© RSPCA QLD Peter Wilson

【動画あり】オーストラリアの森林火災に日本からの支援金をいち早く届けました

この記事のポイント
2019年夏以降、規模と地域を拡大しながら多発してきた、オーストラリアの森林火災の緊急支援として、WWFジャパンは、1月末までに日本国内でお寄せいただいたご募金3,800万円を、まず2月14日にオーストラリアに送金し、現地に届けました。 この寄付金は、WWFオーストラリアを通じ、被災した野生生物の保護や生息地の保護・回復に役立てられ始めています。ご支援をいただきました皆さま、ならびに応援や激励メッセージをお寄せいただきました皆さまに、深く御礼申しあげます。現地では、いまだに問題が完全な収束を見ておりませんが、ここまでに情報が寄せられたWWFオーストラリアの活動について、ご報告いたします。

オーストラリア全州に広がった火災

© Rohan Kelly Newspix
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今回の火災により、2020年1月24日の時点で焼亡したと推定される総面積は、12万平方キロ。北海道の面積の1.4倍以上に相当します。

火災はオーストラリアのすべての州で発生していますが、特に被害が大きかったのは、西オーストラリア州、ニューサウスウェールズ州、ヴィクトリア州で、全体では2,700棟以上の建物が被災。死者も30名以上にのぼっています。
火災は一部鎮火した地域もありますが、2020年2月初旬の時点で、まだ続いています。

また、この火災は森林だけでなく、草地やサバンナ、半砂漠といった、オーストラリア全土の多様な自然に広く及びました。

とりわけ、オーストラリアが有する特に重要な森林地帯と、河川流域が広がる大分水嶺山脈の南部、ニューサウスウェールズ州とヴィクトリア州での火災は、コアラなどをはじめとする多くのオーストラリアの固有種に、深刻な打撃をもたらしました。

WWFオーストラリアは、焼失した地域およびその面積等から、すでに12億頭以上の野生動物(哺乳類、鳥類、爬虫類)が、犠牲になった可能性を指摘しています。
また、ここに含まれない、昆虫や両生類、魚類といった生物への影響は、はかり知れません。

野生生物への影響

コアラについては、ニューサウスウェールズ州を中心に、火災が多発した地域が主な分布域と重なっていることから、深刻な被害が懸念されています。
同州では推定個体数の約30%(およそ8,400頭に相当)が被災したとみられ、大陸東部を中心に、今後30年間で、絶滅する地域も出てくることが予想されます。

© Trudi Timbs

また、今回の火災が発生する以前から、コアラがその葉を主食とする、オーストラリアに自生するユーカリの木も、全826種のうち、25%が絶滅の危機にあることが、IUCN(国際自然保護連合)の「レッドリスト(絶滅の恐れのある野生生物のリスト)」で明らかにされていました。こうした植物についても、火災による深刻な影響が心配されています。

これらの他にも、今回の火災で特に深刻な被害を受けている野生生物の例としては、オーストラリア固有種を中心に、以下の種が挙げられています。

被災が確認されている野生生物の例:レッドリストの危機レベル
(★は絶滅危機種)
コアラ Koala(Phascolarctos cinereus):VU ★
フクロムササビ Greater Glider(Petauroides volans):VU ★
オオフクロモモンガ Yellow-bellied Glider(Petaurus australis):NT
アシナガネズミカンガルー Long-footed potoroo(Potorous longipes):VU ★
オオカンガルー Eastern Grey Kangaroo(Macropus giganteus):LC
オグロワラビー Swamp Wallaby(Wallabia bicolor):LC
アカクビワラビー Red Necked Wallaby(Macropus rufogriseus):LC
オグロイワワラビー Brush-tailed rock wallaby(Petrogale penicillata):VU ★
オブトスミントプシス  Kangaroo Dunnart(Sminthopsis crassicaudata):LC
ブーラミス Mountain Pygmy Possum(Burramys parvus):CR ★
テリクロオウム Glossy Black Cockatoo(Calyptorhynchus lathami):LC
ワキグロクサムラドリ Rufous Scrub-bird(Atrichornis rufescens):EN ★
ワライカワセミ Laughing Kookaburra(Dacelo novaeguineae):LC

© Wolter Peeters, The Sydney Morning Herald

緊急対応の取り組み

WWFオーストラリアは、この緊急事態への対応として、火災現場で保護された野生動物の救護を支援するため、獣医師会や各地域のNGO(民間団体)と協力。治療からリハビリテーションまでを含めた取り組みのサポートをいち早くすでに初めています。

また、火災による野生生物および自然環境への被害状況の科学的調査も行ない、従来は絶滅の懸念が無いとされていた野生生物が、今回、危機に追い込まれている可能性どのぐらい深刻なのかを検討することにしています。

さらに、国際的な支援を受け付け、上記の活動をはじめとする緊急対応と、再生を目指した今後の長期的な取り組みのための資金を集める、野生生物および自然環境の回復基金を立ち上げました。

2020年2月初旬までに、この基金には約2,000万豪ドル(日本円で約15億円)の支援金が寄せられました。
一方、未曽有の規模となった今回の火災の影響、そして、そこからの回復に、どれほどの時間と労力が必要とされるのかは、まだわかっていません。

現在までにWWFオーストラリアが、そのフィールドパートナーと共に取り組みをすでに実施したり、今後予定している活動には、以下の例があります。

ヴィクトリア州での野生動物保護支援

© Zoos Victoria

協力:オーストラリア野生生物保健センター
ヴィクトリア州のヒールズビル保護区内にある、野生動物の治療が可能な病院・オーストラリア野生生物保健センターを支援し、州内で被災した絶滅危惧種を中心とした野生動物の救護、およびコアラなどの避難を実施。獣医チームによる被災地内での活動拠点の設置も行ない、迅速な判断と対応を支援した。

南オーストラリア州でのテリクロオウムの保護支援

協力:南オーストラリア自然基金
南オーストラリア州で自然環境と動植物の保護、回復に取り組む民間団体の南オーストラリア自然基金を支援し、特に地域で絶滅が心配されているテリクロオウムの保護活動などを促進。この鳥の生息域は、重要な繁殖地を含む半分が、火災によって失われたと見られている。

カンガルー島での絶滅危機種の保護支援

協力:Kangaroo Island Land for Wildlife
野生生物の生息環境を改善・確保することを目的とした、生物多様性保全プログラムのKangaroo Island Land for Wildlifeを支援し、島内に分布する絶滅危機種の保全・救護を促進。特に小型の有袋類で絶滅が心配されているスミントプシスの保護対応に取り組む。

西オーストラリア州での野生生物保護およびリハビリテーション支援

協力:FAWNA
FAWNAは西オーストラリア州の南西部で活動している非営利団体で、野生動物の救護、孤児となった個体の救助やリハビリテーションに取り組んでいる。火災現場で活動できる装備を持ち、移動可能な獣医としての行動が可能。WWFはこれに装備や補給品を支援し、その緊急対応をサポートする。

西オーストラリア州での12カ月間のレスキューサポート

協力:Native Animal Rescue
西オーストラリア州で野生動物の治療やリハビリテーションに取り組む、Native Animal Rescueによる、火災で被災した動物の救護を支援。12カ月間にわたり、保護されたワラビーや、マツカサトカゲ、テリクロオウムなどの治療と回復、給水に必要な物資を提供する予定。

クイーンズランド州での24時間体制のケアをサポート

クイーンズランド州で動物の保護・福祉に取り組み、獣医とのネットワークを持つRSPCAを支援。野生生物に提供している24時間体制のケアをサポートした。救出された野生動物は、獣医が診断評価を実施。これは今後、野生に戻される時の重要な参考情報とされる。

クイーンズランド州でのコアラ探知犬の支援

© WWF-AustraliaVeronica Joseph

協力:コアラ探知犬
クイーンズランド州で火災に遭ったコアラを、被災地で探知する2頭の犬による保護活動を支援。2頭は、ブリスベンの西、カニンガムズギャップ周辺の焼けた森に配備され、飢えや脱水、火傷の危険にさらされているコアラの個体の探索にあたる。

タスマニア州での被災した野生動物の治療とリハビリ支援

協力:Bonorong Wildlife Rescue
タスマニア州のボノロン野生生物保護区は、タスマニア州全体の野生生物保護サービスを担っており、毎年数千頭を救護できる野生生物支援サービス。ここへの支援を通じ、火災で被災した野生動物の治療とリハビリを支援する。

ニューサウスウェールズ州での国立公園支援

協力:Wildcare
ニューサウスウェールズ州のタラガンダ国立公園で起きた火災に対応している、野生生物の救護組織Wildcareを支援。これは、救助された野生生物の世話に必要な食料、医療用品、薬剤などの備品に充てられる。保護対象となる野生動物は、カンガルーやワラビーなどの大型種から、ポッサム、フクロモモンガなどの小型種まで、多種に及ぶ。

© WWF-Australia Leonie Sii
火傷を負ったポッサム
© WWF-Australia Matthew Harris

火傷を負ったポッサム

コアラの保護ボランティアへの支援

協力:Friends of the Koala
ニューサウスウェールズ州でコアラ保護に取り組むボランティア組織Friends of the Koalaを支援。同グループは、24時間の救助サービスを行なっており、WWFの資金は現地で不足している獣医クリニックの建設に充てられる。これにより、傷ついた動物に大きなストレスをかけることなく、短時間で獣医診療所に運ぶことが可能になる。

オーストラリア全土での獣医師の活動を支援

協力:オーストラリア獣医師協会
オーストラリア獣医師協会は、9,000人以上のメンバーを擁した、1921年から続く獣医の専門組織。今回の火災にあたり、活動する獣医師に欠かせないサービスや物資を支援。特にWWFの資金は、最前線の獣医師に分配され、被災したオーストラリア在来の野生動物に緊急治療を提供する。

火災による自然・野生生物への影響の調査

火災の影響を受けた地域で数種の絶滅危機種の現状を調べ、火災の前後での変化を評価。またこの手法を活用し、各州政府に、同様の野生生物の調査と絶滅危機の評価を呼びかける。また、犠牲になった野生生物の個体数の推定も実施するほか、焼亡した森林地帯にドローンを飛ばし、救助を必要とする動物の探査も行なう。

火災は収まるのか

上記の取り組みは、いずれも緊急性を求められた活動として、日本をはじめ各国からの支援により、実施されています。

しかし、2月に入り、現地からは降雨と、それに伴う各地での鎮火のニュースが入ってくる一方で、被害全体の規模の把握や、その後の対応を考えると、まだ予断が許されない状況です。

また何よりも、この先、こうした大規模な火災が繰り返し、再発する可能性があります。

なぜなら、火災が大きく拡大した原因は、気候変動(地球温暖化)による異常気象により、オーストラリア全土で長期にわたる干ばつや異常高温が続いたためと考えられているからです。

今回の火災の原因も、放火や火の不始末などがあったとされる一方、落雷などで自然に発生した火災が多数あったと報告されています。こうした火災は毎年のように発生し、自然に鎮火していました。

しかし、長期にわたって続いた干ばつ、乾燥、高温により、2019年に発生した火災は、数か月間にわたり収束を見ることなく、続く結果になりました。
気候変動は、火災を直接引き起こすものではありませんが、その被害を拡大し、深刻化させる大きな要因となっていることは、間違いないと考えられています。

世界へ、そして未来への警鐘

こうした脅威については、すでに数年前から警鐘が鳴らされていました。
そもそも、コアラがIUCNの「レッドリスト(絶滅の恐れのある野生生物のリスト)」で「危急種(VU)」に選定されたのは2016年。その大きな原因の一つとして指摘されていたのが、気候変動(地球温暖化)だったのです。

今回の火災は、オーストラリアの社会に、自然や野生生物に、未曽有の被害をもたらすものとなりました。
しかし、この被害拡大の原因が気候変動であるとしたら、問題はオーストラリアだけに、コアラやカンガルーだけに限られたものではない、ということがお分かりいただけるはずです。

WWFオーストラリアは今回の火災を受け、緊急対応に続いて、残された自然の徹底した保全や、長期的な自然回復を目指す取り組みを行なう姿勢を明らかにしています。
そして、それと同時に強く訴えているのは、気候変動を食い止めることの必要性です。

気候変動が「気候危機」と呼ばれるようになった今の時代。
地球全体、世界各地のどこで、今のオーストラリアと同様の被害が生じてもおかしくはない、といえるかもしれません。

WWFジャパンはこの度、日本の(サポーターの)皆さまから1月にお預かりしたご支援3,800万円をを、まず第一回送金分としてオーストラリアに届けました(第二回目の送金は3月以降を予定)。

皆さまには、この場をお借りして、心より感謝申し上げますとともに、ぜひ、今回のオーストラリアの火災が鳴らす警鐘に耳を傾け、関係するさまざまな環境問題と、その解決をめざすWWFの取り組みに、広くご関心をお持ちいただければ幸いです。

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