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【募金のお願い】トルコとギリシャにおける山火事への緊急支援活動

この記事のポイント
2021年夏、地中海沿岸のトルコ、ギリシャの各地で、前例のない規模の山火事が発生。人の暮らしはもちろん、そこに広がる森林の生態系や、生息する野生生物に大きな被害が生じています。この一連の火災は、過去数年間にオーストラリアやアマゾン、インドネシアなど、世界各地で発生している大規模な火災と同じ原因に由来するものです。今回、地中海沿岸で被災している自然環境と、火災を拡大させている原因について解説します。また、WWFジャパンは8月、日本での緊急支援金の受付を開始しました。現地での消火活動の支援や、鎮火後の野生動物の救護、自然回復活動等に充てられる予定です。
目次

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トルコとギリシャの大規模火災

地中海に面した2つの国、トルコ、およびギリシャの全土で、2021年7月下旬以降、大規模な森林火災が発生。同じく地中海に面した北アフリカのアルジェリアでも、火災が発生しました。

8月13日現在、トルコでは降雨により被害が収まり始めているとのことですが、ギリシャなどでは危機が続いています。

トルコとギリシャの両国はいずれも「過去に例を見ない、最大級の火災」と発表。

各地で消火や被災地の救済など、懸命な対応が続けられる中、地中海沿岸に特有の希少な森林生態系への影響が心配されます。

ギリシアで消火活動にあたる消防士
©Orestis Seferoglou

ギリシャで消火活動にあたる消防士

報道やWWFが収集した情報によれば、現在までに確認されている状況は下記の通りです。(2021年8月上旬時点の情報)

トルコにおける被害規模と自然への影響の可能性

  • 全81県のうち50県以上で火災が発生。
  • 推定焼失面積:約 28万3,204ヘクタール。
  • 特に、南西部で火災が広く発生。アンタルヤ県では長期にわたる延焼が続いた。
  • これらの被災地には、家畜ヤギの原種とされるパサン(ノヤギ)や、中型野生ネコのカラカルなど、多くの野生生物が生息する。

ギリシャにおける被害規模と自然への影響の可能性

  • 推定焼失面積:11万ヘクタール
  • 2021年5月にもアテネ西方のゲラニア山脈で大規模な火災が発生
  • 火災の発生原因:多くが人為的な行為。2020年の火災では検挙の87%を火の不始末などの過失が占める。
  • 地中海沿岸林と呼ばれる景観の森林や、そうした環境に生息するヤブノウサギ、キンイロジャッカルなどの野生生物が被害を受けていると考えられる。
火を避けて逃げるヤブノウサギ
©Volodymyr Burdiak Shutterstock

火を避けて逃げるヤブノウサギ

火のすぐ近くを通るアカシカ
©Volodymyr Burdiak Shutterstock

火のすぐ近くを通るアカシカ

地中海沿岸林の自然の価値と危機

今回、火災に見舞われている地域を含む地中海の沿岸、およびそこに浮かぶ島々は、もともと夏季にはほとんど雨の降らない、きわめて乾燥した地域です。

ここには、ナラ類やマツ類などの森林のほか、オリーブなどに代表される「硬葉樹」と呼ばれる、乾燥に極めて強い性質を持つ樹種や、ゲッケイジュ、カシなどの常緑樹を中心とした、世界的にも固有性の高い森が形成されてきました。

また、夏には多くの草花が枯れてしまう一方で、これに先だった春には、多くの草花が一斉に芽吹き、景色を広く彩ります。

南ヨーロッパから北アフリカ、中東やアジアの一部までをも含む、広大な地域に散在する、こうした森林や疎林、低木林といった景観では、これまでに約2万5,000種にのぼる植物が確認されています。

野生動物についても、イベリアオオヤマネコやバーバリーマカク、スペインアイベックス、バーバリーシープ、パサン、ムフロンなど、多くの種が分布。世界でこの地にしか生息していない固有種も少なくありません。

しかし、古くから文明の中心地ともなってきた、この地中海沿岸では自然破壊の歴史も長く続いており、大半の地域では森が失われてしまいました。

さらに今、その残されたわずかな森を、毎年発生する火災が脅かしています。

© Ümit Bektaş: Reuters

世界の森林を襲う火災の脅威

もともと、夏季に極度に乾燥する気候の地中海沿岸では、火災が起きやすく、一度発生すると、簡単には消火ができません。

インドネシアなど雨期と乾期のある地域で起きる森林火災と同様、消火を自然の雨に頼らざるを得ない状況が多く生じます。

このため、乾期が長引いたり、もともと少ない雨がさらに降らなくなる干ばつなどが頻発するようになると、火災がさらに拡大し、鎮火のめどが立たなくなる事態に陥ります。

そして近年、そうした問題が世界の各地で多発するようになりました。

南米アマゾンの森林火災や、アメリカのカリフォルニア州での山火事、オーストラリア各地での火災、そしてインドネシアでの森林林火災など、大きく報道され注目されたこれらの火災は、いずれも干ばつや乾期の長期化などにより、被害が極端に拡大した例です。

気候変動が及ぼす火災への影響

こうした干ばつや、異常な高温などの発生に今、大きく影響を及ぼしていると指摘されているのが、深刻化の進む気候変動(地球温暖化)です。

2021年8月、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、世界の温暖化の科学に関する最新の報告書を発表しましたが、この中でも、今後こうした地域による乾燥化や干ばつなどが、さらに増加していく懸念が指摘されました。

つまり、毎年世界の各地で発生するようになった大規模な火災は、実は同じ、気候変動という一つの原因によって、深刻化し続けているのです。

とりわけ地中海地方は、IPCCの報告書の中でも、乾燥化がさらに進む可能性があると警告された地域の一つに含まれています。

このような地域では、火災の発生によって社会や自然環境が被る影響もまた、甚大化してしまうことになります。

実際、気候変動の影響により深刻化する火災は今後、数年間で地中海諸国に年間50億ユーロにのぼる経済的被害を増加させると推定されています。

世界の森林火災を防ぐために

2021年に地中海沿岸で発生した森林火災は、世界各地で広がってきた多くの森林火災の一つです。

この森林火災を防ぎ、被害を抑えるためには、次の取り組みが必要です。

  1. 気候変動の影響を抑える。そのために温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする
  2. 火災の予防を徹底する。特に人為的な原因を排除する
  3. 発生してしまった火災を消火する。被災地への植林など自然再生を行なう

WWFはこの全ての取り組みに関わっていますが、このうち、長期的な視点で見たときに最も効果が大きいのは、実は1)の気候変動の抑制です。

逆に、3)の消火活動や植林などは、ニュース映像では注目されますし、多くの人々の努力が払われるところですが、どうしても対処療法にならざるを得ず、被害に対する効果は大きいとはいえません。

広域で起きてしまった大規模な火災を、人の手で消し止めるのは容易ではなく、結局は自然な鎮火を待たざるを得ない場合が大半だからです。

実際、長年にわたり、森林火災の問題に取り組み続けてきたWWFギリシャでは、毎年起きる火災への消火活動に支援を行なってきましたが、その対策においては、まず何より発生を予防することの重要性を訴え続けてきました。

火災が注目され、大きく報道されるのは、実際に発生し拡大してからですが、その被害を抑えるために必要な取り組みは、発生する前の失火の防止や、温暖化防止の取り組みです。

世界各地での森林火災に危機感を感じておられる方は、ぜひこのことを忘れずに、火災が起きていないときに取り組まれているさまざまな活動に、ご理解とご関心をお持ちいただければと思います。

そして、そうした取り組みを継続しているWWFのプロジェクトにも、ぜひご支援をお願いいたします。

トルコの山林に広がる火災
©DHA

トルコの山林に広がる火災

【募金のお願い】トルコ、ギリシャの被災地への緊急支援について

野生動物の救護現場に配布される「緊急キット」
© Ahmet Emre Kutuk

野生動物の救護現場に配布される「緊急キット」

©Ahmet-Emre-Kutukcu
©Ahmet-Emre-Kutukcu

WWFは、2021年夏に生じた火災の深刻な影響を受けておられる、ギリシャおよびトルコの多くの人々とコミュニティに、心よりお見舞い申し上げます。
現在、WWFは現地で火災の延焼をくいとめ、野生生物を救うことに焦点を当てた支援活動を行なっていますが、WWFジャパンも、この取り組みを応援するため、8月より日本でも緊急募金の受付を開始しました。
今回の募金は、WWFギリシャ、WWFトルコの事務局を通じて、消火活動の支援や、鎮火後の野生動物の救護、自然回復活動等に充てられる予定です。

受付は、Yahoo!ネット募金にて受け付けております。詳しくはこちらのサイトをご覧ください。
【詳細】Yahoo!ネット募金のページへ(外部サイト)

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