WWFジャパン「ゴーストギア調査隊」、長崎県五島市岐宿地区で長さ11mの大型漁業系プラスチックごみを海中から引き上げ ――問題解決には国際的な協働が不可欠――
2025/08/27
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下WWFジャパン)は、昨日2025年8月26日(火)に、長崎県五島市岐宿地区で大型のゴーストギア(漁業系プラスチックごみ)の回収作業を地元の漁業関係者、ダイビング事業者、五島市等の協力を得て行ないました。本作業は、海洋汚染の解決と持続可能な水産業を目指すWWFジャパンの「ゴーストギア調査隊」の活動の一環として行ないました。
本ゴーストギアは、回収前の測定では長さ約11メートル・幅約1メートルで、上のほうに浮子が付いて上部は水面に浮いており、下部は岩に引っかかっていました。付着物が少なく、最近この地域に流れてきたゴーストギアと見られています。今後、分別や計測作業をして、ごみの状況や由来を詳しく調べていきます。
今回回収した本ゴーストギアは、「ゴーストギア調査隊」の潜水調査で7月上旬に確認したもので、海洋生態系への影響や、漁業や船の航行、ダイビング・レジャーなどへの影響が懸念されたため、昨日26日に引き上げ作業を実施しました。2025年7月10日に続く、五島市で2回目の大型ゴーストギアの回収でした。
※第1回目の回収について https://www.wwf.or.jp/press/5998.html

引き上げ作業中のゴーストギア
回収したゴーストギアについて
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引き上げ前

引き上げ準備中

引上げ作業中

引き上げ後
WWFジャパン 専門オフィサーのコメント

自然保護室 海洋水産グループ ヤップ・ミンリー
ゴーストギアは海洋生態系への影響に加え、海中で魚介類を獲り続けてしまうゴーストフィッシングを引き起こして水産資源の損失を招いたり、船の航行を阻害したり、漁業者にも深刻な影響を与えます。しかしながら、ゴーストギア問題は漁業者だけでは解決が難しく、自治体、企業、政府など漁業に関わる各セクターが連携して対策を行なう必要があります。
WWFジャパンの「ゴーストギア調査隊」では特徴の異なる全国7海域を選定し調査を進めていますが、長崎県五島市では、他地域と比較しても大型のゴーストギアが複数確認されています。7月10日に引き上げたゴーストギアと同じく、今回も外国製の漁網と見られます。長崎県をはじめ東シナ海沿岸地域においては、海外からのゴーストギアが発生しやすいため、ゴーストギア問題の解決には、国際的な協働も不可欠です。持続可能な水産業を目指し活動しているWWFジャパンは、国際的な知見の共有などを行ない、地域や関係機関の皆さんとともに知恵を出し合っていけたらと考えています。
ゴーストギア調査隊とは
ゴーストギア調査隊は、ダイバーが自治体、漁業者と協働して、潜水調査を実施し、ゴーストギア(漁業系プラスチックごみ)の実態を把握して、持続可能な水産業を目指すWWFジャパンのプロジェクトです。2023年7月よりスタートし、全国7ヵ所(静岡県西伊豆町・伊東市、宮城県女川町、長崎県五島市、長崎県対馬市、山形県酒田市(飛島)、熊本県天草市、和歌山県日高町)で展開しています。https://www.wwf.or.jp/press/5428.html
プラスチック汚染とゴーストギアの問題
ゴーストギアは放棄、逸失、もしくは投棄されて海に流出した漁網などの漁具由来のプラスチックごみです。海洋プラスチックごみの約1割を占め、海洋生態系や漁業資源に悪影響を与えるだけでなく、船の航行を妨げるなど、観光や地域経済にも大きな被害を与えます。また、日本の海岸に漂着したプラスチックごみのうち漁具やブイ(浮体)などの漁業系プラスチックごみは重量比で5~6割を占めるというデータもあり(注)、海洋国家であり、水産業が盛んな日本にとっては特に大きな課題です。
(注)環境省(2024)令和4年度漂着ごみ組成調査データ 取りまとめの結果について https://www.env.go.jp/content/000224791.pdf