となった野生動物は、決してマングースだけではありません。
特に展示や愛玩・鑑賞目的の野生動物の利用は、多くの外来種を生み出す原因になっています。
私たちが先ごろまとめた情報では、政府や国立の研究機関、地方自治体が外来種として認識している哺乳類、鳥類、爬虫類209分類群※のうち、展示目的で導入された分類群が99、ペット由来は123でした。
※種(しゅ)ではなく、上位分類群の属や科で外来種に指定されている場合もあるため

グリーンアノールもペットとしての利用が外来種化の一因とみられています。小笠原で、固有の生きものに甚大な影響を与えています。
外来種対策で最も効果的なのは、外来種を生み出さないことです。ペットや展示動物が外来種の最大の供給源となっているのですから、これらの目的で動物を利用している人々の取組みが最も重要です。
商業目的であれ、個人的な愛玩目的であれ、動物の飼育者は、現在の飼育個体のみならず、地域社会や将来の日本の生態系へ影響を与えうることをしっかり自覚する必要があります。
私も一猫飼いとして、世界の侵略的外来種ワースト100入りしているこの肉食動物を決して放し飼いしたり、遺棄したりしないことを誓うとともに、生物多様性劣化の重大な要因である外来種問題の解決にどのように貢献できるか、考え、行動したいと思います。
【WWFジャパン報告書】
『ペット由来外来種:日本における現状と課題』(日本語版)



