© Martin Harvey / WWF

水際で違法取引を防ぐ!税関研修所での「ワシントン条約」講義


WWFジャパンの野生生物取引調査・監視部門TRAFFICでは毎年、税関の職員研修の中で「ワシントン条約」の講義を担当させていただいています。

今年も1月末に横浜税関で、7年以上の実務経験のある中級職員の方々に向けて講義を行ないました。

講義中の様子。運用にかかわる説明や、野生生物の違法事例なども紹介。水際の取り締まりの重要性について、熱心に聴講していただきました。
©TRAFFIC

講義中の様子。運用にかかわる説明や、野生生物の違法事例なども紹介。水際の取り締まりの重要性について、熱心に聴講していただきました。

一見、野生生物と税関にどのような関連性が?と思われるかもしれません。

講義のテーマである「ワシントン条約」は、ペット目的で取引される生きたフクロウやカメなどの野生動物や、楽器や家具の材料となるローズウッドなどの植物、食用のナマコ、装飾品の象牙やべっ甲など、約38,700種の野生生物の国際取引を規制しています。

そして、「税関」は空港などの水際でこれらの国際取引の取り締まりを行なっています。

日本税関によって差し止められた、日本でペットとして利用されている動物の輸出国・地域(2007年~2018年、計1,161匹)。講義では、違法な野生生物取引の実態や国際的な動向についても紹介しました。
©TRAFFIC

日本税関によって差し止められた、日本でペットとして利用されている動物の輸出国・地域(2007年~2018年、計1,161匹)。講義では、違法な野生生物取引の実態や国際的な動向についても紹介しました。©TRAFFIC

また、野生生物の国際取引には、高値で売買される希少種や、輸入が法律で禁じられている動植物を「密輸」する事例も含まれています。

最近の事例では、2022年6月にピグミーマーモセットやショウガラゴなど小型サル類を段ボールとスーツケースに隠し、タイから羽田空港に航空機で密輸した事件がありました。

発見のきっかけは、税関職員が段ボールの中から聞こえる鳴き声に気づいたことでした。

ピグミーマーモセット(Cebuella pygmaea)。エボラ出血熱などの感染症の病原体を媒介するおそれがあるとして、日本では感染症法により、サル類の輸入は禁止されています。それでも、ペットとしての需要があるため、密輸の発覚が後を絶ちません。※本写真の個体は事件とは無関係です。
© J.J. Huckin / WWF-US

ピグミーマーモセット(Cebuella pygmaea)。エボラ出血熱などの感染症の病原体を媒介するおそれがあるとして、日本では感染症法により、サル類の輸入は禁止されています。それでも、ペットとしての需要があるため、密輸の発覚が後を絶ちません。※本写真の個体は事件とは無関係です。

この事件のように、密輸は、発覚を防ぐため巧妙に隠されていることが多く、また、規制の対象や制度も変化することから、講義では実例や最新の条約改訂内容も紹介しました。

野生生物を違法取引から守るために、非常に重要な水際での取り締まり。

これからも、税関をはじめ、空港・航空企業を含めた関係者への情報提供など積極的なサポートを行なっていきたいと思います。
(野生生物グループ TRAFFIC 岡元)

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
岡元 友実子

獣医学修士(ソウル大学)/ 学芸員 / IUCN カワウソ専門家グループメンバー
学部から大学院に至るまで、野生動物について専門的に学ぶ。修了後、上野動物園など日本および台湾での動物園勤務を経て、2021年WWFジャパン入局。現在はペットプロジェクトに関連した業界変容を担当。

学生時代に海外で野生のカワウソを見たことをきっかけに、大のカワウソ好きに。「二ホンカワウソ絶滅」の悲劇を二度と起こしてはならない!の決意を胸に日々野生動物保全のため奮闘中。特技は語学(英語・中国語・韓国語)。

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