© WWF-Russia / V. Kiriliuk

メコンのトラとロシアのトラ


この2月、タイの国立公園を訪れた際、とても貴重なものを目にしました。

野生のトラの足跡です。

大きさは9.5センチほど。
それが、森を通る細い小道の、固まった泥の上に一つだけ残されていました。

タイのクイブリ国立の森で見た足跡。オスのトラの立派な前足の跡でした。
©WWFジャパン

タイのクイブリ国立の森で見た足跡。オスのトラの立派な前足の跡でした。

この足跡を目にしたのは、タイ西部、ミャンマーとの国境地帯にある、クイブリ国立公園。今年1月、9年ぶりに、インドシナトラの存在が確認された場所です。

足跡が一つだった理由は、森は湿度が高く、落ち葉なども多くて、足跡の残りやすい地面が、ほとんどないため。

こうした場所で、野生動物の痕跡を探して行なう調査は、本当に大変なものと言わねばなりません。

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タイのケーン・クラチャン国立公園での調査用自動カメラ(カメラトラップ)の設置。道のない森の中を幾日も歩いて、カメラの設置と回収を行なうこともあります。
©WWFジャパン

タイのケーン・クラチャン国立公園での調査用自動カメラ(カメラトラップ)の設置。道のない森の中を幾日も歩いて、カメラの設置と回収を行なうこともあります。

メコン流域のインドシナ半島に分布するインドシナトラ。推定個体数は200頭ほどで、絶滅の危機が深刻なトラの亜種の一つです。日本の皆さまのご寄付により、このインドシナトラの調査が進められています。
© Kabir Backie / WWF-Greater Mekong

メコン流域のインドシナ半島に分布するインドシナトラ。推定個体数は200頭ほどで、絶滅の危機が深刻なトラの亜種の一つです。日本の皆さまのご寄付により、このインドシナトラの調査が進められています。

一方で、ふとロシアでのトラ調査の話を思い出しました。

ロシアでは、木の葉が落ち、雪上に足跡やフンが残る冬に調査を実施します。個体数もかなり正確に判る、精度の高い調査です。

雪の中での調査は、これはこれで大変きわまるものですが、そこで得られる調査の結果には、この熱帯の森の場合と大きな差があるな、と気づかされました。

ロシアでのトラ調査。シベリアトラ(アムールトラ)のすむ北方林の景観は、年間を通じて草木の茂った、見通しのきかない常緑の熱帯林とは大きく異なります。

 

野生動物は、生息状況やその密度、移動の範囲や経路が分かれば、優先的に打つべき保全の手立てが見えてきます。

ロシアやインド、ネパールなどでは実際、保護活動の成果もあり、野生のトラは近年わずかながら数の回復傾向が認められています。

しかし、現状の把握が難しいインドシナのような熱帯では、いずれも森の消失が進行。
これに伴い、インドシナトラも絶滅寸前の状況にあります。

数の増えている地域もあれば、減っている地域もある。また、起きている問題や生息環境によっても、保護のための手段も変わってきます。
何が、最も成功に近づける有効な手段なのか。常に考えながら取り組みを続けたいと思います。

https://www.wwf.or.jp/campaign/da/

自然保護室 次長
三間 淳吉

森、海、気候、野生生物、さまざまな活動をサポートしています。

虫を追いかけ40年。鳥を追いかけ30年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの20年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと思っています。

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