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美しいオオトカゲの保全に向けて:事業者の取組み

この記事のポイント
世界的な規模で行なわれる、ペット利用を目的とした野生動物の取引。こうした利用が今、絶滅のおそれのある種(しゅ)の危機を、より高める大きな要因の一つになっています。日本を含め世界的に特にペット需要が高いのはトカゲやカメなどの爬虫類で、取引の管理が求められています。「ワシントン条約」によって国際取引が規制されている、インドネシア固有の爬虫類、コバルトツリーモニターの生体取引の課題と、その解決に向けた事業者の取り組みを紹介します。
目次

国際取引における課題

報告書「問われる日本の責任-日本市場で人気の9種の爬虫類に関する取引調査-」
© WWF-Japan

報告書「問われる日本の責任-日本市場で人気の9種の爬虫類に関する取引調査-」

コバルトツリーモニターは、2000年代初めに知られるようになった、インドネシアのバンタン島とその周辺にのみ生息する、青さが印象的な樹上生活をするトカゲです。

珍しい青く美しいトカゲの展示・ペット市場での人気は高く、欧米や日本でも生体が販売されています。

しかし、その取引には問題があります。WWFジャパンとWildview Analyticsxが、2025年7月に公表した調査報告書でも指摘したとおり、輸出国での捕獲や取引の合法性・持続可能性に疑いのある個体が日本で販売されているのです。

生息国のインドネシアでは、国内法で生体販売するために野生のコバルトツリーモニターを捕獲することは認められていません。

それにも拘わらず、日本では、野生捕獲個体と明記された個体が販売されているのです。

このようなことが起こるのは、インドネシア国内のルールに反して野生捕獲された個体の輸出を認める書類を当のインドネシア政府が発行したか、野生捕獲した個体を繁殖個体と偽って申請、取引したからです。

国際取引のデータの解析から、どちらのケースもあり得ることが分かりました。

そこで、WWFは輸出国政府の担当部局に許可書発行の厳格化を求める提言を送るとともに、輸入の窓口となる日本政府にもこの種の輸入に慎重な運用を行なうことの強化を働きかけました。

しかし、日本政府の反応は鈍く、たとえ、持続可能性や生息国の合法性に疑問があるとしても、輸出国政府が許可した取引に文句を言うことは難しいというものでした。

なお、日本に一たび輸入されてしまえば、その個体がどのような流通過程を経て販売店に来たかを詳らかにすることを求める規制は、国内にはありません。

展示即売会(2025年春開催)で販売されていたコバルトツリーモニター
© WWF-Japan

展示即売会(2025年春開催)で販売されていたコバルトツリーモニター

このような不透明な取引は、取り扱う事業者や消費者を違法取引に加担させてしまう恐れがありますし、何より、コバルトツリーモニターの乱獲につながる恐れがあります。

業界団体による取り扱いの自粛要請

こうした懸念から、2025年9月、爬虫類・両生類を扱う事業者の団体である一般社団法人日本爬虫類両生類協会は、加盟団体や関係者宛てに本種のうち、野生捕獲個体及び由来の明らかでない個体の取扱の自粛要請を出しました。

http://jpras.or.jp/recommendation202509.html

これは、2025年春に在来種の取引自粛について要望書を出したのに続き2回目です。


野生動物の持続可能な利用を目指す国際的な枠組みであるワシントン条約の管理当局である経済産業省や、環境省が二の足を踏んだ本種の輸入の厳格化を自主規制という形で事業者へ求めた点は大いに評価できます。


WWFは、引き続き、展示・ペット利用によって、絶滅の危機に瀕する種がいなくなるよう、事業者、政府との対話を続けます。

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